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2008/07/02

【オペラ】こんなマイナーな演目が観れて感激!でもできれば本格オペラがいいな(『ペレアスとメリザンド』2008年6月新国立劇場)

 ぽん太がまだ人間嫌いの陰鬱な若者だった頃、ドビュッシーが大好きでした。その頃ぽん太は、人間を描かず自然ばかりを描いているドビュッシーもおそらく人間嫌いに違いないと信じておりましたが、ホントのところはどうなのか今でも知りません。
 ドビュッシーにのめり込んでいたぽん太ですが、『ペレアスとメリザンド』だけはさすがに苦手でした。DVDもビデオも普及していなかった当時、歌詞も筋もわからぬまま曲だけ聞いても、おもしろくもなんともないのは仕方ないことでした。
 あれからウン十年、綾小路きみまろ(YouTube動画)ではありませんが、ついに『ペレアスとメリザンド』を観ることができました。ううう、感激です。
 とはいえ今回は「コンサート・オペラ」。コンサート・オペラってなんじゃ? 「演奏会形式のオペラ」とどこがちがうんじゃ? 本来「オペラ」というのは、オーケストラピットでオーケストラが演奏し、舞台上にはセットが組まれ、衣装を着て化粧をした歌手が演技をしながら歌うものです。一方、「演奏会形式のオペラ」というのは、舞台の上にオーケストラも歌手もいて、歌手が扮装も演技もせずに歌うもののようです。場合によっては、衣装を着たり、多少の演技をしたりすることもあるそうです。「演奏会形式……」などと気取ってますが、要するにお金をケチっているだけなのでは……。たしかにこの『ペレアスとメリザンド』の公演もたった2日間。外国のオペラ公演のように、あるいは日本の歌舞伎のように、1ヶ月間ぶっ続けでやって連日客が入るのなら、豪華な衣装やセットもそろえることができましょう。でもたった2日のために多額の経費を使うわけにはいかないですもんね。海外でも「演奏会形式のオペラ」はあるの? 日本だけでしょうか? この動画(YouTube)を観ると、外国にも「演奏会形式のオペラ」はあるみたいですね。ただただお金をケチためるだけではなく、アリアや合唱を純粋に音楽的に楽しみたいという要求に応えるものでもあるようです。
 で、今回の「コンサート・オペラ」ですが、パンフレットの解説に寄れば、芸術監督の若杉弘の新企画だそうです。オケはオーケストラ・ピットのなか、舞台上には抽象的で簡素なセットが組まれ、歌手は衣装を着ないで女性はドレス・男性はタキシード(少年役のソプラノ歌手はタキシードでした)、ちょっとした小道具も用い、簡単な演技をしながら歌っていました。
 ううう、やっぱり物足りない。近頃歌舞伎にはまっているぽん太には、セットや衣装や演技がないと感情移入できません。舞台上に美術的なセットがあり、演出家の意図のもとに俳優が演技することでドラマが生じ、その結果、個々の歌の意味合いや感情が決まってくるのではないでしょうか? 「演出」がないと「歌いっぱなし」という気がしてきます。ま、しかし、このようなかたちでの公演だったからこそ、マイナーなオペラを観れたということもあるのですから、難しいところです。
 今回の舞台は、回り舞台の上に立体状の抽象的なセットが組まれ、それが場面場面によってぐるぐるまわるというもの。なんだかペーター・コンヴィチュニーの『皇帝ティトの慈悲』のパクリっぽいです。ここまでやるのなら、もひとつオペラ全体を統一する意思というか、具体的に言えば「演出」があればいいのに。ちゃんと演出家がいて、簡素な舞台装置を使った、「日本式」のお金のかからないオペラはできないでしょうか?
 で、『ペレアスとメリザンド』に戻りますが、象徴主義的・幻想的でありながらも、虚無感・閉塞感に満ちた、興味深いオペラでした。このオペラの初演は1902年ですが、ドビュッシーは1893年にオペラ化の権利を得て、2年後に曲を完成させたそうです。なるほど世紀末的な雰囲気があるわけです。大まかな筋は妻が浮気をするというとても単純なものですが、メリザンドが正体不明の女性で髪が伸びたり、地下の恐ろしい洞窟を覗く場面があったり、ペレアスが「明日は出発する」と何度も繰り返しながら何のためにどこに行くのかわからなかったりと、非現実的・象徴主義的な美しさに満ちています。ドビュッシーの、旋律がはっきりせず、曖昧模糊とした情緒を醸し出す音楽も、とてもあっていました。
 歌手ではゴロー役の星野淳が、最後までメリザンドの浮気を問いただすというしょうもない男の役でありながら、人間の業を醸し出して熱演。メリザンドの浜田理恵は好演ながら、メリザンドの妖しくも神秘的な雰囲気までは出なかったか。ペレアスの近藤政伸は、rの発音が巻き舌でフランス語がなんだかイタリア語っぽかったのと、タキシードを着ると普通のおじさんぽく見えてしまったのが残念。ぜひ衣装を着た本格的なオペラで観たかったです。指揮の若杉弘は、ぽん太がまだ人間嫌いの陰鬱な若者だった頃、読売日本交響楽団を振った「くるみ割り人形」と「白鳥の湖」の組曲のレコードを持っていました。すっかり腰の曲がったおじいさんになっていて、「年とったなな〜」という感じでしたが、年はすべての人類が平等にとるので、自らに流れた時間も感じました。演奏の善し悪しまではぽん太にはちとわかりませんでした。
 ちなみに皆様には常識かもしれませんが、このオペラの元になった戯曲を書いたメーテルリンクは、チルチルとミチルで有名な『青い鳥』の作者でもあります。蛇足ですがぽん太は、小学校の学芸会でチルチルの役をやったことがあります。
 『ペレアスとメリザンド』の動画(YouTube)を観たい方はこちらをどうぞ。
 最後に繰り返しになりますが、長期の公演を行うことが難しい日本では、お金をかけたオペラの公演が困難なのはわかりますから、いい演出家を使って簡素なセットや衣装を用いた、日本式のオペラ公演のスタイルを編み出してほしいです。

コンサート・オペラ『ペレアスとメリザンド』Pelléas et Mélisande
【フランス語上演/字幕付】
新国立劇場・中劇場
【作 曲】クロード・アシル・ドビュッシー
【原 作】モーリス・メーテルリンク
【指 揮】若杉 弘
【芸術監督】若杉 弘
キャスト
【ペレアス】近藤政伸
【メリザンド】浜田理恵
【ゴロー】星野 淳
【アルケル】大塚博章
【イニョルド】國光ともこ
【医師/羊飼い】有川文雄
【ジュヌヴィエーヴ】寺谷千枝子
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

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