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2008/05/08

【医療】近頃話題のジェネリック医薬品についてみちくさ

 ゴールデンウィークあけの最初のブログは、楽しい記事から始めたいところですが、以前から気になっていたジェネリック医薬品についてみちくさしてみましょう。

【ジェネリック医薬品を使わないと生活保護を打ち切り!?】
 本日のみちくさのスタート地点は、2008年4月27日の毎日新聞に掲載された「ジェネリック医薬品:生活保護には安価薬 不使用、手当打ち切りもーー厚労省通知」という記事です。その内容ですが、生活保護受給者の投薬は値段の安いジェネリック医薬品を使うように本人に指導し、指導に従わない場合は生活保護手当の打ち切りも検討するという通知を、厚生労働省が4月1日に出したというものです。
 その結果がどうなったかというと、通知を出してからわずか1ヶ月後、マスコミで取り上げられてから3日後の4月30日に、厚労省は「手当打ち切り」などの対応の撤回を行いました(「ジェネリック医薬品:使用指示問題 「手当打ち切り」撤回、都道府県に厚労省通知」毎日新聞2008年4月30日)。

【ジェネリック医薬品のテレビCM】 
 この2つの記事を理解するために、まずジェネリック医薬品(後発医薬品)についておさらいしておきましょう。
 意味はよくしらなくても、「ジェネリック」という言葉に聞き覚えがある方も多いのではないでしょうか? 最近はテレビCMが盛んに流されており、黒柳徹子の人形が「ジェネリック」と代弁する東和薬品のCM(動画あり)や、高橋英樹がジェネリックを薦める沢井製薬のCM(動画あり)など、「ああそれか!」という感じです。
 対して渡哲也が「どんな薬かだけじゃなく、どこの薬かを考えたことがありますか」と言う第一三共製薬のCM(動画あり)は、ジェネリック医薬品メーカーを意識しているようにも思われます。

【ジェネリック医薬品とは】
 で、ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは何かですが、詳しく知りたい方は、こちらのWikipediaの「後発医薬品」を見るなり、各自ググルなりしていただくことにして、ここでは簡単にまとめておきましょう。新しい薬(先発医薬品)を発売するには、膨大な開発費がかかります。したがって先発医薬品の薬の値段(薬価)には、これらの研究開発費が上乗せされているわけです。先発医薬品は特許で守られているのですが、特許権の存続期間は特許出願日から20年(場合によって25年)です。一般には、特許を出願しても、薬として発売されるまでには長い年月が必要ですから、発売されてから特許が切れるまでの期間はさらに短くなります。で、先発品の特許が切れると、他のメーカーが同じ成分の薬を出せることになりますが、この場合はどんな化学物質かすでにわかってますし、薬として承認を得るための条件も厳しくないので、安い値段で売り出すことができます。これがジェネリック医薬品(後発品)です。昔は、特許が切れるとゾロゾロ出てくるので、通称「ゾロ」と呼ばれていました。

【ジェネリック医薬品の名前の由来】
 ちなみに「ジェネリック医薬品」という名前の由来ですが、英語のgeneric drugから来ています。薬には、化学薬品としての成分を表す一般名(generic name)と、製薬会社が発売するときにつける商品名(trade name)があります。例えば精神科でよく使う「ドグマチール」はアステラス製薬の商品名で、一般名はスルピリドです。同じ薬の日本シェーリングの商品名は「ミラドール」、大日本住友製薬の商品名は「アビリット」です。で、アメリカなどでは、後発品を処方する場合に一般名(generic name)を書くことが多いので、後発品はgeneric drugと呼ばれているのです。
 日本で「ジェネリック医薬品」という用語が使われるようになったのは最近のような気がしますが、「ゾロ」とか「後発」といったマイナスイメージを避けるためだとぽん太には思われます。
 日本のジェネリック医薬品には、以前にはさまざまな名称がつけられていましたが、最近発売されたものは「一般名+会社名」というパターンになってきています。たとえばスルピリドに関しては、昔からジェネリックを出している沢井製薬は「ベタマック」という商品名ですが、最近になって出した共和薬品は、「スルピリド錠○mg「アメル」」、大正薬品は、「スルピリド錠○mg「TYK」」、といった具合です。昔からあるジェネリックには、変な名前のも多かったです。たとえばセレネースのジェネリックの「エセックチン」など、何か口にしにくい気がします。ハルシオンのジェネリックのアサシオンなどはassassinを連想させます。

