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2005/02/05

東京都はちゃんと34条の移送を実施しなさい!

 平成11年6月の「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(精神保健福祉法)の改正で、第34条に「医療保護入院のための移送」が規定されました。
 これはどういう制度かというと、要するに、医療保護入院が必要な状態でありながら、主治医や家族が説得しても入院を拒否するばあい、「行政の責任」で患者を病院に運んでくれるというものです。
 これはとてもすばらしい制度です。これまでご家族が、患者さんを入院させるためにどれほど苦労してきたか。東京都の救急医療案内「ひまわり」に連絡をしても、何かあったら警察を呼んで病院に連れて行くように言われるだけです(「ひまわり」のひどさについては、そのうち改めて書きましょう)。警察も「事件性」がないと動いてくれません。患者を家族で病院に連れて行こうにも、多くは年老いた家族たちが、入院を嫌がって暴れる患者さんを病院まで連れて行けるわけがありません。民間の警備会社に依頼して連れて行ってもらうという裏技がありますが、これは普通でも数十万円の費用がかかります。この世界で有名な某会社は、ホームページに書かれているように、基本料金が315万円以上です。費用が高額という点以外に、患者さんを精神病院に運ぶという行為が、営利目的の民間企業になじむのか、という問題があります。結局患者さんは適切な治療が受けられずに病状を悪化させることになります。あるいは医者が無診療で薬を処方し、それを家族がこっそり食事や飲み物にまぜで患者さんに飲ませるという、「違法行為」が行われることになります。
 こうした背景で、精神保健福祉法の第34条による移送制度が作られたのです。
 東京都では遅ればせながら平成13年6月1日から移送制度が開始されました。しかし、実際にはほとんど運用されておりません。厚労省の統計の「衛生行政報告例」のなかに「医療保護入院・応急入院及び移送による入院届出患者数,都道府県ー指定都市(別掲)別」というのがあります平成13年度の「移送による入院」のなかの「保護者の同意による入院届出数」と「扶養義務者の同意による入院届出数」を見てみると、東京は両方で2件です。ちなみに全国では203件です。次に平成14年度は、東京都は1件、全国では187件です。最後に平成15年度は東京都はなんとゼロ件、全国は160件です。
 つまり東京都は、法が施行されてもうすぐ6年もたとうというのに、これまで3件しか34条の移送を行っていないのです。石原都知事は東京発医療改革とか言って東京ERを整備したりしており、それはそれで立派ですが、東京都は「精神科の医療では全国的に非常に遅れをとっている」わけです。
 34条の移送制度は、申請があったばあいは直ちに職員が出向いて患者に会い、移送が必要かどうか調査をしなければなりません。そして移送が不要と判断されたばあいは、その根拠や今後の対応を、書類に残さなければなりません。東京都にいったいどれくらいの移送の申請があったのかわかりませんが、6年でわずか3件しか移送の対象者がいないはずはありません。おそらくは「保健所の窓口で申請させないように握りつぶしている」に違いありません。というのも、ぽん太の患者さんのご家族が、保健所に移送を申請しようとしたところ、「患者さんの調査に行ってから実際に移送が行われるまで時間がかかるので、家族が危害を加えられるかもしれない」とか、「遠くの不便な病院に入院になる」とか、ほとんど「脅し」のようなことを言われ、民間警備会社を使って入院させるように勧められたのです。小泉さんの反対じゃありませんが、民間ができることが、何で行政機関ができないのでしょう? あきれてものが言えません。
 「精神障害者の移送に関する事務処理基準について」(平成15年3月31日、障発第243号)には、「都道府県知事は、移送に関する相談を受け付ける体制を整備しなければならないものとする。また、移送制度及び相談の受付窓口について周知に努めるとともに、受付窓口は利用者が利用しやすい体制となるよう配慮するものとする」と書かれています。東京都はやるべきことをきちんとやって欲しいものです。みなさんも、東京都にどんどん圧力をかけましょう。

【関連するブログ内の記事】
「精神障害者の移送に関する事務処理基準について」をアップしました(2007/08/02)
東京都の精神障害者の移送(34条)サボタージュに再びもの申す!(2005/07/02)

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精神医療・福祉」カテゴリの記事

コメント

コメントありがとうございます。
「てめえら死ねよ」とは、日々患者さんの命を救うために尽力なさっている救命救急医の言葉とは思えないですねcoldsweats01。それに、記事を一読していただければ、「精神科病院を受診しない患者さんをどうするか」という話しであることはご理解いただけるかと思いますが。
 それはさておき、この記事はいまでも時々閲覧されているようですが、実は2005年に書かれたもので、現在のぽん太の考えはこの頃とは異なっております。
 現時点ではぽん太は、34条というかたちでの患者さんの移送は、望ましくないと考えております。近年は、医療や福祉が患者さんの自宅に出向いてサービスを行う「アウトリーチ」という考え方が広まって来ております。入院が必要なのに同意が得られない患者さんの対応は、こうしたサービスの一部として行うべきだと考えています。
 詳しくは、機会があったら書きたいと思います。

投稿: ぽん太 | 2012/10/23 15:05

本当に34条は必要なのですか。精神科医がすぐ診ればいいじゃないですか。私は救急の医師ですが、あんたらのお花畑的発想、診断の曖昧さには辟易してます。薬中とかとってくださいよ。こちとら大量服薬やらリスカやら幻覚妄想状態やら毎日診させられていて、あんたらがすぐこないので薬も減らしてやってるよ。抗うつ剤を2種類以上出したり、BZ系で依存作って放置したり、てめえら死ねよ。

投稿: | 2012/10/04 14:22

「弟の病気に苦しむ姉」さん、コメントありがとうございました。
弟さんの件、大変ですね。
患者さんをどうやって入院させるかは、現在の制度化ではとてもむずかしく、こうすればいいという方法はありません。それぞれの場合ごとに関係者が力を合わせて考えるしかないです。
弟さんの治療がうまく進むよう願っております。

投稿: ぽん太 | 2009/06/29 17:40

34条移送のブログを拝見しました。はじめて知りました。
今、正に統合失調症である弟をいかにして入院させるかで、悩み苦しみ、
保健所、お医者様、警察、受け入れ先の病院(長谷川病院がよいといわれてます)を右往左往、たらいまわしをされながら、なんとかしなければいけないと必死になっている者です。こうした制度があることを、誰も口にはしていません。いったい、患者をどのように救い(大きな事件になる前に)、家族をどうサポートしようとしているのか、サポートなどするつもりはないのかもしれませんね。ぽん太先生はどちらにいらっしゃるお医者様なのでしょうか。どうか、どうしたらよいのかアドバイスをしていただけないでしょうか。

投稿: 弟の病気に苦しむ姉 | 2009/06/24 13:13

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