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2009/07/16

【オペラ】斬新だけどちと感情移入しにくいチェルニャコフの演出・ボリショイ・オペラ「エフゲニー・オネーギン」

 だいぶ前になりますが、6月下旬にボリショイ・オペラの「エフゲニー・オネーギン」を観てきました。こちらが公式サイトです。この演目は、以前にオペラの森の小澤征爾指揮で見たことがあるので、今回が2度目です。さすがにロシアの首都モスクワにあるボリショイ・オペラ、先日の「スペードの女王」に続いてオシャレで斬新な演出でした。舞台中央に大きな楕円形のテーブルがあり、場面によって設定や装飾は変わるものの、すべての出来事がこのテーブルの周囲で起きるという趣向です。
 第一幕ではオーケストラの演奏が始まる前に幕が開くのですが、人々がラーリナ邸でテーブルを囲んで会食をしているという設定です。農夫たちも登場せず、酔った客が農夫たちのアリアを歌います。ぽん太はチェーホフの喜劇を思い浮かべました。上着を脱いで飲み食いしていた男性たちが、レンスキーとオネーギンという「お客」が到着したのを知り、あわてて上着を着る「風俗」は、初めて見ました。
 タチアーナは会食のテーブルに加わらず、所在なげに歩き回ったり、一人離れてポツンと座っていたりします。これが第三幕の、美しい公爵夫人となって夜会のテーブルで堂々と振る舞うタチアーナと対比されるわけです。
 今回の演出では全体に象徴的に表現されており、リアリティはあまり感じられませんでした。すすり泣くようなコテコテのロシア演歌の世界を期待していたぽん太には、ちょっと当てが外れました。また細かいいくつかの点で、演出に納得できない点がありました。例えば、人々の輪に入れず無表情なタチアーナと、ラブレターのシーンのタチアーナ、公爵夫人となったタチアーナが、あまりに違いすぎて同一人物とは思えません。第二幕でオネーギンとレンスキーの口論が決闘に発展して行くのを、舞踏会のお客さんたちが笑いながら観ているのも奇妙です。決闘の場面もライフル銃一丁で行われたのですが、あれでどうやって決闘するのでしょうか?また、決闘によってオネーギンがレンスキーを殺すのではなく、二人がもみ合ううちにライフルが暴発してレンスキーが死ぬのですが、これではオネーギンの「友人を殺した」という陰が弱まってしまいます。もうひとつわからないのは、通常はフランス人トリケが歌うタチアーナを讃える歌を、レンスキーが歌ったこと。レンスキーは、オネーギンとばかり踊っているオリガをとがめたあと、この滑稽なアリアを歌い、その後再びオネーギンと口論となって決闘を申し込むことになり、流れが不自然です。
 ということで、なんか感情移入しにくかったのですが、歌手やひとつひとつのアリアはとてもすばらしく、音楽も叙情的でよかったです。第一幕と第二幕を連続して120分という長丁場でしたが、ちっとも退屈しませんでした。


ボリショイ・オペラ
チャイコフスキー 「エフゲニー・オネーギン」 叙情的情景 全7場
2009年6月24日、東京文化会館  

音楽 : ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
台本 : ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
     コンスタンチン・シロフスキー
     アレクサンドル・プーシキンの同名の長編詩に基づく
音楽監督 : アレクサンドル・ヴェデルニコフ
演出 : ドミトリー・チェルニャコフ(2006~2007年シーズン新演出)
舞台装置 : ドミトリー・チェルニャコフ
衣装 : マリア・ダニロワ
照明 : グレブ・フィルスティンスキー
合唱指揮 : ワレリー・ボリソフ
指揮 : アレクサンドル・ヴェデルニコフ

[出 演]
ラーリナ(地方の女地主) : マクヴァラ・カスラシヴィリ
タチアーナ(ラーリナの姉娘) : タチアーナ・モノガローワ
オリガ(タチアーナの妹) : マルガリータ・マムシーロワ
フィリーピエヴナ(タチアーナの乳母) : エンマ・サルキシャン
エフゲニー・オネーギン(レンスキーの友人) : ウラジスラフ・スリムスキー
レンスキー(オリガの婚約者) : アンドレイ・ドゥナーエフ
グレーミン公爵(熟年の貴族/後のタチアーナの夫) : ミハイル・カザコフ
ザレツキー : ワレリー・ギルマノフ
ボリショイ劇場管弦楽団・合唱団

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