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2007/12/14

【歌舞伎】2007年12月歌舞伎座夜の部「寺子屋」「粟餅」「ふるあめりかに袖はぬらさじ」

 午前中の雨も上がった銀座の街に、今年の歌舞伎の見納めに出かけてきました。今回は、海老蔵と玉三郎の喜劇二つで、三津五郎の踊りを挟んだ演目。海老蔵が何をやってくれるかわくわくしながら行ったのですが、期待にそむかず楽しませてくれました。
 最初は「寺子屋」。花道を海老蔵が深刻そうな顔をしながら出てきます。なんかおかしいです。家に入って、子どもたちの顔をじっと見つめます。なんかおかしいです。戸浪が小太郎を引き合わせます。すぐ横にいるのに海老蔵の目には入らぬ様子。突然気がついて、すんごい顔して目玉をひんむいてびっくり仰天。驚き過ぎやろ! 顔はかっこいいのになんでかな〜。恐いもの見たさで1月の新橋の切符も買ってしまいました。頑張れ海老蔵!
 勘三郎の松王丸は、前半ではあまり大きさを感じませんでしたが、後半の心情を吐露する部分がとてもよく、涙があふれてきました。福助も抑えた演技で悪くなし。勘太郎は相手が相手なのでいいのか悪いのかよくわかりませんでした。
 「粟餅」は、軽く明るい所作事。三津五郎と橋之助の踊りも完成された芸で、安心してみてられました。
 「ふるあめりかに袖はぬらさじ」は、戦後に作られた有吉佐和子の有名な芝居の、歌舞伎座初演だそうです。あまり期待しないで見たのですが、意外や意外、とてもおもしろかったです。とにかく戯曲がすばらしい。亀遊と藤吉の淡い恋、イルウスと岩亀楼主人と唐人口のドタバタ、「亀勇の死」を滔々と語るお園、ラストの寂寥感など、演劇的な見所のフルコース。また、女性から見た男性のしょ〜もなさが実によく描かれていて、男のぽん太から見ても、「あるよな〜」という感じでした。亀遊に恋心を抱いていながら志のためにアメリカに渡ろうとする藤吉。また藤吉は、浪人客に脅されたお園が口から出任せで烈女亀勇の最後の物語を語ったのを聞いて、「(亀遊の死に対する)後ろめたさがなくなりました」と言い出す始末(「をひをひ、お前もかい」とツッコミたくなりました)。思誠塾の面々は、正義だ思想だ政治だなんのと理屈を振りかざし、お園を脅しつけて帰って行きますが、そのくせけっして自分たちは、大橋先生とお園の関わりや亀遊の死などの真実を手に入れることはできません。
 「亀遊の死」という現実の周りにさまざまな言葉が紡ぎだされて上滑りし、それに人々が踊らされていくさまは、ラカンの精神分析をも思わせます、などと精神科医っぽいコメントも付け加えてみます。
 「歌舞伎」としてやる意味があるかどうかという問題はありますが、ぽん太はこれまでの歌舞伎以外の上演を見ていないので、何とも言えません。ただ、せっかく歌舞伎でやるのなら花道を使って欲しいと思いました。とはいえ、玉三郎以下一座総出演の熱演でおおいに盛り上がり、今年の最後を飾るにふさわしい舞台でした。

1、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)寺子屋
             松王丸  勘三郎
            武部源蔵  海老蔵
            春藤玄蕃  市 蔵
          涎くり与太郎  亀 蔵
            百姓吾作  寿 猿
          御台園生の前  松 也
              戸浪  勘太郎
              千代  福 助
2、粟餅(あわもち)
              杵造  三津五郎
              臼造  橋之助
3、ふるあめりかに袖はぬらさじ(ふるあめりかにそではぬらさじ)
            芸者お園  玉三郎
            通辞藤吉  獅 童
            遊女亀遊  七之助
          唐人口マリア  福 助
            イルウス  彌十郎
           浪人客梅沢  権十郎
            同 佐藤  海老蔵
            同 堂前  右 近
             大種屋  市 蔵
            幇間和中  猿 弥
         唐人口チェリー  吉 弥
          同  メリー  笑 也
          同バタフライ  松 也
          同  ピーチ  新 悟
            芸者 奴  笑三郎
            同 太郎  春 猿
            帳場定吉  寿 猿
           旦那三河屋  男女蔵
           同 駿河屋  亀 蔵
           同 伊東屋  友右衛門
          思誠塾多賀谷  段治郎
           同  飯塚  勘太郎
           同  松本  門之助
           同  小山  橋之助
           同  岡田  三津五郎
           岩亀楼主人  勘三郎

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