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2009年12月の10件の記事

2009/12/24

【歌舞伎】三津五郎の玉の井に感心、宮藤官九郎の『大江戸りびんぐでっど』はいまいち(2009年12月歌舞伎座昼の部)

 『身替座禅』は、これまで見たものとは全く別の芝居に見えました。玉の井は、概して男っぽく演じて笑いを取るというふうになりがちですが、三津五郎はそのあたりを抑えて、夫である右京を好きで好きでたまらないけれど、夫からすると迷惑で頭が上がらないという様子を、品良く芸でみせてくれました。『身替座禅』が立派な歌舞伎狂言であることが初めてわかりました。勘三郎の右京もよかったです。

 その三津五郎が『大江戸りびんぐでっど』でもはじけ飛び、「きざったらしい浪人→ぞんび」という役柄を熱演。三津五郎って古典的な芸風の真面目なひとかと思ってたら、夜の部の『野田版 鼠小僧』の大岡越前といい、実は変な人だったんですかね〜。
 『大江戸りびんぐでっど』は宮藤官九郎の新作とのこと。ぽん太は官九郎の芝居は初めてだったので期待していたのですが、部分部分でおもしろいところはあったものの、全体の構成力では夜の部の野田秀樹に一歩二歩及ばないようです。歌舞伎座の舞台をゾンビが埋め尽くすというアイディアは悪くなく、「くさや」と絡ませたりするあたりもいいですが、ゾンビを使って「はけん屋」をやるというのはいかにも「時事ネタを入れてみました」という感じです。半助が実は最初のゾンビだったというのも、映画『シックス・センス』でも使われた「ありふれたパターン」です。そもそも歌舞伎というのは以前の作品をパクりまくる「ないまぜ」の世界ですから、「ありふれたパターン」も悪くないですが、それなら「ありふれたパターン」が芝居のなかでこれまでの作品とは違ったうまい使われ方をされてなくてはならないわけで、そういう意味ではちと物足りなかったです。ラストシーンも、結局は「はけん」が人間の踏み台になっていて、身につまされて寒々しい気分になりました。そうした現実は十分わかっているから、宮藤らしい「演劇的な」ラストを提示してほしかったです。
 いっそのこと馬鹿ばかしさに徹して、例えば、「暫」の鎌倉権五郎景政や弁慶や弁天小僧など、歌舞伎のヒーローが次々と出て来て、みなゾンビにされてしまうなどどうでしょうか?

 『野崎村』は初めて観ました。有名な演目で、話しとしてはとてもよくできているけど、『引窓』のような演出がなく、ほとんど語りで話しが進んで行くので、ちと眠くなってしまいました。部分的には、孝太郎のお染が投げ捨てられた芥子人形を一生懸命片付けている仕草がかわいらしかったです。福助はちとやりすぎでは?ラストシーンは、前半で目立った演出がない分、両花道でドラマチックに終わるのでしょうけれど、今回は両花道ではなかったのがちと残念でした。
 ところでこの狂言の題名は『新版歌祭文』ですが、「歌祭文」(うたざいもん)ってなに?kotobankによれば、 祭文(さいもん)とは、もともとは宗教的な儀式で神仏に対して読み上げる言葉だそうで、山伏が節を付けて唱え歩いたりしたのだそうです。後になってこれが芸能化され、芸人が三味線などを伴奏に、死刑や情死などの事件や風俗を歌うようになり、これが 歌祭文と呼ばれるものだそうです。
 それから、「お夏清十郎」とはどういう話しなのでしょうか?ググってみると、江戸時代に大元となる事件があったそうですが、井原西鶴が『好色五人女』で取り上げ(う、う、う、先日読んだのに記憶がない)、近松門左衛門が浄瑠璃にし、坪内逍遥、真山青果などが脚本を書き、映画化もされているようで、いったい元々がどういう話しだったのかよくわかりません。大ざっぱに言うと、豪商の娘お夏と、使用人の清十郎が駆け落ちするもののとらえられ、清十郎は大金を奪ったという濡れ衣まで着せられて死刑になり、それを知ったお夏は狂乱する、というようなあらすじのようです。

 『操り三番叟』は勘太郎の技が見事でしたが、獅童の翁はさすがに若すぎ。


歌舞伎座さよなら公演
十二月大歌舞伎
平成21年12月・歌舞伎座昼の部

一、操り三番叟(あやつりさんばそう)
             三番叟  勘太郎
              後見  松 也
              千歳  鶴 松
               翁  獅 童

二、新版歌祭文
  野崎村(のざきむら)
              お光  福 助
              お染  孝太郎
            後家お常  秀 調
              久作  彌十郎
              久松  橋之助

三、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん )
            山蔭右京  勘三郎
            太郎冠者  染五郎
            侍女千枝  巳之助
            侍女小枝  新 悟
           奥方玉の井  三津五郎

四、大江戸りびんぐでっど(おおえどりびんぐでっど)
              半助  染五郎
              お葉  七之助
            大工の辰  勘太郎
           根岸肥前守  彌十郎
            遣手お菊  萬次郎
             丁兵衛  市 蔵
             与兵衛  亀 蔵
             佐平次  井之上隆志
           紙屑屋久六  猿 弥
          和尚実は死神  獅 童
          石坂段右衛門  橋之助
            女郎お染  扇 雀
           女郎喜瀬川  福 助
             四十郎  三津五郎
              新吉  勘三郎