【ジェネリック医薬品ってどれくらい安いの】
 実際にジェネリック医薬品がどのくらい安いか見てみましょう。日本ジェネリック医薬品学会が運営する「かんじゃさんの薬箱」というサイトには、ジェネリック医薬品の検索ができるページがあります。試しにドグマチール錠100mgで検索すると、アステラスの先発品「ドグマチール錠100mg」は1粒22.0円、共和薬品のジェネリック「スルピリド錠100mg「アメル」」では6.4円で、3分の1以下です。ちなみに面白いのは、「スルピリド錠50mg「アメル」」の値段も同じく6.4円。なんと50mgでも100mgでも値段は同じ。つまり化学薬品そのものの値段はほとんどゼロということです。
 ドグマチールは極端に安くなる方ですが、他の薬でも何割か安くなるのが一般的です。

【何でジェネリック医薬品が普及しないのか】
 こんなに安くて品質も同等なら、ジェネリックの方がいいに決まっています。なのになぜ普及しないのでしょうか。それにはジェネリックには問題点もあるからです。いろいろと言われていますが、「ジェネリック 問題点」でググルといろいろ出てきますので、各自御覧下さい。いくつかの論点をピックアップすれば、(1)化学薬品は同じでも他の添加物が異なるので、効きすぎたら効かなかったりする可能性があり、また安全性にも不安がある、(2)錠剤ごとの薬品の含有量や溶解性、吸収量のばらつきが大きい、(3)ジェネリック製薬会社の、販売している薬に対する情報収集や情報提供の不足、(4)市場への供給の安定性が疑問、などがあります。
 (1)については、昔は「カプセルを飲んだら、そのまま溶けずにお尻から出て来た」などという陰口も効かれましたが、さすがに最近はそんなことはないようです。厚労省などジェネリックの使用を推進する側は、「生物学的同等性試験」や「溶出試験」を行っているので、先発品と同等であることが科学的に証明されていると主張しています。しかし実際に使用した医師が「効きが悪い」と感じる場合もあるようです。もっとも医師の「感じ」が正しいとは限りませんが。後発品が先発品と「統計的に優位な差がない」というだけで「同一だ」といっていいのか、という問題もあります。また、試験をしたロットと同じ品質でその後も製造されているか、という疑問もあります。(2)については、多少ばらつきが大きいのは確かなようですが、厚労省などは「問題のない範囲」としています。(3)に関しては、薬というのは作って売ればいいというものではなく、発売してからもその薬に対する効果や副作用などの情報を収集し、医療関係者やその他に情報を提供するというのが、製薬会社の大きな役割となっています。ジェネリック製薬会社はこうした点では遅れをとっているようです。嘘かほんとか知りませんが、医者がジェネリック製薬会社に薬に関する問い合わせをしたところ、「先発メーカーに聞いてくれ」との返事だったという笑い話があります。(4)に関しては、患者さんに継続的に出してくる薬が「品切れ」になってしまっては困ります。また薬局から聞いた話しでは、ジェネリック医薬品のなかには、名前は登録されているけれど、調べてみると実際には販売されていないものもあるようです。
 以上の点から、「ジェネリック医薬品には少し不安がある」と感じる医者が多いのではないかと思います。
 ぽん太の予測では、3年〜5年してジェネリック医薬品が普及した頃になって、いまさら気がついたかのように、「なんとジェネリック医薬品に問題点!」などという新聞記事が紙面をにぎわす、というのに3000点!
 付け加えれば、医者が後発品を使いたがらない理由として、「高い先発品を使って儲けようとしている」と書かれているのをよく目にしますが、薬代が医療機関の収入とならない院外処方のパーセンテージは平成17年には既に50%を超えており(厚労省の統計のグラフはこちら)、また薬代の儲けというのは売値ではなく、仕入れ値と売値の差であることは当然であり、この差益は先発品の方が多いとは限りません。高額の薬品は在庫を抱えたときのロスもかえって多く、「医者が儲けようとして高価な先発品を使っている」というのは完全な間違いです。先発品を使うと儲かるのは、先発品を販売している製薬会社です。

