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2009/06/10

【オペラ】ロッシーニの溢れる才能と古典的様式美・新国立劇場『チェネレントラ』

 今月の新国立オペラは『チェネレントラ』。なにそれ?知らね〜な〜。作曲はロッシーニやて。『セビリアの理髪師』や『ウィリアム・テル』の序曲ぐらいしか知らんがな。とりあえず観に行ったろか……という感じであまり期待しないで行ったのですが、とてもすばらしくて感動いたしました。新国立劇場の『チェネレントラ』の公式サイトはこちら
 まず「チェネレントラ」という題名ですが、イタリア語の「シンデレラ」とのこと。それなら知っとるがね。以前の記事でシンデレラは、フランスではサンドリヨン(Cendrillon)、ドイツではアッシェンプッテル(Aschenputtel)、日本ではハイカブリヒメ(灰かぶり姫)であることを書きましたが、イタリア語までは調べなかった。ううう、勉強になりました。
 ただしシンデレラと言っても仙女の魔法やカボチャの馬車は登場せず、ガラスの靴は腕輪となり、人物の入れ替わりが鍵となります。あらすじは上でリンクした公式サイトをどうぞ。
 ロッシーニのオペラ全幕はホントに初体験だったのですが、まず驚いたのは、コロラトゥーラというのでしょうか、全編を通して聴かれる声をコロコロころがす独特の歌い方です。モーツアルトの『魔笛』の夜の女王のコロラトゥーラが有名なので、ソプラノが高音で歌うものだと思い込んでいましたが、今回のオペラでは低い声でも、そして男性歌手もコロコロと歌ってました。
 イタリアのオペラということで、ぽん太は『トゥーランドット』のような浪々と歌うカンツォーネを想像していたので、はじめは軽く軽くころころと歌う歌い方に戸惑ったのですが、聞き慣れてくると古典的・様式的な美しさがわかってきて、とても心地よかったです。
 ロッシーニのオペラはとてもスマートで洗練されており、完成度が高かったです。華麗にして流麗でよどみなく、遊び心もあり、すばらしい才能の持ち主だと思いましたが、俗っぽさがあることは否定できません。翻って考えると、たとえばモーツァルトのオペラには、なんと言っていいのかわからないアンバランスというか、欠落があるように感じるのですが(ラカンなら「裂け目」と言うのでしょうか)、逆にそれがモーツァルトの魅力というか、芸術性のようにも思えます。
 驚いたのは、普通シンデレラというと純情で可愛らしいキャラなので、当然ソプラノがキャピキャピ歌うのかと思ったら、メゾソプラノがドスをきかせながらこってりと歌い、なんか迫力があって、ちょっと怖いです。顔をしかめ、首を振りながら歌う様子は、まるでコブシのきいた演歌のようでした。
 『オペラ鑑賞ブック 1 イタリア・オペラ(上) (スタンダード・オペラ鑑賞ブック)』(音楽之友社、1998年)によれば、18世紀後半のイタリアオペラでは、主役は女性歌手とカストラートが歌うのが普通だったそうです。カストラートとは、去勢された男性歌手です。19世紀に入るとカストラートは衰退し、その代わりを女性低声歌手(コントラルト)が務めるようになったそうです。ロッシーニ(1792年-1868年)の時代にはこのようなコントラルトの名歌手が数多く存在し、ロッシーニも彼女らの声を愛したのだそうです。ちなみに『チェネレントラ』の初演は1817年です。ちなみにこの頃の日本は江戸時代の文化・文政期(1804年-1830年)で、歌舞伎でいえば鶴屋南北の『東海道四谷怪談』などのちょっとおどろおどろしい芝居や、踊り手が次々と衣装を変えて踊る変化舞踊などが人気をはくした時代です。
 アンジェリーナ(シンデレラ)のヴェッセリーナ・カサロヴァは、何度も述べたようにコブシのきいた低音(メゾソプラノ)がすばらしく、王子様のドン・ラミーロを歌ったアントニーノ・シラグーザは、軽く明るい声とコブシが見事でした。日本人勢の幸田浩子と清水華澄は、歌も演技も大健闘。幸田浩子はバレエの素養もあるのかしら?踊ってくるくる回ってました。
 舞台美術もペン画風でしゃれていました。オケも軽快で流麗。いわゆるロッシーニ・クレッシェンドも堪能いたしました。ロッシーニのあふれる才能と、古典的な様式美に出会えた、すばらしい一日でした。
 
『チェネレントラ』
G.ロッシーニ/全2幕【イタリア語上演/字幕付】
G.Rossini:LA CENERENTOLA
2009年6月7日、新国立劇場オペラ劇場

【作 曲】ジョアキーノ・ロッシーニ
【台 本】ジャコモ・フェレッティ

【指 揮】デイヴィッド・サイラス
【演出・美術・衣裳】ジャン=ピエール・ポネル
【再演演出】グリシャ・アサガロフ
【演技指導】グリシャ・アサガロフ/グレゴリー・A.フォートナー
【芸術監督】若杉 弘

【ドン・ラミーロ】アントニーノ・シラグーザ
【ダンディーニ】ロベルト・デ・カンディア
【ドン・マニフィコ】ブルーノ・デ・シモーネ
【アンジェリーナ】ヴェッセリーナ・カサロヴァ
【アリドーロ】ギュンター・グロイスベック
【クロリンダ】幸田 浩子
【ティーズベ】清水 華澄

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団


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