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2009/01/17

【歌舞伎】正直恐すぎます!海老蔵のいがみの権太(花形歌舞伎昼の部、2009年1月新橋演舞場)

 今年最初の歌舞伎。昨年の12月は歌舞伎を見なかったので、なんだか久しぶりです。今回も海老蔵の座長公演。『義経千本桜』のいがみの権太がお目当てです。
 まずは目出度く三番叟で踊り始め。右近と猿弥の二人三番叟ですが、途中で一方が疲れてさぼったり、怒られると急に勢いよく踊り出したりして、ドリフのヒゲダンスを思わせます。
 ついで海老蔵の「口上」。市川家に伝わる「にらみ」つき。何でもこの「にらみ」を見ると、一年間無病息災が約束されるのだそうです。これで新型インフルエンザが流行っても大丈夫。「にらみ」というのはギロギロっと睨みまわすのかと思ったら、正面をカッと睨んでました。ぽん太の方を向いて睨んで欲しかったです。
 次はお目当ての『義経千本桜』。これまで見た「いがみの権太」は、愛之助や仁左衛門はやんちゃ風、吉右衛門は小悪党という感じでしたが、海老蔵はまるでヤ○ザのようなドスのきいた極悪人で、正直恐かったです。普通「木の実」は、権太が本当は子供思いで憎めない人物あることを示す場面だと思うのですが、海老蔵が演じると正真正銘の大悪党に見えます。二十両も、騙り取った(いいがかりをつけてだまし取る)というよりも、脅し取った感じで、ほとんど強盗です。段治郎の小金吾も、「姿を隠して逃げている手前、騙りとわかっていながらお金を払わなくてはいけないことが口惜しくて泣く」というよりは、脅されて恐くて泣いちゃった小学生みたいでした。
 「すし屋」は、悪人かと思われたいがみの権太が実は善人だったという、「もどり」と呼ばれるどんでん返しが眼目です。普通はこの部分の「ああ、ホントはいい人だったのに、刺されちゃってかわいそ〜」というところがクライマックスとなります。しかしそうすると、権太の善行が実は無駄だったという二度目のどんでん返しが、なんともやるせないというか後味が悪く感じられるのが、以前から気にはなっていました。
 今回の海老蔵のいがみの権太は、根っから悪人っぽいので、「ああ、ホントはいい人だったんだ〜」という説得力がちっともありません。そのかわり驚いたことに、第二のどんでん返しが、「ほらほら、さんざん悪いことしてきて、たまに良いことをしようとするから、そうなるんだよ」と、自然につながるのです。こうなると、まさに舞台上は地獄絵図という感じで、いがみの権太の善行はむくわれないわ、父の弥左衛門は勘違いから子供を殺してしまうわ、母おくらは父に隠して息子に大金を渡すわ、維盛はのうのうと逃げ延びたうえに娘を騙して密通するわ、わやくちゃです。この状況では、維盛が現世を倦んでとうとう出家を決意するのも納得がいきます。はたして海老蔵がそこまで計算して新解釈をしたのか、それとも偶然の為せる技なのか、ぽん太にはわかりません。
 海老蔵は、テノールのような高音こそなくなったものの、演技に力が入りすぎて時々滑稽になるのはあいかわらず。芝居もリアルすぎて、歌舞伎の古典らしさに欠ける気がします。もうちょっとあっさりと様式的にやってほしいです。獅童の梶原景時は立派。笑也の若葉の内侍は、ちと高貴さに欠ける気がしました。笑三郎はあいかわらずしっかりと落ち着いてました。春猿は演技はよかったですが、声が裏声の一本調子でニュアンスに欠ける気がしました。門之助の弥助/維盛は悪くはありませんでしたが、やさ男ぶりにぽん太の期待が大きかっただけに、ちとものたりなかったかな。右之助の母おくら、左團次の弥左衛門、さすがに芝居が引き締まりました。
 最後は『お祭り』で、華やかに〆です。10分間と短かったので、「待ってました」「待っていたとはありがてぇ」のやりとりもなく、手ぬぐいをまいて終わりました。ホントに海老蔵は喋らないとかっこいいですね〜。ちょっと照れて頭をかく仕草など、男のぽん太もホレボレしました。
 正月らしい華やかな演目が楽しめてよかったです。


初春花形歌舞伎(昼の部)
新橋演舞場、平成21年1月

一、猿翁十種の内 二人三番叟(ににんさんばそう)
             三番叟  市川右 近
             三番叟    猿 弥
             附千歳    弘太郎
              千歳    笑 也
               翁    段治郎
二、寿初春 口上(こうじょう)
    市川海老蔵「にらみ」相勤め申し候
                    海老蔵
三、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
    木の実
    小金吾討死
    すし屋
          いがみの権太    海老蔵
          梶原平三景時    獅 童
           若葉の内侍    笑 也
           女房小せん    笑三郎
            娘 お里    春 猿
           主馬小金吾    段治郎
            母おくら    右之助
      弥助実は三位中将維盛    門之助
          鮓屋弥左衛門    左團次
四、お祭り(おまつり)
              鳶頭    海老蔵
              鳶頭    獅 童
              鳶頭  市川右 近
              鳶頭    猿 弥
              鳶頭    段治郎
              芸者    春 猿
              芸者    笑三郎
              芸者    笑 也
              芸者    門之助

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