【宿・観光】平取町の民宿チセに泊まってアイヌに思いをはせる
ぽん太とにゃん子が7月初めに幌尻岳に登ったとき、お世話になったのが民宿チセです。ネットで適当に予約したのですが、行ってみたら大正解!とってもすばらしい民宿でした。公式サイトはなさそうなので、たとえばこちらの平取町商工会のページにリンクしておきます。
不思議なオブジェがお出迎え。かなり巨大です。実はアイヌの神様なんだそうです。ぽん太はまったく知らなかったのですが、平取町(びらとりちょう)、特にここ二風谷(にぶたに)は、古来からアイヌ民族が生活してきた大切な土地なんだそうです。そして民宿チセのお父さん・お母さんももちろんアイヌ人です。この神様はノヤイモㇱといい、普通はヨモギで作られるものだそうです。また「チセ」とはアイヌ語で「家」という意味だそうです。
こちらがチセさんの建物です。こざっぱりとしていて民宿としては申し分ありません。周囲の花はこまめに手入れがされています。この宿は幌尻岳に登る人がよく利用するのだそうですが、宿のお父さんは、麓に住んでいながら幌尻岳には登ったことがないそうです。というのも、この地域に住むアイヌ人にとって、幌尻岳は神様と考えられてきたのであり、神様を足で踏みつけて登ることは畏れ多くてできないそうです。山菜を採りに幌尻岳の裾野に入るときも、お酒を地面に撒いて「幌尻岳さま、少しだけ山菜を分けて下さい」とお祈りを捧げるのだそうです。その他にもお父さんにさまざまな話しを聞かせてもらいましたが、最近よくいう「自然との共存」ではなく、アイヌの人たちの、さらに一歩引いて自然を畏れ、敬い、感謝する生き方に、ぽん太は感動いたしました。ふつつかもののぽん太とにゃん子ですが、幌尻岳登山の折りは、幌尻山荘でお酒をちょっとだけ地面にまき、「幌尻岳さま、明日は登らせていただきます、よろしくお願いします」と手を合わせました。
洞爺湖サミット妨害容疑で軟禁されて、夜の8時頃にへとへとになって宿に着いたぽん太とにゃん子を迎えてくれたのは、野外でのジンギスカンです。羊の肉の厚さに御注目下さい。とても新鮮で、いわゆる羊独特の臭みがまったくありません。また、お父さん特性のタレがとてもおいしかったです。
チセさんには、幌尻岳に登る前日と、下山して来て日と、二泊お世話になりました。こちらが二泊目の夕食です。朝食ではありません。これに羊の肉と山菜のみそ汁がつきますが、ジンギスカンとはうってかわって質素です。
ところがいただいてみると、とても美味しいです。シシャモは目の前を流れる沙流川(さるがわ)に遡上して来た天然物。シシャモが川を遡上するとは知りませんでした。Wikipediaを見てみると、世界中でも北海道南部の太平洋沿岸でしかとれないんですね。かつては取りきれないほどのシシャモが川に登って来たそうですが、今は海で乱獲されるため、遡上してくるシシャモはわずかになってしまったそうです。それから他のお惣菜も、お父さん・お母さんが春に山に入ってとった行者ニンニクやニリンソウなどの山菜を、手間ひまかけて調理したもので、アイヌの人たちが食べて来たものだそうです。う〜ん、美味しいに決まってます。でも、若い人にはちと物足りないかも。山で良く見かけるニリンソウが食べられるとは初めて知りました。でもニリンソウは、毒のあるトリカブトと葉っぱが似ているため、細心の注意(と愛情)で採って来たものだそうです。
さて、平取町にはアイヌに関連するさまざまな観光スポットがあります。興味がある方は、こちらの平取町のホームページのなかの観光ガイドをご覧下さい。写真は萱野茂二風谷アイヌ資料館です。萱野茂氏は、アイヌで初めての国会議員になった人だそうです。そういえば、テレビで見た記憶があります。「なんだ議員さんの自己宣伝かい」と思ったらそうではなく、萱野氏は生涯をアイヌの研究や民具・民話の収集に捧げた立派な人なのだそうです。
現在収集品の多くは、新しく造られた平取町立二風谷アイヌ文化博物館に納められているようです。民宿チセのお母さんが作ったアイヌ模様を刺繍したヘアバンドもありました。また、口承で伝えられた叙事詩ユーカラのテープが流れておりましたが、これが言葉といい口調といいすごい迫力でした。素朴で力強い言葉はホメロスの『イーリアス』を思わせます。きっと『イーリアス』もこのように詠われたのでしょう。
アイヌ文化博物館の裏手には二風谷ダムがあります。アイヌの聖地を水没させたこのダムの建設には、多くのアイヌが反対し、萱野茂氏もその運動に関わりました。反対を押し切って建設されたこのダムは、建設後十年ちょっとで既に大部分が土砂で埋まり、ダムの役割を果たせなくなっているそうです。
さて、国道沿いにはこんな建物もありました。洞爺湖サミットが行われたザ・ウィンザーホテルをかたどったものと思われますが、なかなかキッチュです。
キッチュといえば、こちらの「山菜直売所」も得点が高いです。ペイントされた浮きが不気味な雰囲気を醸し出します。
こちらは義経神社です。義経が実は北海道から大陸に渡り、ジンギスカンになったという伝説は有名です。しかしぽん太がGWにウズベキスタンを旅行したとき、美しいオアシス都市であったサマルカンドをジンギスカンがめちゃめちゃに破壊したことを知りました。義経がそんなひどいことをするはずはないと思うので、義経がジンギスカンになったというのはあり得ないでしょう。
ところでこの義経神社、創建が寛政11年(1798年)と比較的新しいものです。神社に併設された義経資料館の展示には、次のように書いてありました。
(近藤)重蔵が蝦夷地に入り、寛政十年(一七九八)沙流を通過する時、この地の人たちが刀剣や甲冑を秘蔵し祀っていることを知って「汝等が祀っているものは、源九郎判官義経公のものである。私が次回この地に来る時には必ずその義経公の御神像を持って来て、汝等に授けよう。」と約束をし、再び蝦夷地を訪れ平取の地に奉祀され、以来この地の人たちの尊崇を受けております。 |

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コメント
dollyosakaさん、コメントありがとうございます。
そうですか、民宿チセにお泊まりになったんですか。よかったでしょう?
ぽん太の落書きも、誰かの役に立つことがあるんですね。
dollyosakのブログも拝見いたしました。北海道を時間をかけてくまなく回ったようですね。写真もきれいでした。
また今後ともぽん太のブログにお立ち寄り下さい。
投稿: ぽん太 | 2011/08/19 16:47
平取町の民宿チセに泊まりました。このサイトを見たからです。
心温まるすばらしい民宿でした。
ありがとうございました。
投稿: dollyosaka | 2011/08/04 20:05