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2005/01/25

『べてるの家の「非」援助論』を読んでみた

 『べてるの家の「非」援助論』(浦河べてるの家、医学書院、2002年)、を読んでみました。
 知るひとぞ知る「浦河べてるの家」のひとたちが書いた本です。
 ご存じない方のために書いておくと、浦河べてるの家は、北海道のえりも岬の少し西の浦河(うらかわ)にある、精神障害者のための有限会社・社会福祉法人です。自分たちで昆布を売る会社を作ってしまい、さらには介護用品の販売などにも手を広げています。精神障害者のひとたちが運営している会社は、おそらくここだけでしょう。
 このように書くとべてるの家のひとたちは病気もよくなって、一生懸命がんばって社会適応をしているように思われるかもしれません。ところがとんでもありません。病気が重いひともいっぱいいて、警察のお世話になったりもしているようです。
 べてるのひとたちは、病気を悪いものと見なして治したり隠したりしようとせず、病気を受け入れて共存し、症状について話し、さらには病気を「売り物」にさえしています。彼らのキャッチフレーズのひとつに、「昆布も売ります、病気も売ります」というのがあります。また年一回開かれる「幻覚&妄想大会」には地域住民が招かれ、その年のもっともすごい幻覚・妄想を持ったひとを表彰するのだそうです。
 一般に福祉施設を利用している精神障害者は、病的体験を隠してなんとなく恥ずかしそうにもの静かにしているイメージがあります。しかしこの本に描かれているべてるのひとたちは、みな生き生きとしており、自分に自信を持ち、自己主張し、病的体験を語ります。ぽん太も「病気を受け入れる」などと気軽に口にしてきましたが、こういう前向きな受け入れ方があるとは驚きです。
 また、地域が精神障害を受け入れると言う問題に関しても、べてるのばあいは反対に、精神障害が過疎で沈滞した浦河の町を活性化しているのです。べてるのキャッチフレーズのひとつに、「精神病でまちおこし」というのがあります。
 たしかにべてるのやり方が、どこでもうまくいくというわけではないでしょう。でも、べてるの実践は、これまでの精神障害者医療・福祉の考え方を揺り動かす力を持っています。
 さらに精神障害者だけでなく、健常者にとっても、 べてるは新しい生き方のモデルとして注目されています。「右肩下がりの人生」「安心してサボれる会社づくり」とべてるは言います。ひたすら右肩上がりを目指して苦しんでいる人たちにとって、べてるの生き方は何かを示唆しているのでしょう。

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