« 感情表出(EE)を下げていきいき家族(その4) | トップページ | 「帝王切開の語源」のネット上の生態学(上) »

2005/03/28

感情表出(EE)を下げていきいき家族(その5)

 家族の感情表出(EE)と統合失調症の再発について勉強をしてきた、みのぽん太の「おもいッきりブログ」、今回が最終回です。

 まず、これまでのおさらいをいたしましょう。

感情表出(EE)とは、
家族が表す次の三つの悪い感情
批判
敵意
巻き込まれ

 で、こうした悪い感情を家族が持っていると、統合失調症の再発率が上がるんでしたね。

統合失調症患者の9ヶ月後の再発率は
家族が低EEだと約1〜2割
家族が高EEで、週に35時間以上接していて、
服薬も不規則だと約9割

 ですから、ご家族のEEを下げ、過剰に患者さんと接触しすぎないことが大切なんでしたね〜。

EEを下げるには、
統合失調症の正しい知識を身につける
患者さんに対する接し方や対応を学ぶ
患者さんの気持ちを受け入れる
患者さんに関わりすぎず、うまく距離をとる

 さて、まとめは以上です。今回は、会場の奥樣方から質問をお受けして、お答えしたいと思います。さあ、どなたでもどうぞ。

 「みのぽん太さんの話しを聞いていると、ようするに家族が悪い、家族が悪いから子どもの統合失調症が悪化するということですか?」

 いえいえ、違います。家族が病気の悪化の「原因」なのではありません。「患者さんの病気が良くならないのは、患者さんの努力が足らないからではない」とぽん太は申し上げました。同じように、「患者さんの病気が良くならないのは、家族の努力が足らないからではない」と申し上げたいと思います。確かに家族のEEが高いと、患者さんの再発率は上がります。しかし「家族のEEが高い理由は、家族の努力不足や落ち度ではない」のです。
 EEが高くなるのは、重い慢性疾患の患者を家族に抱えたことに対する、正常な反応でもあります。これまで順調に育って来たお子さんが、病気によって「普通」の生活ができなくなることは、患者さんにとっても、ご家族にとっても、たいへん苦しいことです。
 病気の知識がないことでもEEは高くなりますが、それは主治医からの説明が不十分だったり、病気について学べる機会が少ないことが原因です。お子さんの病名さえ知らされていない家族もいっぱいいるのです。
 家族の孤立も高EEの原因となります。周囲のひとたちの偏見や誤解を恐れ、誰にも相談することができない家族も多いのです。家族会など、家族の思いをひとに話し、わかってもらえる場を増やすことが必要です。また、世間の偏見や誤解を正していくことも大切なのです。
 このように、家族のEEを下げるには、ご家族だけが努力すればいいのではなく、社会全体が取り組む必要があるのです。

 「要するに腹が立っても感情が顔に出ないようにすればいいのですか?」

 いえいえいえ、怒りを押し殺して笑っている表情ほど、恐いものはありません。感情というものは、ことばにしなくても相手に伝わるのです。「怒っていても顔に出さないようにする」のではなく、「怒らないようになる」ことが大切です。そのためには、これまで述べてきたように、家族教室などで病気について学んだり、家族会に参加したりすることがよいでしょう。

 「巻き込まれないほうがいいとおっしゃいましたが、子どもが何をしても好きにやらしておけばいいんですか?」

 いえいえいえいえ、過干渉もいけませんが、無関心もまたいけません。放っておくのではなく、「暖かく見守って」下さい。思い出してください。お子さんがまだ小さくて、やっと歩けるようになったころ、お子さんにどのように接していました? 転ぶと危ないからといって歩かせずに抱っこしていたら、お子さんは歩けるようになりません。かといって放っておいたら、転んで怪我をしたり、階段から落ちたりするかもしれません。お母さんたちは、子どもが転びそうになるのをハラハラしながらも、暖かく見守っていたはずです。そして本当に危ないときは、手を出して助けたはずです。患者さんたちにも、そのときのことを思い出して接していただきたいと思います。

 さあ、そろそろ時間となりました。これで「おもいッきりブログ」は終了します。また機会がありましたら、みのぽん太とお会いしましょう。

その1その2その3その4その5

|

« 感情表出(EE)を下げていきいき家族(その4) | トップページ | 「帝王切開の語源」のネット上の生態学(上) »