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2009/12/20

【歌舞伎】『野田版 鼠小僧』がおもしろく、「引窓」の脚本に感服・2009年12月歌舞伎座夜の部

 今年もいよいよ終わりですねえ。
 夜の部で一番面白かったのは、ぽん太お気に入りの野田秀樹作・演出の『野田版 鼠小僧』です。なんでも平成15年8月に初演された芝居の再演だそうな。冒頭の過剰な言葉とハイテンションから、リリックな幕切れまで、野田ワールド全開です。
 いきなり鼠小僧の劇中劇から始まります。筋書きを見ると、鼠小僧の染五郎の役名は稲葉幸蔵となっておりますから、河竹黙阿弥の『鼠小紋東君新形』(ねずみこもんはるのしんがた)と思われます。ということは『野田版 鼠小僧』は『鼠小紋東君新形』を踏まえていると思われますが、ぽん太は『鼠小紋』を見たことありませんし、脚本を読むのもめんどうなので、みちくさはやめておきましょう。七之助が自害する振りをして橋之助の気を引こうとするあたりは、歌舞伎でよくあるシーンのパロディですね。
 鼠小僧といえば、盗賊でありながら、悪徳商人や私腹を肥やした武士からお金を奪って貧しい人に分け与えるという義賊。ですから自然と芝居のテーマは、権力・富・階級といったものの嘘を暴くということになります。金にがめつい棺桶屋三太は、ふとしたきっかけで鼠小僧となります。世間からは善人と見なされている與吉は実は腹黒い人物。名奉行の誉れ高い大岡越前守は、貞女の鑑と評されるお高を囲っています。そしてころころと意見を変える町人たち……。
 民衆にお金をばらまく鼠小僧は、「三太」という名前つながりで、サンタクロースに結びつきます。12月は、この芝居の上演にうってつけの季節です。金にしか関心がなかった三太が心を入れ替えるというところは、『クリスマス・キャロル』を思い出します。エンディングは、てっきり鼠小僧三太が撒いた小判をさん太が受け取るのかと思ったら、三太は死んでしまい、朝日に輝く雪がさん太の頭上に降り注ぐというものでした。やはり野田はひねって来ますね。とはいえ、前衛的な演劇を創る力を持ちながら、力を余して歌舞伎向きの娯楽作品にまとめているあたりも見事です。
 『らくだ』でぽん太のツボにはまった亀蔵の死体役、今回もすばらしかったです。おおいに笑わせてもらいました。勘三郎はいつもながらうまい。彌十郎、福助もいつもながらの熱演。三津五郎は、古典味のある本格派の役者かと思っていたら、以外とこういうのも好きなんでしょうか?はじけていた孝太郎にも、福助みたいな変な癖がつかないかと心配になりました。

 「引窓」。右之助の母お幸がすばらしく、この芝居の主人公はお幸だということがよくわかりました。しかしこの芝居、よくできてますね〜。人気の相撲取りでありながら人を手にかけて追われる身の濡髪長五郎、町人でありながら郷代官に取り立てられんとする南与兵衛、遊女から与兵衛の妻となったお早など、登場人物はみな世の中に定まった位置を持たず、境界線上をさまよう、よるべない人々です。それが昼と夜のうつろいに重ね合わされ、引き窓という小道具によって具体化されます。
 この狂言の舞台は、放生会(ほうじょうえ)の前日に設定されています。放生会とは、例えば Wikipediaによれば、「捕獲した魚や鳥獣を野に放し、殺生を戒める宗教儀式」とのこと。現在では、福岡の筥崎宮の 放生会大祭(ほうじょうや)や、京都の石清水八幡宮の 石清水祭が有名なようです。エンディングの「捕まえた濡髪長五郎を逃がす」という行為は、放生会に重ね合わされているわけですね。
 また放生会は古くは旧暦8月15日に行われたそうで、旧暦と言えば月の満ち欠けを基準にした太陰暦ですから、1日が新月で15日頃が満月となります。つまり昔の観客は、「放生会の前日」と聞いただけで、月がこうこうと照る満月の夜であることがわかったわけで、それで引窓の開け閉めが効果的になるわけですね。
 この芝居は、母お幸が息子長五郎を守ろうとするという「情」で始まり、次に南与兵衛の手柄のために息子を引き渡すという「義」に移ります。そして最後は放生会の「信仰」の世界となり、それぞれの登場人物の罪と慈悲のなか、長五郎は大阪へ落ち延びて行きます。
 「顔かたちを変えて逃げる」と聞くと、時節がら市橋容疑者のことを思い浮かべます。お幸は長五郎を逃がすため、人目につく大前髪を剃り落とそうとします。しかし長五郎は、「変装した姿でつかまって、命が惜しかったと思われるのも残念だ」と拒否しようとします。お幸はなんとか説得して大前髪を剃り、次はホクロを剃り落そうとします。今度はお幸が「思えば、自業自得とはいえ、親から授かったホクロを剃り落すはめになったのか」と嘆きます。そもそも濡髪長五郎が人を殺めたのは、恩義のあるひとを悪人から救うためでした。市橋容疑者は、自らの欲望を満たすために人を殺めておいて、いったい何のために整形までして逃げ延びようと思ったのでしょうか?

 「雪傾城」。芝翫がお孫さんたちに囲まれて幸せそうでした。児太郎くん、だいぶお大きくなりましたが、色気はまだまだ。


歌舞伎座さよなら公演
十二月大歌舞伎
平成21年12月・歌舞伎座夜の部

一、双蝶々曲輪日記
  引窓(ひきまど)
    南与兵衛後に南方十次兵衛  三津五郎
           濡髪長五郎  橋之助
            平岡丹平  秀 調
            三原伝造  巳之助
             母お幸  右之助
              お早  扇 雀

二、御名残押絵交張(おなごりおしえのはりまぜ)
  雪傾城(ゆきけいせい)
              傾城  芝 翫
           役者栄之丞  勘太郎
         芝居茶屋娘お久  七之助
            新造香梅  児太郎
           雪の精 奴  国 生
           雪の精景清  宗 生
           雪の精 禿  宜 生

三、野田版 鼠小僧(のだばんねずみこぞう)
           棺桶屋三太  勘三郎
              お高  福 助
              與吉  橋之助
           大岡妻りよ  孝太郎
            稲葉幸蔵  染五郎
          目明しの清吉  勘太郎
             おしな  七之助
             さん太  宜 生
            與惣兵衛  井之上隆志
              凧蔵  猿 弥
          辺見勢左衛門  亀 蔵
             独楽太  市 蔵
           番頭藤太郎  彌十郎
             おらん  扇 雀
            大岡忠相  三津五郎

