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2007/03/21

【江戸】永井荷風も有馬屋敷跡を探検していた

 ぽん太は以前の記事「水天宮の場所の変遷」(2007/02/13)で、現在は日本橋にある水天宮が、もともとは1818年に有馬藩の江戸屋敷に祀られていたもので、1871年に有馬屋敷が赤坂に移るまでそこにあったことを述べました。そして、江戸(地図4)・明治(地図5)・現代(地図6)の地図を見比べてみると、有馬屋敷は明治時代には海軍造兵廠となり、現代は小学校や病院などが建ち並んでいることを述べました。
 先日、永井荷風の『日和下駄』(『荷風随筆集 上 (1)』野口富士男編、岩波文庫、1986年に所収)を読んでいたら、永井荷風が、有馬の猫騒動の古塚を探しに、有馬屋敷の跡地に忍び込んだ話しが出ていたので、ご紹介いたします。68ページから73ページにかけて書かれています。
 荷風が『日和下駄』を執筆したのは1914年(大正3)8月から翌年の6月にかけてですから、まだまだ東京のあちこちに江戸の名残が見られたと思います。荷風は、江戸切絵図を片手に東京の裏道を歩き、当時の東京と江戸を引き比べるのを楽しみにしていたようです。「第四 地図」に荷風は、次のように書いています。
 「蝙蝠傘を杖に日和下駄を曳摺りながら市中を歩む時、私はいつも携帯に便なる嘉永板の江戸切図を懐中にする。これは何も今時出版する石盤摺の東京地図を嫌って殊更昔の木版絵図を慕うというわけではない。日和下駄曳摺りながら歩いて行く現代の街路をば、歩きながらに昔の地図に引き合わせて行けば、おのずから労せずして江戸の昔と東京の今とを目のあたり比較対照する事ができるからである」(29ページ)。
 さて、「第八 閑地」は、市中に残るさまざまな閑地(あきち)について書かれていますが、そこに有馬屋敷跡が出てきます。この頃はすでに海軍造兵廠も取り壊されて広大な空き地となっていたのですが、その跡地に有馬の猫騒動の猫塚があるという噂が広まり、新聞にも何回か取り上げられたりしていたのだそうです。荷風は友人の久米氏(久米秀治でしょうか?ぽん太は日本文学に詳しくないのでわかりません)に誘われ、屋敷跡を訪ねます。「今年の5月頃の事である」とありますから、1914年(大正3)の5月でしょうか?最初、敷地の東側にある三田通りから侵入を試みましたが、板塀とどぶに阻まれて果たせません。そこで「恩賜財団済生会」という札の下がった門から、用事がある振りをしてなかに入ります。恩賜財団済生会はもちろん現在もあり、旧有馬屋敷の敷地内にある三田国際ビルヂングに本部があります。また同じ敷地内には、東京都済生会中央病院があります。ホームページ内の「病院沿革」を見ると、1915年12月に「恩賜財団済生会芝病院」が開設されたとありますから、荷風が訪ねたのはその1年半前で、まだ病院はできていなかったということになります。へ〜え、初代の院長は北里柴三郎だったのですね〜。
 あれ、でも北里柴三郎といえば、たとえばこちらの北里大学のホームページにもあるように、1914年に伝染病研究所を辞任し、私立北里研究所を創立して所長となり、1917年には慶応義塾大学医学科を創立して初代科長になったはずです。兼務だったのかな〜?よくわかりません。そのうちみちくさする機会があるかもしれません。
 さて、荷風に戻って、済生会の門から入った荷風と久米が奥へ進んで建物の裏手に回ると、うっそうと木が茂った空き地はなだらかな丘陵をなしていて、そのふもとに大きな池がありました。ところがその池のまわりは、大勢の大人や子供が釣り竿を持ってわいわいがやがや騒いでいて、さらには釣り道具やパンなどを売っているおじさんまでおり、荷風はすっかり拍子抜けしてしまったようです。目的の猫塚も、つまらない石のかけらで、はたして本当に猫塚の台石であったかどうかもはっきりしなかったと書いています。
 荷風は、書物や絵にも描かれた江戸時代の名園が、明治の文明によって惜しげもなく破壊されて兵舎や兵器の製造場となったこと、そしてこの跡地もまた新しい計画によって消え去って行くことを思い、深いため息をつきました。

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