精神医療・福祉」カテゴリの記事

コメント

ぽん太先生、お返事ありがとうございます。愛情あるコメントには心が癒される思いです。確かに何が「うまい対応」かは難しいところですが、ぽん先生のお言葉と妻の様子をよく考慮し、その中でより良い対応していきたいと思います。


投稿: くまたろう | 2011/03/12 18:01

くまたろうさん、コメントありがとうございます。
いつもながら返事が遅くなり、申し訳ありません。
ぽん太のつまらぬブログが多少なりとも参考になったとのこと、うれしい限りです。
誠に申し訳ありませんが、ブログで個別の質問にはお答えしないことにしております(限られた情報から責任あるお答えをする自信がないので)。ですから一般論でしかお答えできませんが、お坊さんと親しければ、うまく応対していただくようお願いする方法もありますが(何が「うまい応対か」が難しいです)、親しくなければお坊さんに会いにいかないよう説得すべきでしょう(これもどう説得するかが難しいです)。
宗教に関しては、ぽん太自身が宗教が嫌いじゃないので(特定の宗派は信仰してませんが)、患者さんが宗教活動をすることは否定しませんし、宗教活動がプラスになっている場合も多いと思います。しかし宗教と妄想が混ざってしまって、妄想を悪化させるような場合は(例えば病的体験と宗教体験を混同するなど)、「宗教禁止」を言い渡している患者さんもおります。
奥様の仏教への関心が、治療にとってもプラスに働くといいですね。

投稿: ぽん太 | 2011/03/12 14:02

1カ月前から、妻が統合失調症で入院中です。4~5年前から徐々に進行していたように思えます。感情表出(EE)に関するお話はとても参考になりました。まさしく私はEEが高い人間でした。本当に恥ずかしい限りです。妻の妄想に対して批判したり巻き込まれたり、病気だとわかっていてもついイライラしたり。また仕事を家ですることが多いので、妻と接する時間が長く、過干渉ぎみです。退院してからどうしようかと思案していたのですが、このブログを読んで良かったです。ありがとうございます!
 それと、今、妻の退院後のことでひとつ悩んでいることがあります。妻は1年ほど前から仏教の勉強(本を読んだり、お寺に通ったり)をしていたのですが、仏教の関する妄想が多くあります。今一番強いのはあるお寺のお坊さんは前世で自分の弟子だったから困っていたら助けないといけないというものです。今日面会に行ったときも、退院したらそのお坊さんを助けに行くといってました。もし退院後、本当にそのお坊さんに会いに行くと言った時、どうすればいいのでしょうか?また仏教の本を読んだり、お寺に通うことなど仏教活動に関してはどのように対応すればいいと思われますか?
 ご回答いただければ幸いです。

投稿: くまたろう | 2011/03/05 21:39

ぽん太さんお返事ありがとうございました。前向きに進んでいきます☆彡

投稿: みかん | 2009/03/26 00:50

コメントありがとうございます。
統合失調症のご家族を支えることは大変なことと思います。共倒れにならないように、上手に距離を取りながら、お互いに、時に苦労はあっても、前向きに暮らせるといいですね。happy01
EEはとっても大切な考え方なのに、ネット上にわかりやすい解説がないことに気がついたのが、ぽん太がこの記事を書いたきっかけです。ふざけた口調で書いていますが、ぽん太が一生懸命勉強したことをまとめたつもりです。怒らないで読んでいただき、ありがとうございました。

投稿: ぽん太 | 2009/03/24 16:56

はじめまして。私は家族に統合失調症(本人は自律神経失調症といいます)患者がいます。もう10年以上経ちます。色々な事情で私が生活をともにし、基本的な生活の面倒をみてます。私自身も体に変調が現れ、どうにかなりそうで…ぽん太さんのEEの説明でやはり私がどうにかしないと離れて暮らすことは無理なんだと思いました。私なりに努力してきてるのですが、私の心がパンクしそうになります。
でもぽん太さんの説明は凄くわかりやすく今後の参考になりました。ありがとうございました。

投稿: ぽん太さん | 2009/03/22 13:12

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74997/3459151

この記事へのトラックバック一覧です: 感情表出(EE)を下げていきいき家族(その5):

« 感情表出(EE)を下げていきいき家族(その4) | トップページ | 「帝王切開の語源」のネット上の生態学(上) »