【平成24年までにシェアを30%に】
 で、厚労省はなぜジェネリック医薬品を普及したいのかというと、医療費を少しでも少なくするためです。
 日本のジェネリック医薬品のシェアは、1999年度10.8%でした。欧米ではアメリカで63%、イギリスで59%など、ジェネリックの普及がかなり進んでいます(ジェネリックのシェアのグラフは例えばこちらの資料のなかにあります)。
 そこで厚労省は、少しでも医者がジェネリックを処方するようにと、2002年4月の診療報酬改定から、ジェネリック医薬品を使って処方せんを出すと、医者に1回あたり20円の御褒美をあげることにしました(こちらの平成14年度社会保険診療報酬等の改定概要のまんなかへん、IIIの4の(2))。20円で人間の行動を変えようという厚労省の考え方が素敵です。当然のことながら、ジェネリックのシェアは2005年度で17.1%どまりでした。そこで厚労省は、2006年4月の診療報酬改定で処方せんの様式を変更し、処方せんに先発品の名前が書かれていても、「後発医薬品への変更可」という欄にチェックをすると、薬局と患者さんが相談してジェネリック医薬品に変更できることにしました。しかしこれによってもシェアは2006年度で16.9%とほぼ横ばい、実際に薬局で変更された率も1〜2%と、効果はあがりませんでした。
 「美しい国」で有名な安倍首相のもと2007年6月に発表された「骨太の方針2007」に、「後発医薬品の使用促進」が盛り込まれ、「平成24年度までに、数量シェアを30%(現状から倍増)以上にする」という数値目標が設定されました(「骨太の方針2007」の25ページの本文と脚注)。安倍首相は任期半ばで体調を壊され入院してしまいましたが、もちろん薬はジェネリックを選択したのでしょうね?
 2008年4月、あと4年間でシェアを30%にまで上げなくてはならない厚労省は、業を煮やして処方せんの様式を再び変更。処方せんは基本的にはジェネリック変更可とし、医師が変更を認めない時だけ「後発医薬品への変更がすべて不可」という欄に署名あるいは記名・押印することにし、2002年から続いていた20円のお駄賃を廃止しました。そして薬局の報酬に関しては、ジェネリックを使うと収入が増えるようにしました。医者が利益誘導に応じないなら、薬局から動かそうという方針です。
 これ以外にも、ジェネリック医薬品の使用促進のための対策は、テレビCMなどによる広報、ジェネリック医薬品の信頼性の改善、優良な製薬会社の育成などいろいろあるようですが、長くなるので今回は省略いたします。

【厚労省のなりふり構わぬ施策】
 で、ようやく最初の新聞記事に戻りますが、あと4年間でジェネリック医薬品のシェアを17%から30%に上げなくてはならず、焦った厚労省のなりふり構わぬ施策の一端が、「生活保護がジェネリック医薬品使用を使わなかったら保護を打ち切る」という通知として現れたわけです。生活保護者という弱者を対象に、まだ議論の対象となっているジェネリック医薬品の使用を強制し、選択権を奪うというのは、ぽん太の属するタヌキの世界では「タヌキ権侵害」として許されない行為です。
 医療費を削りまくる厚労省が次に何をしでかすか、目がはなせません。

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コメント

私たちは、ジェネリック医薬品検索・試算サイト「Genecal(ジェネカル)」を運営いたしております。
http://www.genecal.jp/

実際の服用数・日数を選択することで、窓口での差額が一目で分かります。

是非、ご利用下さい。

投稿: Genecal | 2008/06/05 16:28

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