2018/11/18

【仏像】エジプトの石像のような千手観音 「東寺の如来・祖師像」東寺宝物館

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(Wikipediaからの転載許可された画像です)

 これまで何回か東寺は訪れたものの、いつも宝物館がお休み。こんかい初めて観ることができました。お目当は上の写真の像高6メートル近い平安の千手観音さまと、唐から伝わり平安京の守護として羅城門に安置されていたという兜跋毘沙門天さまです。

 千手観音様は2階に祀られておりますが、ドアをくぐった瞬間にその迫力に圧倒されます。何人もの拝観者が、「おおっ」と声をあげてました。
 大木のようにどっしりと直立しております。お顔もちょっと厳粛な表情で、我々の頭上を越えてはるかかなたをじっと見つめています。小さな手はだいぶ欠けてしまっております。それもそのはず、この像は昭和5年(1930)に火災のため大きな被害を受けました。その後昭和41年(1966)から3年かけて修復が行われ、現在のお姿になったとのこと。
 脚の部分の衣服が、ふくらはぎあたりで一回絞られ、そこから飛行機の水平尾翼のような感じで下に広がっております。全体に「人間らしく」ないために、超越的で崇高な印象です。なんだかエジプトの石像を見ているような気分がしました。
 来春には東京の国立博物館で東寺展が開かれますが、さすがにこの仏様はいらっしゃらないでしょうから、こんかい拝観できてよかったです。

 
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(Wikipediaからパブリックドメインの写真です)

 続いて国宝の兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)。ぽん太は以前に、岩手県の成島毘沙門堂と藤里毘沙門堂で二つの兜跋毘沙門天を観たことがあります(【仏像】岩手にある二つの重文の兜跋毘沙門天(1)成島毘沙門堂【仏像】岩手にある二つの重文の兜跋毘沙門天(2)藤里毘沙門堂)。が、なんといってもこちらが本家本元。兜跋国(現在のトゥルファン)が敵に襲われたとき、このお姿で現れて敵を撃破したという言い伝えがあり、平城京の正門である羅城門の上に祀られ、都を守護していたものだそうです。元々は唐で作られたものだそうで、表情やお姿がちょっとバタ臭いです。しかし、ウェストがキュッとしまってすらりと背が高い八頭身は菜々緒も真っ青。岩手のものと異なり、地天女の両脇に鬼まで従えております。細工がとても細かいうえに保存状態もよく、羅城門に祀られていたといういわれも加わって、まさしく国宝にふさわしい仏さまです。来春、東京にもお出ましになるとのこと。また会えるのを楽しみにしております。


