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2010/01/13

【ダンス】他分野がコラボしきれずちと残念・首藤康之×中村恩恵「時の庭」

 首藤が踊るというので、横浜まで出かけて来ました。まずは中華街で腹ごしらえをしたのち、神奈川県民ホールへ。今回の会場はギャラリーです。なんでも、同時期に開催されている「日常/場違い」展に出品されている佐藤恵子の美術作品『変容』のなかで(公式サイトはこちら。作品の動画もあります)、首藤らがダンスを踊るという企画だそうな。
 佐藤恵子の作品は、三つの部分からなるインスタレーションで、主に踊りの舞台となったのは、いくつもの切り株から天井に向かって筒状に糸が張られたものが立ち並ぶ空間でした。木の幹のようでもあり、また木漏れ日のようでもあり、森のなかのような詩情が感じられます。切り株の周りの枯葉あるいはキノコと見えるものは、近づいてみるとトランジスタなどの素子です。すると交錯する糸は情報回線のようにも見えて来て、それぞれが遥か彼方へと結ばれながら、互いにつながることがない切株たちが、現代人の情報社会のなかの孤独を表しているようにも思えてきます。
 で、肝心のダンスの方ですが、ぽん太はちと不満でした。せっかくアート作品のなかで踊っているのに、踊りと作品が関係し合っているように見えませんでした。確かに切株のあいだを歩き回ったりはしたのですが、ダンスとアートが芸術というレベルで相互作用を行っているように思えません。ちょっとおもしろかったのは、切株から貼られた糸の間に、首藤が首を突っ込むシーン。でもそれもひとつの思いつきで終わってしまい、ダンス全体のなかに位置づけられてない気がします。鋭く力の入った動きが多く、柔らかで静かな部分がみられませんでした。踊り手同士がもごもごと絡みあう振付けが多かったのですが、ダイナミックなジャ〜ンプとかも見たかったです。複数のダンサーが入れ替わりながら支え合う振付けも、以前に見たラッセル・マリファントや、マイムの小野寺修二の方がおもしろかったです。中村恩恵がお盆に水差しと洗面器を載せて出て来て、青木尚哉の上半身を裸にし、水で拭うという部分がありました。これは母性を感じさせるエロティックな場面でしたが、それを小道具ではなくてダンスで表現してほしかったです。
 音楽のディルク・ハウブリッヒ(Dirk Haublich)は、キリアンを初めとして多くのダンス音楽を提供しているようですが、今回のは抽象的に音(おん)を配置したような一昔前のドイツ現代音楽みたいな曲で、これまた振付けと相互作用している感じがなく、背景の環境音楽みたいに聴こえてしまいました。音楽が、会場のいろいろな方向から聴こえてくるのはおもしろかったです。途中で朗読される詩は、エミリー・ディキンソン(Emily Dickinson)だそうです。無学なぽん太は初めて聞いた名前です。残念ながら、朗読の言葉がはっきり聞き取れず、詩とダンスがどのように関連しているかもよくわかりませんでした。
 全体として、美術、音楽、詩、ダンスのインタラクションがいまひとつ感じられず、また「運動」はあっても「情動」に欠ける気がしました。首藤らが「時」をどう理解し、バレエでどう表現しようとしたのかがわかりませんでした(ぽん太の理解力不足のためか?)。首藤の踊りを間近で観れたのはよかったですが……。ということで、ちと不満。でも、試みとしてはおもしろいと思うので、今後も回を重ねていって欲しい気がします。


アート・コンプレックス2009
首藤康之×中村恩恵「時の庭」<世界初演>
2010年1月10日・神奈川県民ホールギャラリー

振付:中村恩恵 美術:佐藤恵子
出演:中村恩恵 首藤康之 青木尚哉
美術:佐藤恵子
音楽:ディルク・ハウブリッヒ

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