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2007/03/25

【医療格差】精神病院への強制入院も金次第?

 過日、ぽん太のクリニックに通院している患者さんの病状が悪化し、緊急に医療保護入院が必要になりました。そこで入院先を探そうと近くの精神病院に電話で問い合わせたところ、2カ所続けて「差額ベッドならあいてます」と言われたので、ぽん太はショックを受けました。自分で希望して入院する任意入院で差額ベッド代を取られるのはまだしも、強制入院の一種である医療保護入院で、差額を払えないと入院できないというのは、ぽん太は納得できませんでした。緊急に強制入院が必要になったとき、お金がある人はすぐ入院できるけれど、お金がない人はしばらく待たされたり、遠くの病院になったりする時代が来たということです。
 精神科の入院形態に関しては、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(通称、精神保健福祉法)の第五章で規定されており、任意入院、医療保護入院、応急入院、措置入院、緊急措置入院があります。条文を読むのが面倒な方は、たとえばこちらの都立松沢病院のページでわかりやすく解説してあります。このうち任意入院は患者さん自身の意思による入院ですが、それ以外の医療保護入院から緊急措置入院までは、患者さん自身の同意がなくても可能な、一種の強制入院となります。
 精神科の病棟には、「開放病棟」と「閉鎖病棟」があります。開放病棟は、普通の内科や外科の病棟のように、出入りが自由な病棟です。閉鎖病棟は、病棟の入り口の扉に鍵がかかっており、入院している患者さんが自由に出入りできない病棟です。病状によって例外はありますが、おおざっぱに言うと、任意入院の患者さんは開放病棟に入院し、医療保護入院などの強制入院の患者さんは、閉鎖病棟に入院します。
 また差額ベッド代とは、入院したときにかかる医療費以外に、自己負担しなくてはいけない部屋代のようなものです。こちらのAll Aboutのページは、差額ベッド代についてわかりやすく書かれております。なんでも、防弾ガラスや北欧直輸入の応接セットを備えた1日21万円の差額がかかる豪華病室もあるそうです。
 精神科の入院費用は、おおよそ一ヶ月で十数万円ぐらいでしょうか。しかも高額療養費制度によって、限度額(収入やかかった医療費によって異なります)を超えた金額は戻ってきます。ところが差額ベッド代がこれに加わると、1日3,000円でも1ヶ月約9万円、1日5,000円なら月約15万円の出費が上乗せになります。しかも差額ベッド代は高額療養費制度の払い戻しの対象とはなりません。ついでにいうと年末の医療費控除に関しては、差額ベッド代は控除の対象になる場合とならない場合があります

 さて、神経症やうつ病の患者さんを主な対象としてアメニティを高めた開放病棟では、差額ベッド代が必要なものがこれまでもありました。こうした病棟が増えてきたのはこの数年でしょうか。患者さん自身が希望して任意入院する開放病棟では、多少費用がかかっても快適な入院生活を送りたいということで、こうした病棟があってもよいとぽん太は思います。しかし、患者さんの意思に反して入院させる閉鎖病棟で差額ベッド代がかかるというのは問題があると、ぽん太は思うのです。
 閉鎖病棟への入院は、緊急性がある場合が少なくありません。例えば統合失調症の患者さんが、激しい幻覚や妄想を伴って、興奮状態にあるような場合です。このようなケースで「お金が払えれば今日でも入院できるけれど、払えないならベッドが空くまで2週間家族で面倒を見て下さい」などというのは、患者さんにとっても御家族にとってもマイナスです。閉鎖病棟への入院は、身体疾患で言えば救急入院のようなケースが含まれているわけで、仮に体の具合が悪くなって救急車を呼んだときに、差額ベッド代を払えば入院できるけれど、払えないと入院できないなどということがあったら、人道上大きな問題になるのではないでしょうか。
 お金がなければ、精神科救急を利用すればよいという人もいるかもしれません。確かに、ぽん太が棲息している東京都の場合、夜間休日の精神科救急の制度があります。しかしそれはあくまでも夜間休日だけの制度であり、しかもそこで受け入れてくれるのは警察沙汰になるような激しいケースだけです。ですから通常の緊急入院ではこの制度を使うことはできません。
 しかし、だからといって精神病院を非難すればいいというわけではありません。ここ数年、診療報酬が引き下げられ、精神病院の収入は減少の一途をたどっていますから、こうした方法で収入を増やさないことには、生き残っていけないという事情があるのです。
 ちかごろ「格差社会」ということが言われております。ぽん太は、その全体像を分析する能力は持ち合わせていませんが、ぽん太が直接関わっている精神医療の世界に限れば、お金の有る無しで受けられる医療の質が変わるという「医療格差」が増大してきていることは事実です。

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