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2008/10/31

【オペラ】ウィーン国立歌劇場『フィデリオ』

 横浜までウィーン国立歌劇場の『フィデリオ』を観に行ってきました。指揮者は日本が誇る小澤征爾。昨日に文化勲章の授章が決まったばかりです(こちらが毎日新聞の記事です)。カーテンコールのときに小澤征爾に大きな花束が渡され、小澤も「え?なんで」という感じでしたが、字幕の電光掲示板に書かれた「文化勲章授章おめでとうございます」との字を見て、「あ、な〜んだ」という素振り。会場も拍手喝采でした。
 『フィデリオ』は大昔にテレビで見たきりでほとんど覚えておらず、生で観るのは初めてです。
 セットはいたってシンプルでオーソドックス。その分、音楽に集中することができました。オーケストラは、最初ちょっと足並みが揃わない感じもしましたが、とてもすばらしい演奏でした。
 第2幕第1場が終わると、幕が閉まったままオーケストラの演奏が……。これは『レオノーレ』序曲第3番ではないか。し、知らなかった、こんなところで演奏されるとは……。ところがこれがまたすばらしい演奏で、何度も聞いている曲のはずなのに初めて聞くような音が次々と聞こえてきて、ベートーヴェンの曲も音楽的にすごく濃密で豊かだし、まさに心を奪われました。これが聴けただけでも来た甲斐があると思いました。
 しかし長くて重い曲ですから、劇全体としてはちょっとアンバランス。そのあとの第2幕第2場の万歳万歳という場面がユルく感じられました。帰宅してからググってみると、Wikipediaによれば、ここで『レオノーレ』序曲第3番を入れるのは、1904年にマーラーが初めて試みたことで、当時は賛否両論がわき起こったのだそうです。1930年代にはこの形式が定着し、フルトヴェングラーも賛同したそうです。現在では第3番を入れることも入れないこともあるそうですが、ウィーン国立歌劇場では伝統的に入れることになっているのだそうです。
 歌手は体型的にはやや太めの方が多かったですが、歌はとてもすばらしかったです。

 しかし、台本についていえば、「暴君に抑圧されている民衆が、レオノーレの勇気ある行動によって解放されて万歳!」というのは、なんかよくある設定というか、ちょっと気恥ずかしくてまともに感情移入できないところがあります。先日観たモーツァルトの『コシ・ファン・トゥッテ』について、ベートーヴェンは、「こうしたものには嫌悪感を感じるのです。このような題材を私が選ぶことなどありえません。私には軽薄すぎます」(1825年5月、Ludwig Rellstabへの手紙)と書いたそうですが、『フィデリオ』の物語を本気で観る観客は、まさに貞節を本気で信じている『コシ・ファン・トゥッテ』の冒頭の恋人たちと同じではないでしょうか。モーツァルトとダ・ポンテは、時代を先取りして19世紀的な思想を批判していたのでしょうか? たぬきのぽん太には難しくてわかりません。

L.v.ベートーヴェン
『フィデリオ』
2008年10月、神奈川県民ホール

指揮:小澤征爾
演出:オットー・シェンク
美術:ギュンター・シュナイダー=シームセン
衣装:レオ・ベイ
合唱指揮:トーマス・ラング

フロレスタン:ロバート・ディーン=スミス
レオノーレ:デボラ・ヴォイト
ドン・フェルナンド:アレクサンドル・モイシュク
ドン・ピツァロ:アルベルト・ドーメン
ロッコ:ヴァルター・フィンク
マルツェリーネ:イルディコ・ライモンディ
ヤキーノ:ペーター・イェロシッツ
第1の囚人:ウォルフラム・デルントル
第2の囚人:伊地知宏幸

ウィーン国立歌劇場管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン国立歌劇舞台上オーケストラ
合唱協力 藤原歌劇団合唱部

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