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2009/07/28

【歌舞伎】海老蔵はこころがないのが欠点でもあり長所でもある・2009年7月歌舞伎座夜の部

 夜の部は、まず海老蔵の「夏祭浪花鑑」。最初に牢から出てきたシーンはなんだかまぬけで、5月の「神田ばやし」の桶屋留吉を思い出します。床屋で着替えてからの色男ぶりとの対比を狙ったのでしょうけれど、なんだかリアリティがありません。徳兵衛の獅童も、海老蔵も、関西弁のイントネーションが変で、しかも動きに柔らかさというか踊りがないので、がさつな関東風というか、現代劇のように見えてしまうのが残念でした。
 勘太郎のお辰は、きっちりと型を守っての熱演でしたが、今回の芝居全体の型破りな雰囲気のなかでは、反対にひとりだけ別世界を作っているように見えてしまいました。
 「長町裏」は、市蔵の義平次が憎々しげでよかったです。義平次の仕打ちに対して団七は、我慢をしたり、我を忘れそうになったり、石をお金と偽ってだまそうとしたり、誤って傷つけてしまったことをきっかけに毒を食らわば皿までと殺す決意をしたりと、いろいろな心理的変化があるのですが、そうしたところはあまりはっきりと表現されておりませんでした。細かな心理表現は海老蔵は苦手のようで、そのためドラマとしての段階的な盛り上がりがいまひとつでした。変わって団七が義平次を手にかけるシーンは、決まりきまりが絵画のように美しく、しかもすごい迫力で、まさに地獄絵図を目の当たりにしたような恐ろしさでした。
 猿弥の三婦はちょっと若すぎたか。笑也の磯之丞はちと色気に欠けました。笑三郎のお梶はいつもながら古風で立派。右之助が芝居を締めていました。

 「天守物語」は、3年前に見て以来2度目の観劇。玉三郎の良さは言うまでもなし。海老蔵は、図書之助のような現実離れした美形の役はホントにいいですね。勘太郎の亀姫は、生来の育ちの良さというか実直さが出てしまい、玉三郎とのじゃらじゃらした、ともすれば同性愛っぽい雰囲気が感じられませんでした。獅童の朱の盤坊は、声もひとりだけ大きすぎるし、動きが固くて荒すぎて、全体の金細工のような繊細できらびやかな雰囲気に合っていませんでした。門之助の舌長姥、我當の近江之丞桃六ははまり役。吉弥の薄もきっちりした奥女中で好演。演出では、前回に引き続き、ぽん太の好きなドビュッシーの「夜想曲」の「雲」の和楽器による演奏が、とてもよく合ってます。ただ背景の様々な雲や、駕篭が空を飛ぶ映像は、天守閣の三階に現れた物の怪とともに、具象的・説明的すぎて気分がそがれます。もっと抽象的に表現したほうが、全体の象徴的な雰囲気に合っていたのではないでしょうか?


歌舞伎座さよなら公演
七月大歌舞伎
平成21年7月・歌舞伎座・夜の部

一、夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)

  序幕 住吉鳥居前の場より
  大詰 長町裏の場まで
          団七九郎兵衛  海老蔵
              お辰  勘太郎
            釣舟三婦  猿 弥
           玉島磯之丞  笑 也
              お梶  笑三郎
              琴浦  春 猿
            下剃三吉  巳之助
          三河屋義平次  市 蔵
             おつぎ  右之助
           一寸徳兵衛  獅 童

二、天守物語(てんしゅものがたり)

          天守夫人富姫  玉三郎
          姫川図書之助  海老蔵
              亀姫  勘太郎
               薄  吉 弥
           小田原修理  猿 弥
             舌長姥  門之助
            朱の盤坊  獅 童
          近江之丞桃六  我 當

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