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2009/08/14

【歌舞伎】良くも悪くも劇画調・海老蔵の「石川五右衛門」2009年8月新橋演舞場

 原作の樹林伸は、漫画の原作者として有名な方だそうで、海老蔵の「これまでにない石川五右衛門を演じてみたい」という希望でコラボが成立したそうです。
 以下、ネタバレがありますので、これから観劇予定の方はご注意を!
 無知なるぽん太はオーソドックスな石川五右衛門を知らないのですが、今回のアイディアの眼目は、五右衛門が茶々と恋に落ちること、そして五右衛門と豊臣秀吉が実は親子だったという点でしょうか。
 五右衛門と秀吉が南禅寺で対面します。五右衛門は、秀吉の度肝を抜いてやろうと、茶々が身ごもっているのが実は自分の子であることを明かします。しかし秀吉はそんなことは先刻承知。逆に秀吉は、五右衛門の度肝を抜いてやろうと言います。そして語ったのが、実は五右衛門が秀吉の子であり、従って茶々が身ごもったのは秀吉の孫だという話。これには五右衛門ばかりか観客も度肝を抜かれ、「そうきたか〜」とばかりしばし笑いが起きました。漫画の原作者だけに荒唐無稽と言うこともできるかもしれませんが、そもそも歌舞伎は荒唐無稽なもので、これまで知られている物語に、度肝を抜くようなアイディアを付け加えて成り立って来たものですから、じつはこれが歌舞伎の正しい姿なのかもしれません。まあ、映画の「スター・ウォーズ」のルークとダース・ベイダーが実は親子だったという話とかぶってはいますが……。
 しかし、秀吉と五右衛門が親子だったというせっかくのアイディアが、十分に展開されていないところに、不満が残りました。五右衛門は秀吉を国を盗んだ泥棒といって憎んでいました。親子だとわかったことで彼は矛盾に陥り、結局、自分が悪に徹することで父秀吉を善となそうと決意するのですが、心理展開が不自然なうえ描写も不十分で、わかりにくいしあんまり納得できません。秀吉の評価が変わったとしても、やっていることは同じだと思うのですが……。滝で鯱と戦う場面も、ぽん太がぼーっとしてたためか、前後関係がよくわかりませんでした。いよいよ五右衛門の釜炒りとなって、五右衛門を義族と讃えていた町人が、秀吉こそ立派な天下人と思い直すあたりも、花道の世間話で表現するのでは軽すぎて説得力がありません。最後のつづら抜けの名場面の意味を読み替えるあたりも、おもしろいアイディアでした。
 海老蔵が八面六臂の大活躍。七之助の茶々も美しかったです。團十郎の秀吉が、大きさとユーモラスさで舞台を引き締めていました。
 ただ、「仮名手本忠臣蔵」風に片しゃぎりに乗せてゆっくりと幕が開いての人形振りからのスタート、そして踊りあり、衣装の引き抜きあり、立ち回りあり、舞台の競り上がりあり、幕前での義太夫あり、早変わりあり、宙乗りあり……で、中華料理から西洋料理から和食からなんでもありのフルコースのようで、たまに歌舞伎を見にきた人にはいいかもしれませんが、毎月観ているぽん太にはちょっと盛りだくさんすぎて、食傷気味でした。
 よくもわるくも劇画調。観客の度肝を抜くアイディアがおもしろく、スペクタクル、エンターテイメントとしては上出来ですが、心理的な掘り下げや思想性には欠けていました。


新橋演舞場八月歌舞伎公演
石川五右衛門
2009年8月、新橋演舞場

          石川五右衛門  市川 海老蔵
              茶々  中村 七之助
            前田利家  片岡 市 蔵
           百地三太夫  市川 猿 弥
            霧隠才蔵  市川 右 近
            豊臣秀吉  市川 團十郎

       樹林伸  作
  川崎哲男・杉岡亮  脚本
      奈河彰輔  監修
     藤間勘十郎  振付・演出

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