 もう一つの重要文化財は、仏様ではありませんが、「夜叉神立像」。かなり朽ち果てていて、目玉をひん剥き、鼻がもげたお顔はかなり怖いです。


 明から伝えられたという三つの銅製の如来様は、かなり修復がなされているようですが、すらりとしたお姿と飄々としたお顔が印象的でした。


 そのほか多くの仏様がいらっしゃいましたが、ちょっとお腹いっぱいになって、印象が薄れてしまいました。

「東寺の如来・祖師像」

東寺(教王護国寺)宝物館
2018年9月20日〜11月25日

出品目録(jpg)
2018秋特別公開|東寺公式サイト

仏像の出品
    ⦿国宝、◎重要文化財

 賓頭盧尊者坐像 木造 像高90.0cm 江戸
 愛染明王坐像 木造菜食 像高34.1cm 室町
 釈迦如来立像 木造漆箔 像高77.3cm 鎌倉
 弥勒菩薩立像 木造漆箔 像高55.1cm 鎌倉
 薬師如来座像 木造 像高66.4cm 平安
 薬師如来立像 木造 像高19.1cm 江戸
 大日如来坐像 木造漆箔 像高34.5cm 室町
 大日如来坐像 木造菜食 像高59.7cm 室町
 大日如来坐像 銀製 像高17.0cm 江戸
 阿弥陀如来坐像 木造 像高44.7cm 平安
 阿弥陀如来坐像 木造漆箔 像高54.2cm 江戸
 地蔵菩薩半跏像 木造 像高87.0cm 鎌倉
◎千手観音立像 木造漆箔 像高584.6cm 平安
 地蔵菩薩半跏像 木造 86.2cm 平安
⦿兜跋毘沙門天立像 木造 像高189.4cm 唐
 愛染明王坐像 木造彩色 像高111.4cm 南北朝
◎夜叉神立像 雄夜叉 木造 像高195.3cm 平安
 如来坐像 3躯 鋳銅製 (各)像高90.0cm 明

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2018/11/03

【仏像】国重文:府中市にある銅(上染屋不動堂)と鉄(善明寺)の阿弥陀さま

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 東京都の文化財の一斉公開や、文化財めぐり、講座などが行われる東京文化財ウィーク 2018(東京都文化財ウィーク|東京都生涯学習情報)で、府中市にある国重文の仏像が2カ所で公開されると聞き、出かけてきました。

【寺院名】上染屋不動堂
【公式サイト】見つかりません。
【住所】東京都府中市白糸台1-11
【拝観日】2018年11月3日
【拝観】1月28日と11月3日のみ(雨天はレプリカ展示)。無料。間近で拝観できます。
【仏像】
銅造阿弥陀如来立像 金銅 像高48.8cm 鎌倉時代(1261) 国重文

不動明王
何かの立像

【寺院名】善明寺
【公式サイト】見つかりません。
【住所】東京都府中市本町1-5-4
【拝観日】2018年11月3日
【拝観】11月3日。無料。仏殿の扉からの拝観なので、やや遠いです。
【仏像】
鉄造阿弥陀如来坐像 鉄造 像高178cm 鎌倉時代(1253) 重文 写真
鉄造阿弥陀如来立像 鉄造 像高100cm 鎌倉時代 重文

阿弥陀如来坐像
地蔵菩薩立像
不動明王立像
大黒様
阿弥陀三尊像

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 まずは、上染屋不動堂の銅造阿弥陀如来立像から。
 旧甲州街道沿いにある小さなお堂ですが、当日は地元の人たちが大勢集まって、受付や解説をしてくれてました。

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 お堂の手前左側にある小さな祠の中に、重文の阿弥陀如来さまがおられます。

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 像高約50センチ。非常に整ったお姿で、丁寧に作られてます。お顔はふっくらとして、目は切れ長でやや釣りあがり、鼻筋が通っていて、口は小さめ。とっても端正で、かつお優しいお顔です。

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 右手は上げて施無畏印。下げた左手が刀印を結んでいるのは善光寺風ですが、法衣は、いわゆる善光寺式だと通肩(両肩にかけてある)のに対し、本像は片方だけです。お腹が少しぷっくりと出ています。すっきりスマートでありながら、慈悲心のあふれる素晴らしい阿弥陀様でした。

 地元の人の解説や、受付でいただいたパンフレットによると、元々は上野国八幡庄で造られた阿弥陀三尊像でしたが、新田義貞が旗揚げした際、守り本尊として持参したものだそうです。脇侍は上野国に残されていましたが、それらは明治の廃仏毀釈で失われ、中尊のみが残っているそうです。


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 奥の不動堂のなかには、2体の仏様が祀られておりましたが、手前の幕のために足元しか見えませんでした。向かって左が不動明王、右は如来か観音様のようでした。

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 続いて善明寺は、府中本町駅近くの細い路地を入ったとことにあります。門をくぐると、街中にしては広々とした境内で、手入れの行き届いた庭園がめにつきます。

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 鉄造阿弥陀如来坐像は、右手にある大きな仏殿のなかに安置されております。
 で、でっかいです。像高178cmですが、顔もふっくら、体つきもでっぷりしているので、さらに大きく感じます。衣紋の表現も大まかで、素朴なお姿。なんだか石仏みたいです。背部ではなく左胸に銘文があるなど、おおらかな感じがします。

