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2007/08/08

【読書】田山花袋の『温泉めぐり』を読む

 書店で目にとまった、田山花袋の『温泉めぐり』(岩波文庫、2007年)を買って読んでみました。
 田山花袋というと『蒲団』とか『田舎教師』とかいう小説が頭に浮かびます。昔読んだことがあるはずなのですが、まったく記憶にありません。げに恐ろしき狸脳! ウィキペディアで調べてみると、1872年(明治4年)に現在の群馬県館林市で生まれ、1930年(昭和5年)に死去、自然主義派の代表的な小説家だそうです。紀行文の評価も高く、温泉巡りの本も多く書いているそうで、本書もそのうちの一冊のようです。ちなみに本書が再初に出版されたのは1918年(大正7年)です。
 読んでみると大正時代の温泉場の様子がよくわかりますし、自分が行ったことがある温泉を当時と読み比べてみるなど、なかなか面白い本です。興味がある方は各自読んでいただくことにして、ぽん太が気になった箇所をいくつかみちくさしてみましょう。

 まず「8 箱根から伊豆海岸へ」の章。「熱海は日本でも二つしかない間歇泉の一である」。えっ! 熱海が間欠泉? 聞いてないよ〜。ちなみに間欠泉とは、一定周期で吹き上げる温泉のことで、アメリカのイエローストーンの間欠泉が有名です。「熱海 間欠泉」でググってみると、大湯間欠泉跡というのがあり、熱海の代表的な源泉のひとつで、かつては徳川家康も訪れたそうですが、関東大震災の頃から噴出が不規則になり、現在は人工的に温泉を吹き出させているそうです。近くにある日航亭大湯に入ったことがあるのに、不覚にも知らなかった。温泉好きでありながら熱海の歴史も知らなかったとは、まだまだ修行が足りません。
 さて、花袋は日本に間欠泉が二つしかないと書いておりますが、脚注で「もう一つの間歇泉は陸前鬼首の吹上温泉」と言っております。しかしwikipediaの間欠泉の項目を見てみると、実際は日本にも多くの間欠泉があるようです。上諏訪の間欠泉などは目立つのに花袋は知らなかったのだろうか、と疑問に思ってぐぐってみると、こちらの長野日報の記事にあるように、上諏訪の間欠泉が掘削されたのは1983年のことだそうです。ほかの間欠泉も、当時は知られていなかったり、最近掘削されたのかもしれませんが、いちいち調べる気力はありません。

 次に「21 榛名へ」の章。「……相馬ケ嶽の東南麓にガラメキという小さな温泉がある。旅館は一軒か二軒しかないけれども、また世離れたところがあって行って見て面白い」とある。ガラメキ温泉? 聞いたことないよ〜! 試しにググってみると入浴体験記がいっぱい出てきます。知る人ぞ知る温泉のようで、Yahoo!地図にも載っています。近くの相馬ヶ原には旧陸軍の演習場がありましたが、大戦後それを米軍が接収したため、ガラメキ温泉は立ち退きを命じられたそうです。

 ぽん太が以前の記事(【秘湯】八ヶ岳の本沢温泉は2時間歩かないと行けません(★★★★)2007/07/03)で書いた本沢温泉が、「32 上田附近」に出てました。「南佐久の軌道の通っているところを、岩村田から臼田を経て、千曲川の谷に添って遡ると、松原湖などという世離れた湖水があって、八ヶ嶽の裏面に、本沢温泉というのがある。これは軌道の終点から五、六里山に入って行かなければならないが、八ヶ嶽登山者の常に行って泊まるところで、四、五月頃から湯を開いて、十一月にはそれを閉じるというような深山窮谷の中に位置していた」。歴史ある温泉なんですね。

 下部温泉や身延に行くには、今なら甲府から国道52号線を南に車で下って行きますが、「44 下部の湯」によれば、花袋は鰍沢から富士川を舟で下ったそうです。当時は川を舟で下るという交通手段がまだ残っていたんですね。

 「60 越後の諸温泉」に、先日ぽん太とにゃん子が行って来た松之山温泉が出てました。「しかし、越後の人にきくと、松の山温泉を説く人が多い。そこは土地としても深い山の中であり、交通も不便であるけれども、効能が多いので、浴客が年々数万に達するという話しであった」。以前の記事で書いたように(【松之山】大棟山美術博物館(坂口安吾記念館)、マリア観音、天水山のブナ林2007/08/06)松之山温泉は、坂口安吾によれば寂れた温泉のようでしたが、田山花袋によるとなかなかにぎわっているようで、何だか矛盾しています。そこで松之山温泉の歴史をググってみると、南北朝の頃にすでに湯治場としてにぎわっており、江戸時代中期には、有馬温泉、草津温泉とともに「日本三大薬湯」と称されて繁盛していたとのこと。あれ、ぽん太は松之山温泉は明治時代の石油の掘削で見つかったと聞きましたが? 以前からあった源泉と、石油掘削でみつかった源泉が両方あるのかな? これより先は松之山の郷土史料にでもあたらないと調べられないので、みちくさの範囲は超えてしまうようです。
 またこの章では湯沢温泉についても書かれています。三国峠越えの宿として昔はにぎわったけれど、汽車が通ったために泊まる人もなくなっているだろう、と書かれていますが、現在はスキーでまたにぎわっているわけで、時代の波を感じさせられます。

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