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2008/09/23

【歌舞伎】歌六の権四郎が熱演(2008年9月歌舞伎座昼の部)

 今月の歌舞伎座昼の部は、「逆櫓」(さかろ)がもっとも見応えありました。吉右衛門のよさは言うまでもありません。船頭松右衛門役の世話物のつややかさ、樋口次郎兼光となってからの堂々たる風情、どちらも絶品です。しかしぽん太がもっとも感動したのは、歌六の船頭の権四郎。複雑な役を見事に演じきり、こちらが芝居の主人公という感じでした。

 『ひらかな盛衰記』は、1739年(元文4年)に初演された、文耕堂らの合作による浄瑠璃で、同年中に歌舞伎に移植されたそうです。「ひらかな」という題名は『源平盛衰記』をわかりやすくしたという意味合いだそうですが、どうしてどうして、『源平盛衰記』の筋に創作を付け加え、複雑で劇的な構成となっています。
 「逆櫓」は『源平盛衰記』の第41巻に出てきます。屋島の戦いを前に、義経軍は出陣の準備を整えておりましたが、梶原平三景時は船に「逆櫓」をつけることを提案します。逆櫓とは、船の舳先に逆向きに取り付けられた櫓で、これによって船が前進だけでなく後退もできるようにして、戦おうというのです。しかし義経は、「最初から逃げる支度をして戦に勝てるものか。命が惜しければ戦場に出るな。オレはそんなものは使わん」と景時を侮辱し、二人は太刀に手を掛けて一触即発の状態となります。居合わせた武将に留められてこの場は収まりましたが、この事件が、のちに景時が頼朝に対して義経を讒言する伏線となります。
 『ひらかな盛衰記』では、義経と景時の対立は描かれておりません。かわりに義経方と木曽義仲方の対立が中心に据えられています。また『源平盛衰記』では、木曽義仲の四天王のひとりである樋口次郎兼光は、義仲が討たれたあと、最終的には投降します。義経は兼光の助命を院に嘆願しましたがかなわず、院の意向で兼光は死罪となります。『ひらかな盛衰記』では、「死んだと思われていた兼光が、どっこい実は生きていた」という設定で、「碇知盛」と同じパターンです。また『ひらかな盛衰記』で兼光は、畠山重忠が義仲の息子である駒若丸を助けてくれたことを恩に感じて、自ら縄にかかりますが、原作で義経方に投降したことを踏まえているのでしょう。

 また、途中で「武士道」という言葉が出て来たことにぽん太はちょっとひっかかるのですが、それについては機会があったらみちくさいたしましょう。

 「竜馬がゆく 風雲篇」は、昨年9月の「立志篇」の続編。だいたい坂本竜馬を題材にすると、「狭い日本の中で藩同士がいがみ合うのはやめて、世界に目を向け、日本人が力を合わせて世界と渡り合ってゆくんじゃ〜い」という話しになりますが、今回もその通り。さらに「命は大事だよ〜」というメッセージが加わります。「あゝ、またこのパターンか」と思いつつ、ついつい感動してしまったりする自分が嫌になります。亀治郎のおりょうは、いくらなんでもシャキシャキしすぎでは? でも、豪快な武田信玄を演じた顔が、ほっそりと美しく見えました。吉弥のお登勢、松緑の血気にはやる中岡慎太郎、錦之助の堂々たる西郷吉之助もよかったです。
 寺田屋で坂本竜馬たちが「カンカンノウ」を歌っていました。先月の歌舞伎で観た「らくだ」の亀蔵の死体のカンカンノウを思い出しておかしくなりました。

 「日本振袖始」は八岐大蛇(やまたのおろち)の神話を題材にした義太夫舞踊。最近の玉三郎の舞踊は、能に遡ったシンプルな演出が多かったですが、今回は8つの頭を8人の役者で演じて、おろちのさまざまな姿を見せるという、スペクタクルでした。絢爛豪華で、歌舞伎らしくてよかったです。『古事記』などの神話との関係については、そのうちみちくさしたいと思います。


秀山祭九月大歌舞伎
平成20年9月 歌舞伎座
昼の部

一、竜馬がゆく(りょうまがゆく)
  風雲篇
            坂本竜馬  染五郎
            おりょう  亀治郎
          寺田屋お登勢  吉 弥
           中岡慎太郎  松 緑
           西郷吉之助  錦之助

二、ひらかな盛衰記(ひらかなせいすいき)
  逆櫓
  船頭松右衛門実は樋口次郎兼光  吉右衛門
              お筆  芝 雀
           漁師権四郎  歌 六
         船頭明神丸富蔵  歌 昇
          同灘吉九郎作  錦之助
          同日吉丸又六  染五郎
       松右衛門女房およし  東 蔵
            畠山重忠  富十郎

三、日本振袖始(にほんふりそではじめ)
       岩長姫実は八岐大蛇  玉三郎
            素盞鳴尊  染五郎
             稲田姫  福 助

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