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2009/12/15

【レニングラード国立歌劇場オペラ】オーソドックスで若々しい『エフゲニー・オネーギン』

 マリインスキー・バレエの「オールスター・ガラ」を我慢して、先に切符を取ってあったレニングラード・オペラの『エフゲニー・オネーギン』を観に行って来ました。ぽん太は『オネーギン』は三回目。最初は昨年春の小澤征爾音楽塾、二回目は昨年6月のボリショイ・オペラです。
 これらに比べると、今回の演出はとてもオーソドックスで、ひねった「読み替え」みたいなのはまったくありませんでした。舞台美術も半透明のカーテンを様々に使って、柔らかくて美しかったです。第三幕のポロネーズも、レニングラード・バレエ団員による踊りを堪能することができます。聴きどころのアリアなどでは、群衆がなにげに舞台上から掃けたりするのが面白いです。歌舞伎で、ある役者の見せ所になると、他の役者が客に背中を向けたりして存在を消すのを思い出しました。
 しかし、ちょっと物足りない気がしたのも事実。例えば決闘の場面。小澤音楽塾では、レンスキーが「こんなばかげたことは止めよう」というそぶりをした瞬間に打たれました。またボリショイでは、レンスキーが突きつける猟銃をオネーギンが払いのけようとしているうちに暴発して、レンスキーが死ぬのです。さて、レニングラードではどうだろうと期待して見ていたのですが、まったく小芝居はなく、普通に決闘をしていました。う〜ん、まさしくど真ん中直球勝負。
 タチヤーナのネチャーエワは楚々とした美女で、内気で素朴なタチアーナ役にぴったりでしたが、公爵夫人となった第三幕の風格はまだまだか。ラブロフは体が細いのに声量のあるバリトンで、神経質で虚無的なオネーギンをうまく表現していましたが、やはり第三幕の熱情の高まりの表現はもうひとつ。レンスキーのカルポフは明るく浪々としたテノール、グレーミン公爵のマンチャークも堂々としておりました。しかし全体として、「ををっ」と驚くような突出した歌手はいなかったような気がします。
 全体として、オーソドックスな演出でレニングラード・バレエ団のポロネーズもついて、悪くなかったと思うのですが、なんか拍手が少なく、幕のあいだから歌手を一人ひとり呼び出す前に拍手が終わってしまったのが、ちょっと申し訳なかったです。会場スタッフが幕を引っ張ろうとしていたみたいだったのに。
 今回のレニングラード国立歌劇場オペラの公演の公式サイト(光藍社)はこちらです。配役表もアップされず、歌手のプロフィールもありません。プログラムを買えばいいのかもしれませんが、もう少しネットで情報を流してくれてもいいような気がします。
 レニングラード国立歌劇場の本名はミハイロフスキー劇場(Михайловский театр)で、公式サイトはこちらです。光藍社はなぜか「レニングラード」の名前にこだわっていますが、「レニングラード」という都市名がそもそも「サンクトペテルブルク」に変わってしまっているんですから、そろそろ「ミハイロフスキー劇場」に変えてもいいのでは?こちらのページに歌手の一覧表があり、リンクから写真を見ることはできますが、なぜかぽん太のパソコンではプロフィールが見えません。ロシア語のサイトのプロフィールは見えるので、google翻訳にかけてみると、こちらがネチャーエワのプロフィール。33歳のようです。そしてこちらがラブロフ。24歳で、今年ミハイロフスキー劇場に入ったばかりの新鋭のようです。カルポフはキャリアがありそうですが、全体としては、期待の若手の公演と言いうかんじでしょうか?
 座席表を見ると、けっこうこじんまりとした劇場のようです。レニングラード・オペラやレニングラード・バレエは、このような小さいホールでいつもはやっているんですね。


レニングラード国立歌劇場オペラ
「エフゲニー・オネーギン」
2009年12月10日 Bunkamuraオーチャドホール

作曲:ピョートル・チャイコフスキー
原作:アレクサンドル・プーシキン

指揮:ピョートル・フェラネツ
演出:スタニスラフ・ガウダシンスキー
美術:セミョーン・パストゥーフ
衣裳:ガリーナ・ソロヴィヨワ
振付:ニキータ・ドルグーシン

タチヤーナ:アンナ・ネチャーエワ
エフゲニー・オネーギン:アレクセイ・ラブロフ
オリガ:マリーナ・ピンチューク
レンスキー:ドミトリー・カルポフ
ラーリナ:エカテリーナ・セヴリュコーワ
フィリーピエヴナ:ナタリア・ビリュコーワ
グレーミン公爵:ユーリー・マンチャーク
トリケ:アレクセイ・クリギン
ザレツキー:アントン・プザノフ
中隊長:ヴァチェスラフ・カリュジニー