 さて、阿弥陀如来坐像の向かって右には、像高1メートルほどの同じく鉄造の阿弥陀如来立像が安置されております。こちらは坐像よりも丁寧に作られており、バランスも良く、衣紋も流麗で、肌も荒れていません。そこでこの立像は、坐像の胎内仏だったのではないかと考えられています。
 右手を上げ、左手を下げておりますが、指が失われているため印相はわかりません。髪の毛は螺髪ではなく、縄を編んだような清涼寺式ですが、全体のお姿は清涼寺式ではありません。

 入り口で解説をしていた着物姿の女性、『東京から日帰りで会える 仏像参り』の著者の田中ひろみさんでした。実はぽん太とにゃん子は、この本を見て府中のお寺を訪れたのでした。

 配布されていた東京都教育庁のパンフレットによれば、この像はもともと武蔵国分寺の西方の鉄谷(くろがねだに)にあったと伝えられ、その後大國魂神社に安置されましたが、明治の廃仏毀釈で善明寺に移されたとのこと。
 江戸時代の観光案内書の『江戸名所図会』を見ると、現在の大國魂神社である「武蔵国総社六所明神社」のところに「阿弥陀如来の鉄像」という項目がある。高さ七尺ばかりの坐像で、肩に銘文があるとしてその文面まで書かれているので、現在の善明寺の阿弥陀様で間違いなさそう。仮そめの雨覆いの堂が建ててあると書かれているので、雨ざらしに近い状態で置かれていたため、肌が痛んでしまっているのかもしれません。
 元々は畠山重忠が愛妓のために造立し、国分寺の恋ヶ窪にあったという地元の言い伝えを、時代が合わないと否定しています。一方で、むかし国分寺に安置されたものを盗んだ盗賊が、ここに捨て置いたものを祀ったという説も紹介しています。

 同じ頃に成立した『武蔵名勝図会』にもいくつかの説が書かれておりますが、いずれも国分寺のどこかで出土して、大國魂神社に祀られたとされているようです。国立国会図書館デジタルコレクション(→こちら)で見ることができます(15ページ)。面白いのは、仏像の絵が載っていること。先ほど像の左肩に銘文があると書きましたが、実は左袖の部分にも字があるが、なんと書いてあるかわからないと、田中ひろみさんは解説しておられました。しかしこの絵には、「藤原氏」という文字が書かれています。

 だいぶ脱線しましたが、善明寺の本堂には、正面にさらにひとまわり大きな金ピカの阿弥陀如来坐像さまが祀られております。その向かって右に地蔵菩薩、左に不動明王。
 さらに左には、阿弥陀三尊像。整ったきれいなお姿の像でしたが、中尊の阿弥陀さまが踏み下げ座で、両脇侍は片膝をたてているのが珍しいです。
 一番右には大黒天が安置されておりました。

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2018/10/25

【仏像】珍しいポーズを拝めます。特別展「仏像の姿」三井記念美術館

 この秋は、国立博物館の大報恩寺展、サントリー美術館の醍醐寺展など、仏像の展覧会が目白押し。手始めに三井記念美術館の「仏像の姿」展に行ってきました。

 「仏師がアーティストになる瞬間」と銘打って、「顔」「装飾」「動きとポーズ」を切り口に、仏師の創造力や表現の多様性を示す展覧会です。コレ!という目玉の仏さまはおらず、宗教性より美術性を重視しておりましたが、これまで見たことのないポーズの仏さまを見ることができました。国立博物館や芸大、個人蔵の仏さまが多かったです。また芸大による模刻が展示されていたのも珍しかったです。

