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2008/03/24

【歌舞伎】かわいくてやがて恐ろしい藤十郎の娘道成寺(2008年3月歌舞伎座・夜の部)

 わ〜い、桜じゃ桜じゃ。ぽかぽか陽気のなか、ぽん太とにゃん子は歌舞伎座に出かけてきました。
 まずは「鈴ヶ森」。前髪立ちの美少年、白井権八が雲助どもをバッタバッタと斬り捨てますが、その際の小道具の仕掛けが面白いという演目です。軽い一幕物ですが、配役がとにかく豪華でした。芝翫の白井権八はさすがに立派ですが、後には吉原に入り浸るという若侍の色気が感じられなかったのが残念です。富十郎の幡随院長兵衛は、朗々としたセリフまわしといい侠客らしい気っ風の良さといい親分らしい男気といい最高。
 藤十郎の「京鹿子娘道成寺」は、今回一番の見物でした。しかも愛之助の楽しいマイマイ尽くしの道行きと、團十郎の迫力満点の押戻しまで入ったフルコース。実はこれまでぽん太は踊りというと、あんまりよくわからないし、たいてい弁当のあとだし、時々意識喪失するのが普通でした。しかし今回は一睡もしないで最初から最後まで見とれていました。娘らしいかわいらしさ、怨霊となってからの迫力、とても喜寿とは思えません。おまけに手ぬぐいもゲットしました。
 「江戸育お祭佐七」は初めて観る狂言ですが、配役や部分部分の場面はいいのに、脚本が変。菊五郎演じるイナセだけども子どもっぽいかわいらしさを持ち合わせた鳶の佐七、時蔵の美しい芸者小糸、仁左衛門の堂々とした鳶頭など配役は最高です。また、ひとつひとつの場面はすばらしく、神田祭りのにぎやかな雰囲気や、煙草盆を使ってのじゃらじゃら、佐七が小糸に言いよる伴平をやっつけて颯爽と立ち去って行く姿、家で新婚気取りの佐七と小糸のやりとり、仁左衛門の鳶頭がきっちりと話しをつける風格、書き置きをしたためる小糸を心を知らずに花道で訪ねようか訪ねまいか迷う場面、柳原土手の殺害シーンの妖しい美しさなどなど、どれも絶品です。ところが全体の話しの流れが悪く、いまひとつ気持ちが盛り上がりません。ストーリーの骨格は、「女がやむにやまれぬ事情から、本当は愛している男に愛想尽かしをするが、男はそれを本気にして逆上し女を殺してしまう」というもので、「籠釣瓶花街酔醒」や「伊勢音頭恋寝刃」と基本的には同じですが、なんかスカッとしません。かっこいいと思っていた仁左衛門の鳶頭が、実は強欲ババアおてつに手玉に取られていたことがあとでわかります。佐七の仇の娘であったという小糸の訴えを聞いた佐七が、小糸がおてつとグルになって自分をだまそうとしていると、いとも簡単に誤解するあたりも不自然。柳原土手で佐七が小糸を殺害したあと手紙を読み始めるまでの運びがなんだか滑稽で、真実を知った佐七が小糸を抱いて「死んでる〜」とか言うのも、気持ちが冷めてしまいます。幕引きも佐七と伴平の闘いでは、なんだか尻つぼみの感じがしました。
 「籠釣瓶花街酔醒」や「伊勢音頭恋寝刃」では、愛想尽かしされた屈辱と恨みとがヒートアップしていって殺人の大団円に至るという盛り上がりがあったのですが。「江戸育お祭佐七」は、佐七のダメ男ぶりを楽しむ狂言なのでしょうか?

【演目と配役】
一、御存 鈴ヶ森(すずがもり)
            白井権八  芝 翫
           東海の勘蔵  左團次
            飛脚早助  段四郎
           北海の熊六  彦三郎
          幡随院長兵衛  富十郎
二、坂田藤十郎喜寿記念
  京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)
  道行より押戻しまで
           白拍子花子  藤十郎
              所化  翫 雀
               同  扇 雀
               同  進之介
               同  孝太郎
               同  愛之助
               同  壱太郎
               同  虎之介
               同  吉 弥
        大館左馬五郎照秀  團十郎
三、江戸育お祭佐七(えどそだちおまつりさしちり)
  浄瑠璃「道行旅路の花聟」
            お祭佐七  菊五郎
            芸者小糸  時 蔵
          すだれの芳松  権十郎
              三吉  錦之助
             鳶重太  松 江
             同柳吉  男女蔵
             同長蔵  亀三郎
             同辰吉  亀 寿
             同仙太  松 也
             同佐助  萬太郎
             同勇次  巳之助
             娘お種  梅 枝
           女髪梳お幸  歌 江
           箱廻し九介  亀 蔵
          おででこ伝次  市 蔵
           矢場女お仲  右之助
             おてつ  家 橘
            倉田伴平  團 蔵
          吉野屋富次郎  萬次郎
          世話人太兵衛  田之助
          鳶頭勘右衛門  仁左衛門

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