管弦楽:レニングラード国立歌劇場管弦楽団
合唱:レニングラード国立歌劇場合唱団
バレエ:レニングラード国立歌劇場バレエ

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2009/12/11

【マリインスキー・バレエ】テリョーシキナが良かった。ユーモアとイロニーたっぷりの『イワンと仔馬』

 原作はエルショーフというひとが書いた『せむしの仔馬』という童話だそうです。なんだ「仔馬」というのは。「子馬」じゃないのか?Wikipediaによれば、ポニーのことなので、子馬(子供の馬)ではなく、仔馬ないし小馬、と書いてありますが、真偽のほどは定かではありません。いずれにせよ、ロシア人なら誰でも知っている物語だそうです。
 作者のエルショーフに関しては、日本語のWikipediaにも出ておらず、情報がほとんどありません。英語のWikipediaには出ているようです。英語版Wiipedia(の自動翻訳)にリンクしておきます。それによれば、Pyotr Pavlovich Yershov (Пётр Павлович Ершов)は、1815年3月6日(ユリウス暦2月22日)に生まれ、1869年8月30日(ユリウス暦8月18日)に死去したロシアの詩人。サンクトベテルブルク大学在学中に書いた『せむしの仔馬』が1834年に発表されると、瞬く間に世間の注目を浴びたそうです。プーシキンも絶賛したそうで、当時の人たちはエルショーフというのは仮名で、本当はプーシキンの作だと思ったと書いてありますが、ウソかホントか……。
 公演プログラムの村山久美子の作品解説によれば、『せむしの仔馬』は何度かバレエかされたそうですが、今回のシチェードリンの音楽は、1960年に初演されたものだそうです。このときの振り付けはラドゥンスキーで、記事の一番下にこの版のDVDをリンクしておきます。今回の来日公演は、ラトマンスキーの新たな振り付けによって2009年3月14日に初演された、できたてほやほやの新ヴァージョンです。
P5040215 ストーリーはたわいもない話しですが、赤尾雄人の「シチェドリンとプリセツカヤの愛の“仔馬”」(公演プログラム所収)によれば、作曲をしたシチェドリンは、ラトマンスキー版の『仔馬』を評して、「この演出は現代の美意識と調和している。そこには過去・現在・未来に対する悪ふざけ、皮肉、当てこすりがあり、繊細で慎み深くそれでいてい誰からも好まれるユーモアで満ち溢れている」と述べたそうです。とっても貧相な皇帝は、時計台のような衣装を着ておりますが、今年のGWにロシア旅行をしたばかりのぽん太には、これが赤の広場にあるスパスカヤ塔であることはすぐにわかりました。この塔はクレムリンの公用門で、現在でも大統領はこの門を使用します。ですからこの皇帝は「クレムリン」を意味しているわけです。衣装や舞台美術は、マレーヴィッチの絵画をふまえているようですが、二十世紀初頭のロシア・アヴァンギャルドの一翼を担ったマレーヴィッチが、スターリン政権下では弾圧され、ありふれた写実絵画を描きながら測量士として一生を終えたことも、よく知られています。そもそもエルショーフの原作にしてから、皇帝を愚弄しているということで発禁処分を受けていたことがあるそうです。バレエの最後で、まるで熱湯コマーシャルのような煮え立つ大釜に飛び込んだイワンがどんな立派な姿で出てくるのかと思ったら、なんと「立派な」クレムリン。このバレエには、ロシア人ならすぐにわかる皮肉がもっともっと隠れているに違いありません。
 シチェドリンの音楽は、悪くはないけど新しさもなく、普通という感じ。ラトマンスキーの振り付けも、前衛的な動きはなく、第1幕はちょっと退屈でした。第2幕のクラシカルなパ・ド・ドウや群舞の方が面白かったです。
 『白鳥』でも観たテリョーシキナの姫君は、美人でかわいらしいけれど、ちょっとわがままであだっぽいところがあり、皇帝やイワンを手玉に取るあたりがよかったです。イワンにおさげを引っ張られて、なにするのよ〜という仕草もかわいい。第2幕の踊りは絶品でした。イワンのロブーヒンは初めて観ましたが、素直な若者という感じでイワンらしかったです。仔馬に抜擢されたペトロフも可愛らしい。今後の活躍にも期待。芸達者のバイムラードフは今回は侍従で登場。雌馬と海の女王のコンダウーロワは、背も高いしスタイルもいいし美人だし、まるで絵画に描かれた女神みたいですね。
 マリインスキー歌劇場管弦楽団は、指揮は残念ながらゲルギエフではなくレプニコフでしたが、勢いと迫力があり、ノリノリの演奏ですばらしかったです。
 明日のガラも行きたいところですが、先にレニングラード国立歌劇場の『オネーギン』の切符を取ってしまったので、そちらに行ってきます。


マリインスキー・バレエ
『イワンと仔馬』全2幕
2009年12月9日

音楽 : ロジオン・シチェドリン
振付 : アレクセイ・ラトマンスキー (2009年)
台本 : マクシム・イサーエフ
音楽監督 : ワレリー・ゲルギエフ
装置・衣裳 : マクシム・イサーエフ
照明 : ダミール・イスマギロフ
指揮 : アレクセイ・レプニコフ
管弦楽 : マリインスキー歌劇場管弦楽団

≪出演≫
姫君 : ヴィクトリア・テリョーシキナ
イワン / 皇子 : ミハイル・ロブーヒン
仔馬 : イリヤ・ペトロフ
侍従 : イスロム・バイムラードフ
皇帝 : アンドレイ・イワーノフ
父親 : ロマン・スクリプキン
雌馬 / 海の女王 : エカテリーナ・コンダウーロワ
大きな馬たち : アンドレイ・エルマコフ/ カミーリ・ヤングラゾフ
ダニーロ : ソスラン・クラーエフ
ガヴリーロ : マクシム・ジュージン
娘たち : ヤナ・セーリナ/エカテリーナ・イワンニコワ/クセーニャ・ロマショワ/ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク/エリザヴェータ・チェプラソワ/オリガ・ミーニナ
ジプシーたち : ラファエル・ムーシン/フョードル・ムラショーフ/カレン・ヨアンニシアン/エレーナ・バジェーノワ/アナスタシア・ペトゥシコーワ/ポリーナ・ラッサーディナ/リュー・チヨン/アリサ・ソコロワ