 会場に入ると最初に迎えてくれる「迦陵頻伽立像(かりょうびんがりゅうぞう)」1-1は、上半身は人間、下半身は鳥という異形。迦陵頻伽は極楽に住む想像上の生物だそうですが、ぽん太は初めて見ました。
 「南方天眷属」1-3は、がっしりした体格や顔など、黒人にしか見えませんが、想像力のなせる技なのでしょうか。
 1-4の銅造の「菩薩立像」は、飛鳥時代らしいお姿で、装飾がとても美しいです。
 1-6「観音・勢至菩薩」は、精緻な截金の装飾がほどこされており、また脚の部分の衣紋も複雑に表現されています。ちょっと瓜実顔で、可愛らしいお顔です。
 1-8「十一面観音立像」は、少し前に踏み出した右足の、カカトが上がっているのが珍しいです。
 パンフレットに使われている2-1「不動明王立像」は、歌舞伎の見栄のような迫力あるポーズが独特。

 4-1「阿弥陀如来立像」は、銅板透彫の細かく繊細で、華麗な光背が目を引きます。またお腹の部分の衣服のU
字型の衣紋と、両足の部分の滝のようなストレートな衣紋の対比が見事です。
 4-2の「弥勒菩薩立像」も、宝冠・光背の見事な装飾と、脚の部分の複雑な衣紋が美しいです、
 4-6の阿弥陀三尊は、両脇侍が片足を後ろに跳ね上げております。かなり珍しいポーズだそうです。勢至菩薩といえば、山形の慈恩寺の五郎丸ポーズが有名ですが、これは次にボールを蹴る瞬間か?
 4-9の毘沙門天像は、玉眼の目が血走っていて怖い。

 お次はちょっと変わった不動明王さまたち。4-15は半跏踏下座のポーズが珍しい。4-16は、髪の毛が海原はるか・かなた師匠状態に風でなびいております。4-17は前髪つき。

 4-19の如来立像は、素朴なふくよかなお顔で、体つきもぼってりしており、天才バカボンみたいです。右手で衣の裾を握りしめているのも、なんか子供っぽい。

 5-3の十一面観音さまはお顔がボッテリ。フェルナンド・ボテロのモナリザを思い出しました。
 5-6の伽藍神は、衣をなびかせて走ってます。右手と右足を同時に前に出すナンバ走り。お顔といいポーズといい、黒鉄ヒロシの漫画に出てきそうです。
 


特別展「仏像の姿(かたち)」 〜微笑む・飾る・踊る〜

三井記念美術館
2018年9月15日〜11月25日

三井記念美術館公式サイト
出品目録(pdf , 829.7K)

主な出品作
◎重要文化財 ○県指定 ●市指定

1-1 迦陵頻伽立像 1 室町時代・15 世 個人蔵
1-2 如来立像 1軀 鎌倉時代・13 世紀 個人蔵
1-3 ◎ 四天王眷属立像(東方天眷属・南方天眷属) 康円 2軀 鎌倉時代・文永4年(1267) 東京国立博物館
1-4 ◎ 菩薩立像 1軀 飛鳥時代・ 7 世紀 東京藝術大学
1-5 ◎ 薬師如来立像 1軀 奈良時代・ 8 世紀 滋賀・聖衆来迎寺
1-6 観音・勢至菩薩立像 2軀 鎌倉時代・13 世紀 神奈川・称名寺 (神奈川県立金沢文庫保管)
1-7 ◎ 菩薩坐像 2軀 平安時代・ 9 世紀
岐阜・臨川寺 
1-8 ◎ 十一面観音立像 1軀 平安時代・ 9 世紀 三重・瀬古区
1-9 菩薩坐像 2軀 平安時代・12 世紀 個人蔵

