【舞台】前代未聞のパフォーマンス(『空白に落ちた男』首藤康之・小野寺修二・coba)
妻のにゃん子が、「首藤康之が出るからみたいにゃ〜、みたいにゃ〜」と鳴いてうるさいので、寒いなか両国まで出かけてきました。
マイムというと「か、壁だ」みたいなのしか知らなかったぽん太は、内心ほとんど期待していなかったのですが、これまで見たことのない全く新しいジャンルのパフォーマンスにびっくり仰天!あっという間の1時間半でした。
会場のベニサンピットは、染色会社の紅三が本社工場跡を利用してオープンした小劇場で、外観はいかにも下町の工場といった感じです。客席数わずか180の小さなスペースですが会場と舞台の一体感があり、こけら落としは坂東玉三郎がつとめたのだそうです。スタジオも7つあるそうで、昔からの下町に、このような文化を支える企業があることは、喜ばしいかぎりです。
舞台上にはアンティークっぽい煤けた室内がしつらえてありますが、天井に逆さにバスタブなどの家具があったりして、エッシャーの絵のような歪んだ空間となっています。
cobaの哀愁に満ちたアコーディオンの演奏(残念ながら録音でした)のあと、舞台が明るくなると、首藤康之がひとりテーブルに座って煙草をふかしたり手帖を繰ったりします。単なるバレエダンサーでは間がもてないところですが、さすがに首藤は観客をしっかり引きつけ、ただのダンサーではないことを見せつけます。
その後に舞台上で繰り広げられるものを、いったい何と表現したらいいのでしょうか?この不思議なパフォーマンスを言葉に置き換えることは困難です。無声映画のフィルムを、速度を変えたり反復したりしているようでもあります。映画の『去年マリエンバートで』や、昔テレビでやっていたモンキーズも思い出されます(え?誰も知らない?)。
5人の登場人物が、まるでオートメーション工場のロボットのように同期したりずれたりして動きます。人物が突然消えたり現れたりするのを、身体が瞬間的に人間らしさを失って無機的になることで表現します。反復。主体の入れ替わり。突然とろけていく人間たち。現実と非現実の混交。机・椅子・本棚と人間の複雑な動き。日常性のなかの違和感。
小野寺修二の生み出す不思議な空間は、ときにはユーモラス、ときにはゴシック的なおどろおどろしさがあり、悪夢や、さらには統合失調症の幻覚妄想状態のようでさえあります。とはいえ高踏なゲージュツを気取ったりはせず、ベタなギャグもあったりして、楽しめる舞台に仕上がっていました。
元東京バレエ団メンバーの首藤は、クラシックバレエのダンスを封印。まずは小野寺をリフトして渋く技を披露、終盤にはしっかりコンテンポラリー風のソロ・ダンスも盛込まれ、バレエファンのぽん太も満足。
全体としてみると、人間の機械化・部品化、テクノロジーに支えられた生活、危険に囲まれながらもそれに気づかずに安穏と暮らしていることなど、現代的な問題意識を感じました。
久々にいいものを見た。小野寺修二をぴあとイープラスにアーティスト登録しておこおっと。
帰りがけに、赤穂浪士の討ち入りがあった吉良邸跡と、明暦の大火で亡くなった人を祀った回向院をみちくさしました。回向院は、境内で江戸後期に勧進相撲が行われたことで有名で、境内には鼠小僧次郎吉の墓もあります。
公演期間:2008年1月14日〜2月28日
作・演出:小野寺修二
音楽:coba
出演:首藤康之/梶原暁子/藤田桃子/丸山和彰/小野寺修二
会場:ベニサン・ピット
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