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2009/12/10

【舞踏】へんなおじさんたちがなぜかカワイイ 山海塾『卵熱』

 20年くらい前だったでしょうか、テレビで『卵熱』を見たのが、ぽん太と山海塾の出会いでした。いまやインターネットの時代。調べてみたら見つかりました。1987年3月22に教育テレビで放映されたようです。ということで、約20年振りに生『卵』を観ることになった今回。席も前の方です。
 ところが前列の席に巨大な外人が並んでいます。み、見えません。そもそもこの劇場、前の方の席だと舞台をやや見上げる感じになり、舞台上の水や砂がよく見えません。椅子の背もたれも丸っこちデザインで、お笑い演技場の雰囲気です。舞台が暗転した時も、通路の非常灯(?)が明るくて、真っ暗闇になりません。この東京芸術劇場は、エントランスホールも長大なエスカレーターがあって、「池田屋の階段落ちか!」とつっこみたくなります。正面にあった緑色に輝く滝は、さすがに運用をやめたようですね。実用的にも、エスカレーターを上りきったところに人がたまると事故になるので、エスカレータの上ではお姉さんたちが「立ち止まらないでください」と叫びつづけ、エスカレーターの下には入場制限で長蛇の列ができたりします。大ホールの音響もあまりよくない気がして、このホールはぽん太はあんまり好きではありません。Wikipediaによれば、設計は芦原義信とのこと。こちらが芦原義信の公式サイトです。銀座のソニービルを設計したひとのようですね。
 ところで『卵熱』は「らんねつ」と読むのかと思ったら、どうやら「うねつ」らしい。しかし、「卵」って「う」って読んだっけ。ウィクショナリーによると、「卵」の読みは「ラン」と「たまご」だけのようですが。ひょっとして「卯」と間違えたのでしょうか。謎です。
 今回の舞台はフェスティバル/トーキョー09の一環らしいのですが、それが何なのかぽん太にはわかりません。フェスティバル/トーキョー09のサイトのなかの『卵熱』のベージはこちらです。
 などはさておき、舞台はすばらしかったです。舞台上に置かれた卵と、長い紐で吊るされた卵。そして天井から降り注ぐふた筋の水と土。床に広がる水。シンプルだけど、象徴的で美しい舞台装置です。卵はフォルムとしては、冒頭の天児牛大の白い背中となり、また顔となります。またメタファーとしては、土・水といった元素との関わりで、生命の起源、宇宙の始まりを思わせます。水は羊水となり、そのなかで胎児がうごめき、やがて立ち上がろうとします。卵はまた神秘・希望であって、ようやくそれを手に取ったとしても、あえなく割れてしまいます。砂の上に立てられた卵、振り子のようにゆっくりと動く卵、水、土、これらと舞踏手の動きが共振して行きます……。こういったことは、もはや言い尽くされたことですね。
 今回は、四人の踊り手の個性も面白かったです。蟬丸は、山海塾のために生まれて来たかのような風貌で、胎児のようであり、地蔵のようでもあります。その他の舞踏手は、誰がだれたやぽん太はわからないのですが、左奥の人は若い修行僧のような色気がありましたし、左手前の人は、水の中で寝転んで体を動かすシーンで、成長して行く胎児が自分の体を動かすことを楽しんでいるかのように、嬉々とした表情だったのが印象的でした。
 へんなおじさんたちがへんな踊りを踊っているのに、どこかカワイイ、山海塾の舞台でした。

山海塾 『卵を立てることから―卵熱』
2009年12月6日・東京芸術劇場中ホール

演出・振付・デザイン 天児牛大
音楽 YAS-KAZ、吉川洋一郎

舞踏手
天児牛大
蟬丸
竹内晶
市原昭仁
長谷川一郎

共同製作 パリ市立劇場、山海塾
初演 1986年 パリ市立劇場
共催 東京芸術劇場(財団法人東京都歴史文化財団)
主催 フェスティバル/トーキョー

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2009/12/09

【マリインスキー・バレエ】完璧なヴィシニョーワ、雰囲気あるコールプ『眠れる森の美女』

P4300066 今宵はヴィシニョーワとコールプの『眠れる森の美女』。こちらが公式サイトです。写真は今年のGWのロシア旅行で撮ったマリインスキー劇場の写真です。
 ヴィシニョーワはすばらしかったです。テクニックが完璧で安定感があるのはもちろんのこと、第一幕ではキラキラと輝いていて若さではちきれんばかりのオーロラ姫。一転して第二幕の幻影のシーンでは、無機的でありながら深い悲しみを湛えておりました。第三幕は王女の風格といったところか。コールプは目の周りを黒く塗り、半開きの口元から歯が見えて、オオカミみたいな印象はあいかわらずでしたが、ルジマトフやルグリにも通じる、役に没入したかのような独特の表現力、存在感がすばらしかったです。リラの精のコンダウーロワも神々しさがあってよかったです。『ジゼル』のミルタも観てみたくなりました。青い鳥はとても柔らかく、ふわりふわりと重さがないかのように宙を舞っていました。ダンサーはチモフェーエフ。あれれ、『白鳥』のパ・ド・トロワを踊っていて、ぽん太はあんまり感心しなかった人です。う〜む、ぽん太のバレエを見る目は信用できまへんな。以前にオペラ『イーゴリ公』で「ダッタン人の踊り」を踊ったバイムラードフがカラボスで、茶目っ気たっぷりの名演(?)でした。
 3回の休憩を挟んで上演時間が3時間40分、終演が夜の10時過ぎでした。ずいぶん長く感じられましたが、歌舞伎みたいなものだと思って、幕間で会話を楽しんだりして過ごすのがいいのかもしれません。


眠れる森の美女
プロローグとアポテオーズ付き全3幕
2009年12月3日/東京文化会館

音楽 : ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
振付 : マリウス・プティパ (1890年)
改訂振付 : コンスタンチン・セルゲーエフ (1952年)
台本 : イワン・フセヴォロジスキー
マリウス・プティパ
装置・衣裳 : シモン・ヴィルサラーゼ
指揮 : ボリス・グルージン
管弦楽 : 東京ニューシティ管弦楽団

