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2008/12/10

【バレエ】優美なザハーロワの「白鳥」・ボリショイ・バレエ2008年日本公演

 オーシポワとワシーリエフの「ドンキ」で客席を興奮のるつぼに追い込んだボリショイ・バレエですが、先日はザハロワとウヴァーロフの「白鳥」を観に行ってきました。超絶技巧、元気はつらつの若手コンビの「ドンキ」とは一転した、大人のムードと色気が期待されます。ちなみにボリショイ・バレエ2008年来日公演の公式サイトはこちらです。
 ザハーロワ、初めて観ました。自然とにじみ出てくる優美さがあり、こればっかりは、いくら超絶技巧があっても、長いキャリアがないと身に付きません。顔もまるで少女マンガに出てくる、目に☆が輝く美女のようです。普通のバレリーナは、オデットかオディールのどちらか一方が似合っている場合が多いですが、ザハーロワは、オデットのしっとりした美しさも、オディールの小悪魔的な色気も、どっちもよかったです。グラン・フェッテはすべてシングルでしたが、バランスも完璧で余裕を持って踊っており、振り上げた足の高さには驚きました。新国立劇場で彼女をもっと観ておけばよかったです。来年の2月の「ライモンダ」のチケットは取りましたが。
 王子のウヴァーロフは、今年の8月にポリーナと「ドンキ」を踊ったのを観ました。ををっ、と目を引くようなジャンプや回転はありませんが、常にノーブルでやわらかくて美しく、すばらしい王子様でした。
 それから、道化の岩田守弘氏。身体が小さいのに、というか、身体が小さいのを生かして、すごいスピードでぐるぐる回って、拍手喝采を受けておりました。昨日のNHKのプロフェッショナルの流儀も感動しました。38歳なんですってね。小さい体で、しかもロシア伝統のボリショイ劇場で認められるまでの努力には頭が下がりました。

 ところで、今回の「白鳥」はグリゴローヴィチ版とのこと。ぽん太は初めて観ました。まず構成が、第一幕(第一場、第二場)、第二幕(第一場、第ニ場)となっております。
 第一幕第一場は、お城の中で貴族たちによって踊られます。道化付きです。お母さんが王子に成人の記念として渡すのは、剣とペンダントですが、意味が分かりません。このあと湖に、白鳥を剣で突き刺しに行くのでしょうか?なんかぞっとしないです。それから、この場だったでしょうか、男性の群舞があったのがとっても珍しかったです。スタイルのいい男性がそろったボリショイだからこそできる踊りかもしれませんが、迫力があってよかったです。また、グリゴローヴィチの振付けは、全体にシンメトリーが強調されています。あるダンサーが下手にいると、対称的に上手に別のダンサーがいるといった具合です。それから、湖に行く前の王子のソロでは、ロットバルトが一緒に、影のように踊るのが目新しいです。ロットバルトは王子にも魔法をかけているのでしょうか?シンメトリーと言えば、全体の構成も、第一幕と第二幕が対比され、さらにどちらも第一場が舞踏会で第二幕が夜の湖と、シンメトリックになっています。
 第一幕第二場はだいたいいつも通り。ぽん太は、オデットが上手奥から出てくる普通のパターンの方が好きです。
 第二幕第一場は、5カ国の王女が舞踏団を引き連れてやってくるという設定。ぽん太は今年の夏にアメリカン・バレエ・シアターで同じような趣向を観ましたが、そちらは4カ国でしたが、ボリショイでは、ロシアの王女様も加わって、5カ国になっております。オディールも黒鳥隊(!)を伴って登場。オディールのヴァリアシオンは、例の蛇使いのような音楽でした。
 第二幕第二場は、普段聞き慣れている音楽が、ツギハギになっているのが少し気になります。白鳥のなかに黒鳥もまざっているのですが、第二幕第一場での黒鳥を見ているので、これらが子供の白なのか、ロットバルトの手先なのか、よくわかりません。白鳥たちと一緒に逃げたりおびえたりしてましたから、子供の白鳥なのかもしれません。そしてラストシーン!オデットは死んでしまい、王子がひとり舞台で崩れ落ちたところで幕がしまります。暗いです。すっかり陰鬱な気分になりました。やっぱ「白鳥」はりハッピーエンドの方がいいです。
 グリゴローヴィチは1927年生まれで現在もご存命中とのこと。ということは、御年81歳か。今回の版は2001年に改訂されたものだそうです。ちとググってみると、「自我における善悪の二面性の戦い」がテーマと言われているようですが、そんなものでしょうか?詳しくは機会があったらみちくさしてみたいと思います。

 美術は、最近はパステル調の柔らかく淡い色彩の衣裳が多いなか、今回の舞台は全体に暗かったです。金・銀・黒を主に、水色や赤が加わってロシアっぽい色彩で、よくわかりませんがぽん太の頭の中には「ロマノフ朝」という言葉が思い浮かびました。舞台中央に下げられた二枚の幕が上がったり下がったりしますが、特に場面転換にもなってないし、あまり効果的でなく思われました。
 クリニチェフさん指揮のオケも、本日は「ドンキ」と違ってゆったりとしたテンポで、要所ようしょを劇的に盛り上げておりました。

 今年のボリショイは、若さと身体能力爆発のオーシポワ、ワシリーエフ組と、大人の美しさのザハーロワ、ウヴァーロフ組という好対照の二組を観れて、大満足でした。


「白鳥の湖」
2008年12月7日/東京文化会館

音楽 : ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
台本・改訂振付・制作 : ユーリー・グリゴローヴィチ
原振付 : マリウス・プティパ,レフ・イワノフ,アレクサンドル・ゴールスキー
美術 : シモン・ヴィルサラーゼ
音楽監督・共同制作 : パーヴェル・ソローキン
照明 : ミハイル・ソコロフ
指揮 : パーヴェル・クリニチェフ
管弦楽 : ボリショイ劇場管弦楽団

オデット/オディール : スヴェトラーナ・ザハーロワ
王妃 (王子の母) : マリーヤ・イスプラトフスカヤ
ジークフリート王子 : アンドレイ・ウヴァーロフ
ロットバルト : ドミートリー・ベロゴロフツェフ
王子の家庭教師 : アレクセイ・ロパレーヴィチ
道化 : 岩田守弘
王子の友人たち : アンナ・ニクーリナ,アナスタシア・ゴリャーチェワ
儀典長 : アレクサンドル・ファジェーチェフ
ハンガリーの王女 : ネッリ・コバヒーゼ
ロシアの王女 : オリガ・ステブレツォーワ
スペインの王女 : アナスタシア・メシコーワ
ナポリの王女 : アナスタシア・ゴリャチェーワ
ポーランドの王女 : エカテリーナ・シプーリナ
3羽の白鳥 : ネッリ・コバヒーゼ,ユーリヤ・グレベンシチコワ
      オリガ・マルチェンコワ
4羽の白鳥 : チナラ・アリザデ,スヴェトラーナ・グネードワ
      スヴェトラーナ・パヴロワ,アナスタシア・スタシケーヴィチ
ワルツ : オリガ・ステブレツォーワ,アナスタシア・シーロワ
      アレーシヤ・ボイコ,アンナ・オークネワ
      カリム・アブドゥーリン,デニス・サーヴィン
      ウラジスラフ・ラントラートフ,エゴール・フロムーシン

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