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2008/01/14

モーツァルトの『魔笛』とフリーメイソン

 先日ぽん太は、プラハ国立劇場の『魔笛』を観てきました。『魔笛』がフリーメイソンを題材にしていることはよく知られておりますが、家に帰ってから書庫にあった『フリーメイソン 西欧神秘主義の変容』(吉村正和著、講談社現代新書、1989年)と、『フリーメイスンとモーツァルト 』(茅田俊一著、講談社現代新書、1997年)を読み返してみました。
 フリーメイソンというと、世界征服をたくらむ秘密結社のように思っているひともいるようで、たとえばビューヒナー(1813-1837)の『ヴォイツェク』にも、次のようなセリフがあります。
 「いいかアンドレース、見えるだろう、草の上に筋がさ。首が転がってった跡だぞ。ある男がそれを抱えあげた、針鼠だと思ってな。そしてら、そいつは三日三晩経ったら棺桶に入ってたんだとさ。アンドレース、フリーメイソンの仕業だぞ。俺には分かったんだ。フリーメイソンだぞ、しーっ!」(ビューヒナー『ヴォイツェク ダントンの死 レンツ』、岩淵達治訳、岩波文庫、2006年、73ページ)。
 しかし実際のフリーメイソンは、会員相互の親睦や会員の道徳的向上、慈善などを行う団体のようです。フリーメイソンの起源にかんしては様々な説があるようですが、近代的なフリーメイソンが歴史の舞台に登場するのは、18世紀初頭のイギリスのようです。フリーメイソンはまもなく大陸に伝わり、1730年代にはヨーロッパ各地に、ロッジと呼ばれる集会場が作られました。モーツァルトの住んでいたオーストリアでは、マリア=テレジア(1717-1780)は1764年にフリーメイソンを禁止したものの、その後を継いだヨーゼフ2世(1741-1790)はフリーメイソンに寛容な態度をとり、彼のもとでオーストリアのフリーメイソンは全盛期を迎えました。
 18世紀は啓蒙主義の世紀であり、合理主義が台頭し、キリスト教の威信が低下しました。神への帰依のかわりに人間の道徳的完成を掲げ、合理主義に基づくフリーメイソンが、その空隙を埋めたと考えられます。
 モーツァルト(1756-1791)がいつ頃からフリーメイソンに関わるようになったのかは不明ですが、1784年12月14日にウィーンのロッジ「慈善」に入会したことは確かなようです。以後モーツァルトはフリーメイソンと密接に関わり、フリーメイソン的な音楽をたくさん作曲しているそうです。また具体的に『魔笛』のどこがどうフリーメイソンなのかなど、興味がある方は『フリーメイスンとモーツァルト』をお読み下さい。ちなみに『魔笛』の初演は1791年ですね。
 『魔笛』では、ザラストロは「イシス」と「オシリス」を信仰していましたが、これらは古代エジプトの神々ですね。フリーメイソンとイシス・オシリスが関係あるのかどうかは、今回読んだ2冊の本には書いてありませんでした。
 隆盛を極めたフリーメイソンですが、1875年にヨーゼフ2世は「フリーメイソン勅令」を発令し、フリーメイソンの管理・統制に乗り出しました。これまで容認していたフリーメイソンに対し、一転して締め付けを行った理由は、神秘主義的・カルト的な傾向が強まったこと、反政府運動の隠れ蓑になったこと、内部の不透明な組織の拡大を恐れたことなどが考えられますが、はっきりとはわからないようです。しかしこれをきっかけに、フリーメイソンの退会者が急増するようになりました。さらにフランス革命の影響がヨーロッパに波及していくなかで、啓蒙主義・政治改革派であり、ロッジのなかでは階級差を認めなかったフリーメイソンは、ジャコバン派に接近し、その結果政府の取り締まりの対象となっていきました。この結果ウィーンでは、1794年に全てのロッジが閉鎖されました。
 こんかい読んだ本には、その後のフリーメイソンの歴史は書かれていませんが、こうした流れのなかで「過激派の秘密組織」みたいなイメージが作られ、冒頭のビュヒナーのような言い方がされるようになったのかもしれません。
 ちなみにこちらが、フリーメイソンの日本グランド・ロッジのサイトです。

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