≪出演≫
オーロラ姫 : ディアナ・ヴィシニョーワ
国王 : ウラジーミル・ポノマリョーフ
王妃 : エレーナ・バジェーノワ
デジレ王子 : イーゴリ・コールプ
求婚者たち : コンスタンチン・ズヴェレフ、 マクシム・ジュージン、アレクセイ・チモフェーエフ、デニス・フィルソーフ
リラの精 : エカテリーナ・コンダウーロワ
優しさの精 : マリーヤ・シリンキナ
元気の精 : アンナ・ラヴリネンコ
鷹揚さの精 : エレーナ・ユシコーフスカヤ
勇気の精 : ヤナ・セーリナ
のんきの精 : ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク
ダイヤモンドの精 : ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク
サファイアの精 : マリーヤ・シリンキナ
金の精 : アンナ・ラヴリネンコ
銀の精 : エリザヴェータ・チェプラソワ
悪の精カラボス : イスロム・バイムラードフ
カタラビュット / ガリフロン : ソスラン・クラーエフ
家来 : アナトーリー・マルチェンコ
フロリナ王女 : エフゲーニヤ・オブラスツォーワ
青い鳥 : アレクセイ・チモフェーエフ
白い猫 : ヤナ・セーリナ
長靴をはいた猫 : フョードル・ムラショーフ
赤ずきん : エレーナ・ユシコーフスカヤ
狼 : アナトーリー・マルチェンコ
子供たち : バレエ シャンブルウエスト (指導:今村博明,川口ゆり子)

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2009/12/07

【新国立オペラ】カルロ・ヴェントレの美声に酔いしれました『トスカ』

 新国立オペラ、前回の『ヴェツェック』は、わざわざお金を払ってすっかり気持ちが暗くなるというものでしたが、今回は正統派イタリアオペラの『トスカ』です。こちらが新国立劇場の公式サイト、そしてこちらが「トスカ」の特設サイト(予告編ムービーもあります)です。
 トスカ役のイアーノ・タマーは、焼き餅焼きのウブな歌姫が、ついにはスカルピアを手にかけるに至るまでの成長ぶり(?)を、見事に表現しておりました。「歌に生き、恋に生き」もよかったです。しかしぽん太が聞き惚れたのは、カヴァラドッシ役のカルロ・ヴェントレの声。ちょっと軽い声ですが伸びやかで明るく、巻き舌で微妙に声が裏返るのが、いかにも「イタリア」という感じです。最初のナンバーの「妙なる調和」から、拍手喝采を浴びていました。荘厳で真面目なドイツ・オペラもいいけど、華やかなイタリア・オペラもいいな♪彼の声は「リリコ・スピント」と呼ばれるそうな。普通のテノール(リリコ)よりも少し強靭で、ドラマチックな声らしいですが、ぽん太にはよくわかりません。
 ジョン・ルンドグレンが演じるスカルピアは、映画『羊たちの沈黙』のレクター博士をも思わせる、恐ろしき人物でした。第一幕で彼は、トスカの嫉妬心を煽ることによって彼女の精神をコントロールし、アンジェロッティの隠れ場所を探し出します。第二幕ではまさに詰め将棋のように、彼女が自分に身を任せるように仕向けます。「トスカのキス」によってスカルピアは殺されますが、第三幕では死してなおトスカを支配します。彼女は本当に銃殺されたカヴァラドッシを前に、嬉々として「演技が上手」と褒めたりします。トスカは最後に身を投げるとき、「スカルピア、神の御前で」と叫びます。次は死後の世界で、トスカとスコルピオの戦いが続けられるのでしょうか。こうしてみると『トスカ』は本当は恐いオペラなのかもしれません。
 舞台装置は写実的で豪華。重厚で本格的な演出でした。フレデリック・シャスラン指揮の東京フィルの音楽も、ドラマチックでよかったように思います。

 ところで、こちらの記事にもあるように、例の事業仕分けで、新国立劇場運営財団の予算も大幅削減になったとのこと。無駄な役員報酬などがあるのなら削ってほしいですが、外国人歌手のレベルが下がったりしたら、当然ぽん太は新国立オペラを聴きに行くのはやめるでしょう。どうなることやら……。


新国立劇場オペラ「トスカ」
ジャコモ・プッチーニ
2009年12月2日/新国立劇場オペラパレス

【指 揮】フレデリック・シャスラン
【演 出】アントネッロ・マダウ=ディアツ
【美 術】川口直次
【衣 裳】ピエール・ルチアーノ・カヴァロッティ
【照 明】奥畑康夫
【芸術監督】若杉 弘
【主 催】新国立劇場

【トスカ】イアーノ・タマー
【カヴァラドッシ】カルロ・ヴェントレ
【スカルピア】ジョン・ルンドグレン
【アンジェロッティ】彭 康亮
【スポレッタ】松浦 健
【シャルローネ】大塚博章
【堂守】鹿野由之
【羊飼い】九嶋香奈枝

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

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2009/12/05

【山形紅葉行(3)】鳴子峡・封人の家・金山町・小杉の大杉

 銀山温泉を後にしたぽん太とにゃん子は、紅葉を求めて宮城県の鳴子峡に向かいました。経路は下図の通りで、尾花沢から北東に向かって走り、山刀伐峠(なたぎりとうげ)を越え、赤倉温泉に出ます。そこから国道47号線を東に進み、鳴子峡に着きました。

大きな地図で見る
 実はこの道は、『奥の細道』で芭蕉が辿った道なのでした。もちろん芭蕉は、ぽん太とにゃん子とは逆に、鳴子から尾花沢に向かったのです。『奥の細道』のこの部分の原文を読みたい方は、たとえば こちらのサイトをどうぞ。写真や地図、関連する図譜なども充実しております。
 芭蕉一行は、元禄2年5月15日(1689年7月1日)、岩出山( 地図)に泊まりました。当初はここから、現在の国道347号線を通って尾花沢に行く予定でしたが、遠い上に難所が多いという理由で、鳴子経由の道に変更しました。急なことなので通行手形がなく、尿前の関(しとまえのせき)(地図)を越えるのに苦労したようです。芭蕉一行が泊まったのが「封人の家」(ほうじんのいえ:関所の番人の家、(地図))で、そこで芭蕉は「蚤虱 馬の尿する枕もと」という有名な句を詠んでいます。
Pa220065 実はこの封人の家は現在も残っております。写真がその「旧有路家住宅」で、解体復元工事が行われ、国指定の重要文化財となっております。「蚤虱……」の句からすると、もっとうらぶれた民家を想像しますが、けっこう立派な家だったのですね。
 その後芭蕉一行は、山刀伐峠(なたぎりとうげ)を越えて尾花沢に向かいました。ただでさえ険しい山道、山賊に襲われる心配もあり、芭蕉は漢詩を上手に引用しながら、緊迫した旅の様子を描き出しています。

