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2008/08/14

【展覧会】雪舟の「恵可断臂図」や写楽の実物が見れてよかったな「対決—巨匠たちの日本美術」

 お盆休みでやることがないので、上野の国立博物館まで「対決—巨匠たちの日本美術」の展覧会を見に行く。
 会期が8月17日までで終了間際だし、お盆だから混んでるかな〜?でも、きっとみんなフェルメールの方に流れるから案外空いてるかな〜、などと思いながら行ったのですが、やはり大混雑で入場制限をしており、炎天下に30分並んでようやく入館できました。中も大混雑で、ゆっくり芸術鑑賞という雰囲気ではありませんでした。運慶vs快慶、雪舟vs雪村などと二人ずつ対比させて展示されており、ぽん太のような素人には分かりやすく、興味ももてて、よい企画だと思いました。公式サイトはこちら、東京国立博物館のサイトはこちらです。

 今回うれしかったのは、まず雪舟の国宝「恵可断臂図」(えかだんぴず)です。禅宗の開祖・達磨が少林寺で座禅をしているところに、恵可(慧可)という僧がやってきて弟子にして欲しいと頼みますが断られ、恵可が自分の腕を切り落として差し出すことで決意を表している場面です。重苦しい緊迫感に満ちた77歳雪舟晩年の名作です。ちなみに雪舟自身も禅宗の僧ですね。
 恵可が腕を差し出しながら達磨とした会話が、「無門関」に書かれています。有名な「達磨の安心(あんじん)」という問答です。

達磨面壁(めんぺき)す。二祖雪に立つ。臂(ひじ)を断(き)って云く、「弟子は心未だ安からず。乞う、師安心せしめよ」。磨云く、「心を将(も)ち来れ、汝が為に安んぜん」。祖云く、「心を覓(もと)むるに了(つい)に不可得なり」。磨云く、「汝が為に安心し竟(おわ)んぬ」。
 ぽん太が勝手にタヌキ語訳してみます。
精神科医の達磨先生は机に向かって何やら考えているようでした。患者の恵可さんは椅子にも座るのも忘れて診察室にたたずんでいました。恵可さんはリストカットした手首を見せながら、達磨先生に言いました。「私は心が不安で不安でたまりません。お願いします、先生、私の心を治療して下さい」。達磨先生は言いました「その心とやらをここに持って来て出して下さい。そうしたら治療してあげますよ」。恵可さんは答えました、「心を探し求めてみたんですが、どうしても心を捉えることができません」。すると達磨先生は言いました、「はい、治療終了」。
 ぽん太も達磨先生のようなあざやかな治療を行いたいものですが、なかなかこの域には達しません。
 「心未だ安からず」を不安と訳したのは正確ではなく、恵可は禅宗二代目になるくらいの能力の高い僧ですから、僧として心をどうとらえ、どう扱えばいいのか深いレベルで悩んでいたはずで、単なる不安感ではないでしょう。無門関では、達磨に「心を持って来てみろ」と言われた恵可は、ただちに「心が捉えられない」と答えたように書かれていますが、実際は恵可はここでしばし考えたことでしょう。あるいは実際は、心を探し求めて、何日間も座禅を続けたのかもしれません。しかし恵可は、心をどうしても捉えることができず、途方に暮れてしまい、達磨にそのことを告白します。実は恵可はこのとき既に真理に到達していたのですが、それに気づいていません。あとは達磨先生の一言です、「心は捉えることができない、心は実体がない、それが答えなのだ。お前はもう答えを見つけてるじゃないか」と言うのです。
 ちなみに「心不可得」というのは仏教ではとても大切な考え方で、ぽん太のブログでも以前に『金剛般若経』に関してちょっと触れたことがあります(こちら)。
 あまり指摘されたことがないように思いますが、恵可は自分の腕を切って差し出すことはできましたが、心は差し出すことはできなませんでした。「身体」と「心」が本質的に異なるものであるということが、この話しにはうまく表現されている気がします。
 一休さんのとんち話で、屏風の絵の虎を退治するよう言われた一休さんが、「捕まえますから虎を絵から出して下さい」と言った話しがありますが、「達磨安心」と似ています。もっとも同じような「〜を持って来てみろ」というパターンの問答は、「達磨安心」以外にもいくつかあるようです。

 話しを元に戻して、今回の展覧会でもうひとつよかったのは、大好きな写楽の実物を生まれて初めて見れたことです。やはり図録を見るのと実物を見るのは大違いで、有名な「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」も、顔の大きさに比べて身体が貧弱で、左手のデッサンは狂っているのがよくわかり、とてもアンバランスな印象を受けます。今回の展覧会が歌麿との「対決」という企画だったのでよけいに感じられたのですが、歌麿の絵が細工の細かい工芸品のように繊細で美しいのに対し、写楽はどこかグロテスクです。写楽が10ヶ月で消えてしまったのは、役者の顔をリアルに描きすぎたのが原因だなどと言われていますが、そもそも絵が「キモイ」のがホントの理由だったのではないでしょうか。しかしそのキモさが、また写楽の魅力に思えます。
 
特別展「対決-巨匠たちの日本美術」
会 期 2008年7月8日(火)~8月17日(日)
会 場 東京国立博物館 平成館 (上野公園)
 展示作品一覧

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