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2006/02/07

「観無量寿経」と「阿弥陀経」も読んでみた

 以前に浄土三部経のうち「無量寿経」を読んだぽん太は(無量寿経を読んでみたが……)、せっかくなので残りの二つの「観無量寿経」と「阿弥陀経」も読むことにしました。テクストは中村元他訳注『浄土三部経(下)』(岩波文庫、1964年)です。

 まず「観無量寿経」ですが、あらすじを書くのは面倒なので、たとえばこちらのサイト(無盡燈、観無量寿経の大意)をご覧下さい。
 このお経でまず目につくのは、ラージャグリハ市の大王一家に起きた悲劇の生々しい描写から始まる点です。お経のなかに殺すの殺さないのという血なまぐさい話しが出てくるとは驚きです。
 太子であるアジャータシャトル(阿闍世=あじゃせ)は悪友にそそのかされて、父である大王ビンビサーラ(頻婆娑羅)と母である大夫人ヴァイデーヒー(韋提希=いだいけ)を幽閉します。悲しみに沈んだヴァイデーヒーの願いに応えてお釈迦様が姿を現し、教えを説きはじめる、という次第です。
 ん?阿闍世?どっかで聞いたぞ。そういえば昔、小此木啓吾が「阿闍世コンプレックス」とか言っていた気がする。小此木啓吾(おこのぎけいご)は荻野目慶子(おぎのめけいこ)と発音がちょっと似ていますが無関係です。小此木啓吾といえば『モラトリアム人間の時代』(1978年)という本で有名になりました。今を去ること30年くらい前、どう生きてよいかわからず決定を先延ばしするという、ニートの先駆けのような人たちがいて、モラトリアム人間と呼ばれていたのでした。モラトリアム人間とニートはどう違うのか!などという問題はあんまり興味がわかないな。で、この小此木啓吾が阿闍世コンプレックスなどということを言っていたのだが、この概念を最初に取り上げたのは古澤平作だそうです。古澤平作と小此木啓吾は、日本の精神分析において重要な人物です。フロイトのオイディプス・コンプレックスがギリシア神話に題材を取り父子関係に焦点を当てていたのに対し、仏典に題材を取り母子関係を重要視する阿闍世コンプレックスという概念を提唱するというのは、わかりやすいと言えばあまりにわかりやすすぎます。しかしこのあたりは今回はみちくさを控えましょう。
 で、「観無量寿経」に書かれている阿闍世の話に戻りますが、これだけ聞くとひどい子供の家庭内暴力に苦しめられた両親の話に聞こえますが、実はこの話には前段階があるのです。それは例えばこちらの「無盡燈」の「伝導:舎衛城と王舎城」のページに出ています。まだ大王と大夫人のあいだに子供がいなかった時分、占い師に相談したところ、山中に仙人がいて三年後に死んで王子に生まれ変わるという預言をうけました。ところが三年待つことができなかった大王は仙人を殺してしまいます。仙人は死に際に「大王が私を殺したのだから、私も大王の子となって大王を殺そう」と言い残します。そこで大王と大夫人は、出産のときに高楼から子供を産み落として殺そうとしますが、子供は小指を損なっただけで命に別状なく成長していくのです。
 この部分は観無量寿経には書かれていませんが、おそらく当時は誰もが知っている話だったのでしょう。この部分を考え合わせると、阿闍世の両親もまた無実ではないのです。
 さて観無量寿経に戻ると、お釈迦様はまず最初に阿弥陀仏と極楽浄土を観想する十三の段階を説きます。日本の浄土教は、ただ念仏を唱えることを勧め観想などは否定していますから、少し気になるところです。
 ついでお釈迦様は、極楽浄土に往生することを願う人にも上品上生から下品下生まで9種類のレベルがあるとし、最悪の下品下生の人も「南無阿弥陀仏」と唱えることで極楽往生できると説きます。
 阿弥陀仏の仏像の手の形で、上品上生だのなんだのがあることは知っていまいしたが、この仏典に書いてあったことでしたか。そして先ほど阿闍世の話には前段階があることを書きましたが、浄土教におけるこの経典の解釈では、自分の子供を殺そうとした過去がある大夫人ヴァイデーヒーがお釈迦様に極楽浄土への成仏を願ったという点を重視するようです。彼女に自分の罪を自覚させ絶対他力の信仰に導くために、お釈迦様は下品下生のための念仏を説いたと考えるようです。浄土教を広めた僧たちはみな、自らを下品下生の罪ある者と考えたことはいうまでもなく、ぽん太は以前の記事(「悪人正機」の悪人とは我々のことである)でそのことを書きました。

 「阿弥陀経」はとても短いお経で、般若経仏典群における般若真経のように、浄土教のエッセンスをまとめた経典と思われます。このあらすじも、たとえば「無盡燈」の阿弥陀経の大意というページをご覧下さい。

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