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2009/09/05

【演劇】診察室では会いたくない!大竹しのぶが多重人格を熱演・野田秀樹「ザ・ダイバー」(ネタバレ注意)

 すばらしい舞台でした。
 まずは何と言っても大竹しのぶに拍手喝采。すばらしい役者だとは聞いていましたが、ぽん太は生で観るのは2回め。2007年に井上ひさしの「ロマンス」でチェーホフの妻オリガを演じたのを観ましたが、(芝居そのものが)あまり感心しませんでした。しかし今回は、さまざまな人格の演じ分け、それぞれの人格の表現のうまさ、感情表現の迫力など、すばらしい演技でした。
 脚本は、能の『海女』と『源氏物語』を世界とし、殺人を犯した多重人格の女性の深層心理を精神科医が解明していくなかで、事件の真相が明らかになってくるという推理ドラマです。例によって言葉遊びによって劇全体に統一性を与えるという野田秀樹独特の手法は健在。題名の「ザ・ダイバー」は海女であるとともに、深層心理に分け入っていく精神科医でもあります。海は羊水につながり、海のなかを泳ぐ姿が能の動作に重ね合わされます。全体にシンプルなセットと小道具が使われ、能の扇子がさまざまに見立てられますが、「ピザ」には思わず笑いました。
 テーマは要するに「不倫した女が騙されて捨てられる話」で、「よくある話し」ともいえますが、野田の舞台からは「人類の普遍的なテーマ」という印象を受けました。どちらになるのかは、このテーマを芸術としてどのように表現するかにかっているわけです。出会いのときめき、愛、裏切られる不安、我が子への思い、憎しみ、嫉妬などが、野田独特の様式感と郷愁のなかで、ぽん太の胸に伝わってきました。
 冒頭で精神科医の野田秀樹は顔の前に本を広げて読んでいるのですが、本の表紙に能面の写真があって、それを面に見立てて能のような動きを始めます。ぽん太は「なるほど、おもしろいアイディアね」などと見てました。劇の終盤でかなりの部分が明らかになった段階で、再び野田秀樹が同じような一連の動作をします。その時、同じ能面の写真に、こんどは捨てられた女性の悲壮なもろもろの感情が凝縮されているのが見えたのには、ぽん太は愕然といたしました。
 この女性の行き場のない情念を表現するには、多重人格となるか、あるいは能面のように無表情になるしかないのでしょう……あるいは裁判の証言台に立った精神科医のように口ごもるか……。
 源氏の時代と現代、『源氏物語』のさまざまシーンと人格を、スピーディーに行き来する技もいつもどうりで、目眩に似た感覚に襲われました。ただ、最初の出会いから最後に捨てられるまで、基本的に時系列に沿って舞台が進行していきましたが、時間軸もシャッフルされていたほうが、さらに頭がクルクルしたような気がします。でもそうしたら筋が理解不能になっちゃうか……。
 無教養のぽん太は、『海女』も『源氏物語』もよく知らなかったので、どこが原作から借りてきた部分で、どこが野田秀樹が創作した部分なのか十分にわからなかったのが残念です。そういえば六条御息所には、先日 岩佐又兵衛の絵で会ったばかりです。これも何かの縁、『源氏物語』を読んでみようかしら。
 精神科医のぽん太としては、精神科医が情けなく描かれていたのがよかったです。冒頭で大きな紙袋やたくさんの本を不器用に抱えて落としそうになりながら登場します。彼女の世界に入り込むにつれて深い共感を覚えますが、その微妙な心理を裁判官に伝えることはできず、「正義」の前では彼女と共に圧殺されてしまいます。
 北村有起哉は、高貴な光源氏とどうしようもない浮気男を重くならずに演じてよかったです。渡辺いっけいは、野田も台詞(?)で言ってましたが、暑苦しくてよかったです。演奏(?)は歌舞伎の鼓でおなじみの人間国宝田中傳左衛門。こんな活動もしていたのか……。
 野田秀樹は「キル」、「パイパー」と見てきてそれなりにおもしろかったですが、今回あらためて見直しました。またこういう路線も見たいです。
 ちなみにこちらが 公式サイトです。

 偶然クマさん夫婦も見に来てたので、久々に新宿で飲んで帰りました。


野田秀樹「ザ・ダイバー」日本語バージョン
2009年8月/東京芸術劇場小ホール1
作・演出
野田秀樹
出 演
大竹しのぶ、渡辺いっけい、北村有起哉、野田秀樹
スタッフ
美術/堀尾幸男 照明/小川幾雄 作調/田中傳左衛門 音響/高都幸男

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