Pa220090 さて、ぽん太とにゃん子の旅にもどりますが、鳴子峡の紅葉はとても見事でした。写真は、鳴子峡レストハウスからの眺めです。こちらの 鳴子温泉郷観光協会のサイトに、案内図や紅葉情報があります(今年の紅葉はとっくに終わってますが……)。渓谷沿いの遊歩道が一部通行止めになっていたのが残念でした。
Pa220075_2 大深沢新遊歩道を歩いてみましたが、こちらはちょっと時期が遅すぎた感じです。でも、ところどころ燃えるような紅葉がありました。
Pa220069 近くの中山平駅前に、C58蒸気機関車のの保存車両を発見! こちらのサイトにある、「レイル・マガジン」2008年9月号付録「機関車表」沖田佑作氏編からの引用によると、この蒸気機関車(C58356)の履歴は以下の通りです。1944-1 川崎重工兵庫工場 製番2929、当初配属不明。1945-8現在 王寺。1947-7-22現在 王寺。1954-10-8 宮古。1964-4-1現在 盛岡。移動時期不明 八戸。1972-6-26 小牛田。1973-6-16廃車 小牛田。お疲れさまでした。

Pa220091 次にぽん太とにゃん子が訪れたのは、金山町(地図)です。金山杉の産地として有名ですが、街のそこここに水路があり、切妻屋根に白壁と黒い梁の住宅が並び、とても美しい街です。金山町の歴史は古いようですが、近世は羽州街道の宿場町として栄えたそうです。金山町公式サイトのなかの観光案内のページは こちらです。写真は大堰で、黒塀が続く石畳の小道に沿って流れる農業用水が美しいです。
Pa220095 長屋門です。昭和13年の大火を免れたもので、17世紀前半に金山城の大手門が移築されたのだそうで、金山町では最も古い建物のひとつです。
Pa220098 旧金山郵便局です。昭和14年に造られたそうで、洋風でかわいらしい建物です。現在は「交流サロンぽすと」として使われているそうです。

Pa220105 今日の宿泊先は山形県西川町の出羽屋です。途中、山形県最上郡鮭川村の「小杉の大杉」に寄りました。こちらが地図です。「写真」を選択すると、小さく杉の木も写っています。とんがった二つの耳。でっぷりと太ったお腹。なにかに似ていませんか?そう、別名「トトロの木」と呼ばれています。道はちょっとわかりにくいですが、近くまで行くと分岐点に案内板があるので、行き着けると思います。

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2009/12/03

【バレエ】マリインスキー・バレエの『白鳥の湖』はおっとりしていていいな♪

 み・て・き・ま・し・た♪
 公式サイトはこちらです。
 マリインスキーというと、やはりロパートキナを観たいところですが、今回は日にちがあわず、テリョーシキナとサラファーノフのペアでした。テリョーシキナを観るのは初めて。サラファーノフは、今年の4月に東京バレエ団の「エチュード」でフォーゲルと踊ったのと、8月のバレフェスでオシポワと「ドンキ」を踊ったのを観ました。童顔だけど足さばきが見事だった記憶があります。
 テリョーシキナの踊りは、体の隅々まで常に神経が行き届いている感じで、しかも動きが柔らかく、とてもよかったです。顔立ちが面長で少しきついので、オデットは「瞳うるうるのお姫様」という感じではありませんでしたが、愛と悲しみが伝わって来ました。オディールは雰囲気がぴったりで、頭の後ろにぴょんぴょんと髪の毛を立てたヘアスタイル(ぽん太はヘアスタイルの用語はわかりません)も似合っていて、小悪魔的な魅力がありました。これでは何も知らないおぼっちゃま風のサラファーノフの王子様が騙されてしまうのも無理はありません。サラファーノフは細かな足技を披露する場面はあまりありませんでしたが、優雅で大きな踊りでした。黒鳥のヴァリアシオンのソロでは、飛び上がって回転して着地し、そのままノーステップでまた飛んで回転するという技(名称不明)を繰り出しておりました。グラン・アダージョもしっとりとしてよかったですが、なぜかリフトがあんまりありませんでした。仰向けに持ち上げて360度回転するやつ(名称不明)が、持ち上げて下ろすだけになってましたし、右と左に開脚ジャ〜ンプ(名称不明)というのもなかったです。なぜでしょう?ちと残念でした。
 グリーゴリー・ポポフの道化も秀逸。ジャンプやピルエットはもちろんのこと、両手をぶらぶらさせたり、こまわり君のように指差したり、表情が豊かでした。1幕第1場のパ・ド・トロワの男性のチモフェーエフはちと不満。女性と動きのタイミングが合ってなかったし、ピルエットのサポートも必死の感じで、背骨もあまり柔らかくないようです。昨年のマリインスキー・オペラの『イーゴリ公』で「ダッタン人の踊り」を踊ったポリーナ・ラッサーディナはハンガリーを、イスロム・バイムラードフはスペインを踊っていました。
 などとあ〜だこ〜だ書きましたが、実はぽん太はマリインスキー・バレエは大好きです。思わず椅子からずり落ちるようなすごいピルエットをするわけでもなく、派手なジャンプを決めるわけでもなく、常に限界の手前の節度を保ち、どこまでも優雅ですが、なんとも言いようのない典雅な気品があります。大した動きはしていないようなのに、ありきたりの動作やちょっとした仕草が、とても美しいです。ぽん太はバレエに詳しくないので、具体的にどこと言えないのが悲しいですが。コール・ド・バレエもみな手足が長くて頭が小さくてスタイルがいいです。ぽん太は観ているととてもいい気分になり、頬がゆるんできて、口元からヨダレが落ちそうになります。
 ブベリニコフ指揮、東京ニューシティ管弦楽団による音楽は、ソロなどは美しかったですが、チャイコフスキー演歌のすすり泣くような迫力にはかける気がしました。
 

