« 【バレエ】陽気で楽しいロマンディック・バレエ「ナポリ」デンマーク・ロイヤル・バレエ団 | トップページ | 【バレエ】ザハロワの踊りに牧阿佐美の演出・新国立劇場『白鳥』 »

2009/05/21

【歌舞伎】Mr.ビーン写しの海老蔵の『神田ばやし』・2009年5月夜の部

 『神田ばやし』が笑いました。こんなにおかしい芝居は、亀蔵の「らくだ」以来です。5秒に1回笑えます。ちょっと知恵が足りなくておどおどしているが、実は純真で心根の美しい若者、桶屋の留吉を海老蔵が演じているのですが、ひとつひとつの仕草、表情、台詞がすべておかしいです。お酒を一口飲んで歯を見せてニャッと笑い、また一口飲んで今度はウッシッシと笑ったりします。いつもなら目玉ひんむきド迫力の海老蔵が、とろんとした表情でなよなよと演じているのを見ると、荒れ球の豪速球投手が投げた超スローボールのような異様な迫力を感じます。この作品は昭和45年以来の上演で、三津五郎がこんかい偶然見つけて取り上げたのだそうです。覚えている役者さんがほとんどおらず、一から芝居を作っていったそうですが、海老蔵はMr.ビーンの演技を写したとぽん太は確信しております。ホントはほろりとして心温まる人情芝居だと思うのですが、海老蔵がひとり別世界を造り上げ、全編笑いっぱなしの芝居となっておりました。ネコもかわいかったです。障子の隙間から飛び出す時、おもいっきり頭をぶつけていましたが。道具方さんに拍手です。
 『神田ばやし』を含め、今回はすべて初めて観る演目でした。
 「毛剃」は、ストーリーとしてはたわいない馬鹿ばかしい話です。しかし見所が多く、飽きずに観ることができました。序幕の毛剃九右衛門のパンチパーマと南蛮風の衣装にまずびっくり。團十郎の台詞がちっとも聞き取れないと思ったら、長崎なまりを取り入れた台詞とのこと。七世市川團十郎が1834年(天保5年)に工夫したものだそうで、江戸時代にすでにこのような演出だったというのが意外に感じられます。舞台上にしつらえられた大きな舟のセットは立派で、回転すると舳先の團十郎が客席にのしかかるかのようで、「汐見の見得」も迫力がありました。江戸の荒事の團十郎と、関西世話物の藤十郎の対比もよかったです。うらぶれた宗七の髪を小女郎が梳く場面もしっとりしており、事情を知らない小女郎の前で宗七が海賊の仲間入りすることを決意する場面も面白かったです。
 「夕立」は、ストーリーとしては際どい話でした。奥女中が中間に手込めにされてしまい、拒みながらもいい雰囲気になっていくというものです。菊五郎と時蔵が大人の男女の細かい機微を色っぽく表現しておりました。
 「おしどり」は、曽我兄弟のお父さん(工藤祐経に殺された人)として有名な河津三郎祐安を題材にした舞踊。菊之助・海老蔵・松緑の三人が若々しくあでやかにつとめました。前半は『曽我物語』に出てくる河津三郎祐安と股野五郎景久の相撲で、後半が変わってオシドリの精となる趣向がよかったです。一巴太夫の常磐津も聞き惚れました。
 曽我物語はこちらのj-textのサイトで(読みにくいけど)読むことが出来ます。鷹狩りの帰り、武者たちは相撲をとって遊びました。相撲といっても関東の荒武者たちのこと、拳で殴り合ったりし、現代の相撲とはだいぶ違うようです。何人かが相撲をとったあと、俣野五郎景久が登場します。俣野五郎は京都で3年間相撲の大番勤め(なんじゃそれ?)をし、日本一の名を得ていたそうで、連勝に連勝を重ねます。次に河津三郎祐重(ちょっと名前が違いますが)が対戦相手となります。俣野五郎の方が技巧派、河津三郎の方が怪力だったようで、勝負は河津が勝ちましたが、俣野は「木の根につまずいて転んだだけだ」と言い張ります。河津は今度は片手で俣野を投げ飛ばし、「さっきも勝っていたのにあれこれ言われたから、今度は真ん中で片手で勝ってみせたまでよ。文句あっか」と言い放ちます。一同二手に分かれてあわや乱闘となりかけますが、頼朝の言葉でとりあえず収まります。しかし遺恨は残り、工藤祐経は河津五郎を射殺そうと企みます。
 決まり手ですが、一番目は「二度目には差し寄り、左右の腕をつかむで、左手・右手に御座します、雑人の上に掛け、膝をつかせて、入りにけり」、二番目は「暫く有て、むずと引き寄せ、目より高く差し上げ、半時ばかり有りて、横様に片手をはなちて、しとと打つ」となっており、いわゆる「河津掛け」ではないような気がします。河津三郎と河津掛けがどこで結びついたのか、ググってみましたがちとわかりません。


歌舞伎座さよなら公演・五月大歌舞伎
平成21年5月・歌舞伎・夜の部

一、恋湊博多諷(こいみなとはかたのひとふし)
  毛剃
          毛剃九右衛門    團十郎
           傾城小女郎    菊之助
           中国弥平次    権十郎
          小倉伝右衛門    市 蔵
          徳島平左衛門    亀 蔵
           加田市五郎    松 江
         じゃがたら三蔵    男女蔵
           浪花屋仁三    亀 鶴
            座頭盛市    彌十郎
           奥田屋お松    秀太郎
           小松屋宗七    藤十郎

二、小猿七之助 御守殿お滝
  夕立(ゆうだち)
           小猿七之助    菊五郎
           御守殿滝川    時 蔵

三、神田ばやし(かんだばやし)
           家主彦兵衛    三津五郎
            桶屋留吉    海老蔵
            娘おみつ    梅 枝
           女房おかね    右之助
           隠居おらく    市 蔵
            行者陽山    亀 蔵
           若い者正太    亀 寿
           若い者新七    巳之助
            店子重吉    亀三郎
            店子源太    男女蔵
           店子清兵衛    権十郎
            店子加蔵    秀 調
            店子惣助    團 蔵

四、鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと)
  おしどり
     遊女喜瀬川/雌鴛鴦の精    菊之助
      河津三郎/雄鴛鴦の精    海老蔵
            股野五郎    松 緑

|

« 【バレエ】陽気で楽しいロマンディック・バレエ「ナポリ」デンマーク・ロイヤル・バレエ団 | トップページ | 【バレエ】ザハロワの踊りに牧阿佐美の演出・新国立劇場『白鳥』 »

芸能・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74997/45080490

この記事へのトラックバック一覧です: 【歌舞伎】Mr.ビーン写しの海老蔵の『神田ばやし』・2009年5月夜の部:

« 【バレエ】陽気で楽しいロマンディック・バレエ「ナポリ」デンマーク・ロイヤル・バレエ団 | トップページ | 【バレエ】ザハロワの踊りに牧阿佐美の演出・新国立劇場『白鳥』 »