« 【ウズベキスタン旅行(1)】GWにシルクロードの真珠を訪れました | トップページ | 【歌舞伎】「毛谷村」の染五郎の色気がよかったです(2008年5月新橋演舞場・昼の部) »

2008/05/14

【高齢者医療】「みだりに診察を行ってはならない」ーー既に始まっていた高齢者切り捨て

 後期高齢者医療制度(長寿医療制度)に関しては、高齢者が病院を受診しにくくするものではないかという批判がなされており、平成姥捨て山制度などという陰口も叩かれています。
 しかし医療関係者からみると、「ようやく騒ぎ出したか」という感じで、高齢者を医療から遠ざけるという施策は、すでに以前から始まっていたのです。ぽん太はこのあたりの実情にあまり詳しくないので、一部間違いもあるかと思うのでご注意下さい。

 まずは特別養護老人ホームの入居者の場合。特別養護老人ホーム(特養)は、身体的あるいは精神的に著しい障害があって常時介護が必要なひとを入所させる施設です。特養の入居者に対する医療に関しては、たとえば平成18年3月31日付けの通知「特別養護老人ホーム等における療養の給付(医療)の取扱いについて」(保医発第0331002)があります。特養には「配置医師」と呼ばれる医師の配置が義務づけられており、特養の入居者の医療は基本的には配置医師が行います。ただし、一人の配置医師が全ての病気の治療を行えるわけではありませんから、緊急の場合や、配置医師の専門外の病気の場合、配置医師以外の医師が診察することが禁止されているわけではありません。しかし、上の通知には、次のような記述があります。

3 保険医が、配置医師でない場合については、緊急の場合又は患者の傷病が当該配置医師の専門外にわたるものであるため、特に診療を必要とする場合を除き、それぞれの施設に入所している患者に対してみだりに診療を行ってはならない。
 「みだりに診療を行ってはならない」というのはすごい表現です。特養入居者は勝手に診察してはならない、診察する前によくよく考えてみろよ、ということでしょうか?

 次いで介護老人保健施設。介護老人保健施設(老健)とは、病院に入院してた患者さんが自宅に戻るための橋渡しをする施設で、治療を行いながらリハビリテーションに力を注ぎ、家庭に戻すために一時的に入所する施設です。老健には併設保険医療機関と呼ばれる病院あるいは診療所が定められており、老健入所者の医療は原則としてここで行うことになっております。そして併設保険医療機関以外の一般の医療機関による診療行為は、著しく制限されております。そのあたりの基本的な考え方については「介護老人保健施設入所者に係る往診及び通院(対診)について」(平成12年3月31日、老企第59号)に書かれております。

1 基本的考え方
(1) 介護老人保健施設は常勤医師が配置されるので、比較的安定している病状に対する医療については施設で対応できることから、入所者の傷病等からみて必要な場合には往診、通院を認めるが、不必要に往診を求めたり通院をさせることは認められないものであること。
 さすがに「みだりに」とは書かれていませんが、一般の医師が「不必要に」診察をしてはいけないことになっています。そして診察をした場合も算定できる診療報酬が非常に制限されております。上のリンクの「別表」にわかりやすくまとめられておりますが、平成20年厚労省告示第59号に詳しく(わかりにくく)書いてあります(こちらのpdfファイルの一番最後)。
 他の科のことはよくわからないのですが、精神科で初診の患者さんの場合、例えば、初診料270点、通院・在宅精神療法500点、処方せん料68点で、計838点、8,380円の収入となります。ところが老健入所者の場合、「精神科専門療法」がダメなので通院・在宅精神療法は取れず。薬を出すこともできないので処方せん料もなし。初診料の270点、2,700円だけの収入です(併設保険医療機関に対する診療情報提供料(I)250点が加わりますが、その分よけいな労働が加わるので、ここでは考慮しません)。小一時間かけて診察してこれでは割にあわないので、精神科医としては「通院・在宅精神療法の5,000円分を老健が払ってくれるのなら診ますよ」ということになるのですが、老健の方は「そんなら診なくていいです」ということになりますから、結局は併設保険医療機関の精神科が専門でない医師が診ることになります。
 まとめると、介護老人保健施設に入所中の患者の医療は、併設保険医療機関が行う。緊急時、あるいは専門外の場合は、他の医療機関を受診することは可能だが、その場合の診療報酬は低く抑えられているため、実際には他の医療機関はなるべく受診しないよう経済的に誘導される、ということになります。老健は、医療姥捨て山ということができるのかもしれません。

 こうしてみると、平成20年4月にスタートした後期高齢者医療制度における「後期高齢者診療料」は、介護老人保健施設のシステムを、すべての後期高齢者に拡大しようと目論んだものと思われます。後期高齢者診療料に対しては激しい批判の声が上がっていますが、同じような制度が老健ではすでに何年も前から行われていることは、あまり知られていないようにぽん太は思います。

|

« 【ウズベキスタン旅行(1)】GWにシルクロードの真珠を訪れました | トップページ | 【歌舞伎】「毛谷村」の染五郎の色気がよかったです(2008年5月新橋演舞場・昼の部) »

精神医療・福祉」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74997/41204787

この記事へのトラックバック一覧です: 【高齢者医療】「みだりに診察を行ってはならない」ーー既に始まっていた高齢者切り捨て:

« 【ウズベキスタン旅行(1)】GWにシルクロードの真珠を訪れました | トップページ | 【歌舞伎】「毛谷村」の染五郎の色気がよかったです(2008年5月新橋演舞場・昼の部) »