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2005/02/26

精神科通院医療費公費負担制度(32条)はどうなるのか

 精神保健福祉法32条の精神科通院医療費公費負担制度が今後どうなるのか、いろいろとうわさが飛び交っておりました。
 今後の障害者福祉に関しては、厚生労働省の社会保障審議会の障害者部会(議事録はこちら)で、精神・身体・知的障害という三障害に共通の法律を作り、その上にそれぞれの障害の特殊な部分を個別に規定するという、二階建ての法整備が検討されてきました。これがいわゆるグランドデザインと呼ばれるもので、平成16年10月25日の会議の資料として配布されています。
 これまで精神障害者福祉は身体・知的に比べ遅れておりましたので、三障害が共通に扱われることはうれしいような気がしますが、政府はしばしば統合するとき「遅れている方に合わせる」ことがあるので、注意が必要です。
 こうした議論のけっか2005年2月10日、通常国会に障害者自立支援法案が提出されました。ぽん太は行政や法律に詳しくないので、こういった文書を読み解くのは苦手ですし、関係者からの口コミ情報があるわけでもありません。でも、ぽん太ができるる範囲で読んでみて、わかりやすくQ&A方式で説明したいと思います。違ってるかもしれないけど許してね。

Q 32条はなくなるのでしょうか?
A はい、なくなります。障害者自立支援法の第47条で、「第32条を次のように改める。第32条 削除」と書かれています。

Q では、通院医療費の公費負担はなくなるのですか?
A いえ、なくなりません。障害者自立支援法で三障害共通の「自立支援医療費」に置き換えられるのです。

Q それを聞いて安心しました。でも、現在の5%よりも自己負担率が上がるのではないですか?
A 残念ながら、障害者自立支援法第58条の3によれば患者さんの自己負担率は基本的には10%に引き上げられるようです。5%が10%になってもたいしたことがないように思えるかもしれませんが、「いままでの倍」になるのですから大変です。

Q それは大変です。所得や病状によって、自己負担が少なくなる制度はないのですか?
A あるようです。障害者自立支援法第58条の3に、家計への影響や障害の状態を考慮して、「政令」によって自己負担額を減額したり、さらに厚生労働大臣が変更したりできると書かれています。しかし具体的な内容は障害者自立支援法には書かれていません。
 そこで今回の法案のもとになっている社会保障審議会障害者部会(第23回)(平成16年12月27日)の資料3 費用負担に関する考え方を見てみましょう。縦に長いページですが、真ん中から少し下あたりから、公費負担医療制度の説明が始まります。「医療費と所得に着目した自己負担」、「制度改正案の概要」、「モデル的な利用者の負担(精神通院)」といった項目が参考になります。これによると「所得」と、障害が「重度かつ継続」かどうかという、ふたつの基準から判断されるようです。
 まず生活保護世帯では、これまで通り無料です。
 住民税非課税世帯は10%の負担となりますが、収入によって支払額の月額の上限を2500円、あるいは5000円とするようです。住民税非課税となるのは、たぶん年間の所得が130万くらいだと思います。正確な数字はわからないのでごめんなさい。ただここで気になるのは住民税非課税「世帯」とある点です。障害者個人の所得ではなく、障害者を含む世帯の所得なのです。これまで32条の5%負担分に対する東京都の補助などは「障害者本人」の所得で判断していましたが、今度は「障害者を含む世帯」の所得で判断されることになります。
 住民税課税世帯のばあい、障害が「重度かつ継続」の場合は10%負担となりますが、支払額の月額の上限は世帯の年間所得に応じて1万円や1万5000円(図の数値がまちがって5000円となっているので注意)となります。ここで何が「重度かつ継続」なのかが問題となりますが、当面は「統合失調症、躁うつ病(狭義)、難治性てんかん」であり、「実証的な研究結果を踏まえ対象の明確化等を図る」と書かれています。
 住民税課税世帯で障害が「重度かつ継続」でないばあいは、原則として自立支援医療費は使えず、健康保険のみで30%の自己負担です。世帯の所得税額が30万円以下(およそ課税所得が年間200万円)のばあいは経過措置があるようですが、「段階的縮小」と書かれています。所得税額30万円以上のばあいは当初から30%です。
 (2005.4.19追記:あらたな情報をもとに、自立支援医療費を判定する記事をアップしました。)

Q 受給資格がせばめられるといううわさもありますが。
A 上で述べたように、住民税課税世帯(年間課税所得が約130万以上)のばあい、障害が「重度かつ継続」なものに限られます。具体的には、「統合失調症、躁うつ病(狭義)、難治性てんかん」などと書かれています。実際にどうなるかはわかりません。
 住民税非課税世帯ではこうした制限は書かれていませんが、これまでよりは範囲が狭められる心配はあります。

Q これまで東京都や市町村が負担してきた、住民税非課税者に対する5%分はどうなるのでしょう。
A どうなるのかぽん太にはわかりません。

Q いつから変更になるのですか?
A 障害者自立支援法案では、平成17年10月から、つまり今年の10月からとされています。

Q ぽん太先生は、この変更についてどう思いますか?
A これまでの32条の適応範囲はあまりに広すぎました。軽症のうつ病やパニック障害の患者さんにも適応されてきました。もう少し範囲を狭めてもいいと思います。それから「まったく無料」というのも問題があり、なかには無料をいいことに週に何度も来院したり不必要な多くの薬を要求する患者さんもおり、ある程度のコスト意識を持つことは大切だと思います。
 しかし障害を抱えながらがんばっている多くのひとたちがいるのは事実であり、そうしたひとたちは社会で支えていかなければなりません。今回の法案は名前からして障害者「自立」支援法案となっていますが、障害者福祉を「自立」という観点だけから一元的に見るのは間違っていると思います。福祉の切り捨てにならないように注意し、発言してく必要があります。
 また、現在の制度は手続きが煩雑すぎます。更新のたびに2枚も3枚も書類を出し、転居したり保険証が変わったりするたびに届けを出すのは、医師にも患者さんにも負担です。なんとかしてほしいものです。

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コメント

しらがおやぢさん、コメントありがとうございます。
現行の制度は複雑怪奇ですね。
現在の保険制度では、薬が7種類を超えると
処方箋料の値段が下がりますが、
制度が複雑になったら、
公務員の給料を下げる仕組みにしてほしいです。

投稿: ぽん太 | 2005/04/05 22:05

病院に勤務する者です。
いよいよ32条廃止(別法令へ移行)のようですが、負担を平等にするためとはいえ制度が複雑怪奇になってきているようですね。
今以上に病院・患者の業務負担が増えることは間違いなさそうです。
何か別の方法で、コストを負担してもらいながら、平等感を持たせられないものでしょうか・・・。

投稿: しらがおやぢ | 2005/04/02 20:20

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