2-1 不動明王立像 1軀 鎌倉時代・13 世紀 個人蔵

4-1 ◎ 毘沙門天立像 1軀 平安時代・応保 2 年(1162)頃 東京国立博物館
4-2 ◎ 地蔵菩薩立像 快成 1軀 鎌倉時代・建長 8 年(1256) 奈良・春覚寺
4-3 阿弥陀如来立像 1軀 鎌倉時代・13 世紀 東京国立博物館
4-4 ◎ 阿弥陀如来立像 1軀 鎌倉時代・13 世紀 滋賀・観音寺
4-5 弥勒菩薩立像 1軀 鎌倉時代・13 世紀 個人蔵
4-6 ◎ 阿弥陀如来及び両脇侍像 3軀 平安時代・ 9 世紀 大阪・四天王寺
4-7 毘沙門天立像 肥後定慶 1軀 鎌倉時代・貞応 3 年(1224) 東京藝術大学
4-8 毘沙門天立像 1軀 平安時代・12 世紀 滋賀・西遊寺
4-9 毘沙門天立像 1軀 鎌倉時代・13 世紀 個人蔵
4-10 天部立像 1軀 平安時代・9 〜10世紀 個人蔵
4-11 広目天立像 1軀 平安時代・10 世紀 滋賀・長命寺
4-12 ● 天部立像 1軀 平安時代・10 世紀 滋賀・春日神社
4-13 ● 二天立像(持国天・多聞天) 2軀 平安時代・12 世紀 滋賀・光照寺
4-14 ◎ 毘沙門天立像 1軀 平安時代・寛弘 8 年(1011)頃 京都・誓願寺
4-15 不動明王半跏像 1軀 平安時代・12 世紀 個人蔵
4-16 ○ 不動明王立像 1軀 鎌倉時代・13 世紀 埼玉・地蔵院
4-17 不動明王及び二童子像 3軀
4-18 不動明王立像 1軀 平安時代・11 世紀 京都国立博物館
4-19 ◎ 如来立像 1軀 平安時代・10 世紀 滋賀・若王寺
4-20 ◎ 大日如来坐像 1軀 平安時代・12 世紀 東京国立博物館
4-21 ◎ 釈迦如来立像 1軀 鎌倉時代・13 世紀 滋賀・荘厳寺
4-22 十一面観音立像 1軀 鎌倉時代・13 世紀 大阪・四天王寺
4-23 菩薩半跏像 1軀 平安時代・9 〜10世紀 東京国立博物館
5-1 ◎ 観音菩薩立像 1軀 平安時代・10 〜 11 世紀 大阪・本山寺
5-2 観音菩薩立像 1軀 平安時代・ 9 世紀 個人蔵
5-3 ◎ 十一面観音立像 1軀 平安時代・ 9 世紀 大阪・長圓寺
5-4 五大明王像 5軀 平安時代・10 〜 11 世紀 奈良国立博物館
5-5 十二神将立像(子神〜巳神) 6軀 鎌倉時代・13 世紀 奈良国立博物館
5-6 伽藍神立像 1軀 鎌倉時代・13 世紀 奈良国立博物館
5-7 雷神立像 1軀 南北朝時代・14 世紀 公益財団法人小田原文化財団
5-8 ◎ 聖観音坐像 1軀 平安時代・11 世紀 滋賀・荘厳寺
5-9 頭上面(三十三間堂伝来) 15 面 平安〜江戸時代 個人蔵