 ところでぽん太は以前のブログで、『白鳥の湖』の原作がムーゼウスの『奪われたヴェール』だというのは誤りなのではないか、と書きました。ところが今回の公演プログラムのなかの池野惠による『白鳥の湖』の作品解説には、チャイコフスキーは甥や姪や子供たちのために、『奪われたヴェール』をもとに小さなバレエを作っていて、そのアイディアからベーギチェフとゲーリツェルの台本が生まれたのだと書かれています。ということは、やはり『奪われたヴェール』が『白鳥の湖』の原作なのでしょうか?いったいこの話しの出所はどこなのか?まだまだみちくさの余地がありそうです。


2009年11月29日(日) 15:00~18:00
白鳥の湖 3幕4場

音楽 : ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
振付 : マリウス・プティパ,レフ・イワノフ
改訂振付 : コンスタンチン・セルゲーエフ
台本 : ウラジーミル・ベーギチェフ,ワシーリー・ゲーリツェル
装置 : シモン・ヴィルサラーゼ
衣裳 : ガリーナ・ソロヴィヨーワ
指揮 : パーヴェル・ブベリニコフ
管弦楽 : 東京ニューシティ管弦楽団

≪出 演≫
オデット/オディール : ヴィクトリア・テリョーシキナ
ジークフリート王子 : レオニード・サラファーノフ
王妃 (王子の母) : エレーナ・バジェーノワ
王子の家庭教師 : ソスラン・クラーエフ
道化 : グリーゴリー・ポポフ
悪魔ロットバルト : コンスタンチン・ズヴェレフ
王子の友人たち : エリザヴェータ・チェプラソワ/マリーヤ・シリンキナ/アレクセイ・チモフェーエフ
小さな白鳥 : エリザヴェータ・チェプラソワ/ヤナ・セーリナ/ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク/エレーナ・ユシコーフスカヤ
大きな白鳥 : ダリア・ヴァスネツォーワ/エカテリーナ・コンダウーロワ/アナスタシア・ペトゥシコーワ/リリヤ・リシューク
2羽の白鳥 : ダリア・ヴァスネツォーワ/オクサーナ・スコーリク
スペインの踊り : アナスタシア・ペトゥシコーワ/ヴァレーリヤ・イワーノワ/イスロム・バイムラードフ/カレン・ヨアンニシアン
ナポリの踊り : ヤナ・セーリナ/マクシム・フレプトフ
ハンガリーの踊り : ポリーナ・ラッサーディナ/ボリス・ジュリーロフ
マズルカ : アリサ・ソコロワ/オリガ・ベリク/ナターリア・ドゥゼヴリスカヤ/スヴェトラーナ・シプラトワ/ドミートリー・プィハチョーフ/カミーリ・ヤングラゾフ/ニコライ・ナウーモフ/セルゲイ・サリコフ

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2009/12/01

【山形紅葉行(2)】隈研吾設計・銀山温泉しろがね湯(★★★)(付:藤屋その後)

Pa220034 銀山温泉には二つの共同浴場があります。ひとつは以前に紹介した大湯で、もうひとつが今回入浴した「しろがね湯」です。しろがね湯の設計は、最近では銀座のティファニー本店や根津美術館の設計でも有名な隈研吾氏です。
Pa2200322001年竣工で、だいぶ古びてしまっていて、サビや汚れが目立ちます。細い三角形の敷地に建っています。玄関の上が男湯になっております。
Pa220041 玄関を入って、おじさんに入浴料を渡します。右の階段を上ると男湯、左の戸を入ると女湯です。
Pa220035 脱衣場です。障子のような半透明の壁から入ってくる明かりが美しいです。
 冒頭の写真が男湯です。二回で眺めがよく、大きなガラス窓があって露天風呂のような開放的な雰囲気があります。さすがに細かいところの意匠は見事で、細かく造り込まれています。しかしせっかくの窓はスダレで目隠しされており、風の通る明かり窓はビニールで塞がれております。
Pa220039 天井と壁のあいだの隙間には、無造作にウレタンが押し込まれていました。風の通り抜ける開放的な浴室を狙ったのだと思いますが、寒い山形の山中では無理があったようです。
Pa220036 脱衣場の洗面所です。光の演出がとても美しいです。
Pa220086 こちらがにゃん子撮影の女湯。男湯とは対照的に、石の壁に囲まれて天井の高い暗い空間に、上方から光が差し込んできます。
Pa220064 川の反対側から撮ったしろがね湯の全景です。木製の縦格子が、風雪によって黒ずんでしまっており、古びた味というよりは、傷んでしまった印象があります。それより問題なのは、温泉街が右方向にあり、そちらから入浴客が訪ねてくると、配管がむき出しの裏側の壁と、黒ずんだ縦格子しか見えないことです。通り過ぎて振り返らないと、そこに共同浴場があることがわかりません。温泉街に背を向けているような気がします。
 細かいデザインのセンスはいいけれど、実用性に欠けること、雰囲気や方向が温泉街にとけ込んでいないこと、(隈氏のせいではありませんが)手入れが行き届いておらず古びてしまっていることで、ぽん太の評価は3点です。

Pa220031 金髪の女将ジニーさんで有名な藤屋も、隈研吾の設計です。2006年6月の竣工で、前回来た時は真新しくて、宿のほぼ全面を覆う白木の縦格子が目立ちましたが、しろがね湯と同様に木がくすんで落ち着いた印象になりました。しかしその分華やかさや明るさがなくなって、温泉街の他の建物よりもかえって地味な印象になってしまいました。ジニーさんがアメリカに帰国してしまっているという噂もあり、ちと心配です。

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