海老蔵大活躍の歌舞伎エンターテイメント(2008年1月新橋演舞場)
1月の歌舞伎鑑賞の締めくくりは、市川海老蔵が五役を勤めるという、新橋演舞場の『雷神不動北山櫻』です。
筋書によれば、1742年(寛保2年)に大阪の佐渡嶋長五郎座で初演された狂言をもとに、新たに台本を書き直したものだそうです。この狂言には、歌舞伎十八番のうち『鳴神』『不動』『毛抜』の三つが含まれていますが、初演時に新たに創られた『毛抜』以外は、初演以前からあった演目を組み込んだものだそうです。通し狂言としての上演は、平成8年以来だそうです。
海老蔵主演とあって、会場の雰囲気がいつもの歌舞伎とは違い、若い女性やカップルが目立ちました。2階には、成田山新勝寺の不動明王が出開帳しておりました。
で、市川家に伝わる歌舞伎十八番が三つも入っている演目なので、古典歌舞伎の伝統にのっとって演じるのかと思いきやさにあらず。発端の鳴神上人や除幕第一場の早雲王子は、「を、今回は、海老蔵もなかなか押さえて演じてるじゃん」という感じだったのですが、除幕第二場の安倍清行の女好きのなよなよ男では、むむむ、ちょっと変。二幕目の『毛抜』もNHKの子供番組に出てくるみたいな変なキャラ。まわりの澤瀉屋一門の演技も現代劇風。『鳴神』では、右之助・市蔵の白雲坊・黒雲坊がさすがに歌舞伎味のあるすばらしい演技で、ここでは海老蔵も古典歌舞伎を演じきるのかと思いましたが、エッチでコミカルな演技でエンジン全開。かための盃を飲む前からロレツが回らなくなっていて、ずいぶん堕落が早い鳴神上人でした。大詰めの立ち回りは派手で海老蔵の身体能力を遺憾なく発揮、最後は不動明王の空中浮遊のイリュージョンで幕となりました。
見事な歌舞伎風エンターテイメントで、若い客層を魅了していましたが、古典歌舞伎が好きなぽん太にはちと不満が残りました。
新橋演舞場 初春花形歌舞伎
成田山開基1070年記念
通し狂言 雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)
鳴神上人
粂寺弾正
早雲王子 海老蔵
安倍清行
不動明王
雲の絶間姫 芝 雀
関白基経 門之助
文屋豊秀 段治郎
腰元巻絹 笑三郎
秦秀太郎 春 猿
小野春風 宗之助
山上官蔵 猿 弥
八剣玄蕃・黒雲坊 市 蔵
秦民部・白雲坊 右之助
小野春道 友右衛門
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