7-14 地蔵菩薩立像(夜泣き地蔵) 1軀 平安時代 奈良・新薬師寺
7-15 不動明王及び二童子像 3軀 鎌倉時代 個人蔵

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2018/10/19

【オペラ】ケントリッジの演出は面白かったです「魔笛」新国立オペラ

 新国立劇場の「魔笛」は、これまでとはプロダクションが変わり、2005年にモネ劇場で初演されたウィリアム・ケントリッジ演出の舞台です。
 動く素描といった感じのアニメが多用されてました。なんでもこの人、手書きのアニメーションで有名な現代美術家とのこと。紙に木炭で描いたドローイングを、消しては書き直しながらコマ撮りしていくものだそうで、素朴さと暖かみがあります。元々は有名な現代美術家だそうで、Youtubeでもいろいろな動画を見ることができます。Youtubeでも動画が見れます。南アフリカ出身の白人ということで、作品にメッセージ性も感じられます。
 なんか魔笛の筋ってわかりにくいところがあり、最後の火と水の試練も歩くだけであっという間に終わるな〜と思ってたのですが、そうしたあたりはアニメのおかげでわかりやすかったです。
 でも、アニメに目が行きすぎて、歌やオケに集中しずらかった気もします。
 いまのところオペラの演出では、プロジェクションは控え目に使われておりますが、そのうちオールCGみたいなのが出てくるんでしょうか。

 フリーメイソン的なものははっきりと描かれていたのも特徴で、三角に目玉のシンボルや、独特の握手などが出てきました。一方でフリーメイソンが、啓蒙主義や科学的思考と関連していることも示されておりました。

 衣装は全員18世紀風。パパゲーノも、見慣れた鳥のお化けじゃなくて、普通の服装。なんだかダヴィスリム演ずるタミーノよりも、アンドレ・シュエンのパパゲーノの方が男前に見えてしまいました。
 二人とも、歌も演技も悪くはなかったですが、聞き惚れるほどの歌声ではありませんでした。

 ザラストロのヴェミッチは、若くて長身で、「賢者」というよりは「若き教祖様」という雰囲気。演出のケントリッジの考えでは、真理を知り人々を導くことができると自負するザラストロには、独りよがりで危険な側面があり、サイの狩猟シーンやギロチンは、それを象徴してるんだそうな。だとすればちょっと危なそうなヴェミッチのザラストロは、演出者の意図に合っているのかもしれません。

 夜の女王は安井陽子。破綻なく歌っていたけど、歌うのが精一杯という感じで、プラスアルファの表現力や演技力に欠けるのは仕方ないか。
 なんかオケも迫力がなかった気がします。4階席で遠かったせいですかね。

「魔笛」
作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
台本:エマヌエル・シカネーダー

新国立劇場オペラパレス
2018年10月14日

公演情報(新国立劇場公式サイト)

指揮:ローラント・ベーア
演出:ウィリアム・ケントリッジ
演出補:リュック・ド・ヴィット
美術:ウィリアム・ケントリッジ、ザビーネ・トイニッセン
衣裳:グレタ・ゴアリス
照 明:ジェニファー・ティプトン 
プロジェクション:キャサリン・メイバーグ
映像オペレーター:キム・ガニング 
照明監修:スコット・ボルマン
舞台監督:髙橋尚史

ザラストロ:サヴァ・ヴェミッチ
タミーノ:スティーヴ・ダヴィスリム
弁者・僧侶I・武士II:成田 眞
僧侶II・武士I:秋谷直之
夜の女王:安井陽子
パミーナ:林 正子 
侍女I:増田のり子
侍女II:小泉詠子
侍女III:山下牧子
童子I:前川依子
童子II:野田 千恵子
童子III:花房英里子
パパゲーナ:九嶋香奈枝
パパゲーノ:アンドレ・シュエン
モノスタトス:升島唯博 

合唱指揮:三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

芸術監督:大野和士

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2018/10/18

【歌舞伎】玉三郎の母満江にドラマを感じました 2018年10月歌舞伎座夜の部

 10月の歌舞伎座は、18世勘三郎追善。夜の部を観劇しました。
 もう七回忌になるのか……。あの時は、残された勘九郎と七之助はどうなるのかと心配しましたが、いまや二人とも立派な役者へと成長。さらに今回の公演では、吉野山では玉三郎が勘九郎の相手を務め、また助六では、仁左衛門が17世勘三郎に教わったという助六を演じ、玉三郎は揚巻を七之助に任せて母満江役を務めるなど、勘九郎・七之助に芸を伝えていこうという意図が感じられました。二人もそれに応えて、素晴らしい演技を見せてくれました。

 「宮島のだんまり」は動く錦絵といったところか。どういう話のどういう場面なのかまったくわかりませんが、安芸の宮島を舞台に、源平ゆかりの人物のだんまりでした。扇雀の六方が観れたのが良かったです。たぶん初めてかしら。

 「吉野山」は、玉三郎の静御前、勘九郎の佐藤忠信。勘九郎は、さらにちょっと痩せたかしら、白塗りの侍姿がなかなかいい男振りでした。そして踊りは……不覚にもぽん太は日頃の疲れで寝てしまったのが残念です。

 そして今回のお目当の仁左衛門の「助六」。海老蔵の華やかさやバカっぽさはなく、柔らかく丁寧に演じてました。台詞回しや演技のうまさは流石。でも、「鼻の穴に屋形船けこむぞ」の部分は、海老蔵の方が面白いというか、憎たらしいです。ちょっと仁左衛門は照れてた感じでした。
 助六といったら河東節かと思っていたら、今回は長唄でした。あとで「仁左衛門が語る『助六曲輪初花桜』」(歌舞伎美人)を読んでみたら、題名も市川家の「助六由縁江戸桜」(すけろくゆかりのえどざくら)とは変えて『助六曲輪初花桜』(すけろくくるわのはつざくら)とし、様々な人の良いところを取り込んで作り上げたものとのこと。
 七之助の揚巻は、目がさめるような美しさ。玉三郎から教わったと思われる台詞回しも、華やかさやきっぷのよさがあって良かったですが、まだまだ台詞回しに聞き惚れるまではいってませんでした。
 勘九郎の白酒売新兵衛は、笑いと取ろうとしすぎずに、節度をもって演じてました。
 玉三郎が母満江というご馳走です。最後、思いつめた表情で花道を立ち去る玉三郎。それを勘九郎が真剣な憂慮の表情で見送り、助六を振り向いて「心配するな、ここは俺に任せろ」というような仕草をし、足早に母を追って行きます。わずか十数秒の演技ですが、素晴らしいドラマが感じられました。なんども助六は見てるはずですが、これは初めてでした。
 福山かつぎは千之助。通人は彌十郎。そういえば、以前に團十郎が助六、菊五郎が白酒売のときの、勘三郎の通人が、楽屋落満載でおかしかったな〜。思い出しました。


芸術祭十月大歌舞伎
十八世 中村勘三郎七回忌追善

2018年10月17日 歌舞伎座

公演情報(歌舞伎美人)

夜の部

  平成30年度(第73回)文化庁芸術祭参加公演
一、宮島のだんまり(みやじまのだんまり)

傾城浮舟太夫実は盗賊袈裟太郎 扇雀
大江広元 錦之助
典侍の局 高麗蔵
相模五郎 歌昇
本田景久 巳之助
白拍子祇王 種之助
奴団平 隼人
息女照姫 鶴松
浅野弾正 吉之丞
御守殿おたき 歌女之丞
悪七兵衛景清 片岡亀蔵
河津三郎 萬次郎
平相国清盛 彌十郎


  義経千本桜
二、吉野山(よしのやま)

佐藤忠信実は源九郎狐 勘九郎
早見藤太 巳之助
静御前 玉三郎


三、助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら)
  三浦屋格子先の場

花川戸助六 仁左衛門
三浦屋揚巻 七之助
白酒売新兵衛 勘九郎
通人里暁 彌十郎
若衆艶之丞 片岡亀蔵
朝顔仙平 巳之助
三浦屋白玉 児太郎
福山かつぎ 千之助
男伊達 竹松
男伊達 廣太郎
男伊達 玉太郎
男伊達 吉之丞
文使い番新白菊 歌女之丞
傾城八重衣 宗之助
遣手お辰 竹三郎
くわんぺら門兵衛 又五郎
髭の意休 歌六
松葉屋女房 秀太郎
母満江 玉三郎

後見 松之助

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