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2010/03/18

【バレエ】黒海の情熱 アナニアシヴィリ&グルジア国立バレエ「ロミオとジュリエット」

 いや〜よかったです。「ジゼル」よりぜんぜんいいです。お客さんの反応が違ってました。何回も何回もカーテンコールが続き、最後は会場全員スタンディング・オベーションでした。公演の公式サイトはこちらです。
 「ジゼル」も悪くはなかったですけれど、なんか群舞がいまいちだったのと、南国的で雑然とした雰囲気が、ぽん太の「ジゼル」のイメージとは相容れませんでした。言い方が悪いけど「田舎のバレエ団」という印象を持ちました。しかし「ロミオとジュリエット」はもともと南国イタリアを舞台にした、燃えるような恋の話し。団員の南国風の顔立ちも、違和感がありませんでした。またシェイクスピアの原作は、決してハーレクイーン的なロマンチックなラブストーリーではなく、良家子女なら顔を赤らめるような相当猥雑な冗談が詰め込まれた、笑劇的要素を持った演劇です。そのへんがいい意味で、アナニアシヴィリ&グルジア国立バレエに合ってました。ニーナはもとより、群舞ものびのびと踊っていた気がします。場面転換のたびに幕が閉められ、幕の手前で寸劇が演じられるのも、やぼったいといえばやぼったいですが、なんだか昔の演劇風で面白かったです。
 セットや衣装は、やはり「東欧〜アジアっぽくて、なんかイタリアらしくないな〜」という感じ。そういえば教会にもイコンが飾られており、カトリックではなくてグルジア正教会っぽいです。
 今回の振付けのラブロフスキー版は初めて観ましたが、第一場が、さしたる踊りもなく、入り乱れてのチャンバラで終わったときには、正直少し気持ちがうつになりました。しかしニーナのジュリエットが登場してびっくり仰天。やわらかくて可憐で、まさに少女のようでした。最大の見せ場のバルコニー・シーンは、ラブロフスキー版の振付けも悪くなく、感動で思わず目がうるうるしてきました。バルコニー・シーンなのにバルコニーがないのが、ちょっと面白かったです。
 座布団を捧げて踊る、不思議な踊りがありました。ググって見たらクッション・ダンスというそうな。 こちらのサイトで触れられています。Lina EckensteinのComparative Studies in Nursery Rhymesを、星野孝司さんという方が抄訳(?)したもののようです。引用させていただくと……

プレイフォードによる〈ジョウン・ソンダーソン あるいは クッション・ダンス〉の仔細は,以下の通り――(1)
 まず二人のダンサーがフィドル(弦楽器)の曲に合わせて,それぞれ小座布団と角杯を運んでくる。座布団を持っている方はドアに鍵を掛けて,その鍵を懐におさめ,一人で部屋を踊って回る。それから楽士を相手に,女の子を一人みつくろい是非なくダンスに出てもらう,といった旨の口上を交わす。つぎに女性たちの中から「ジョウン・ソンダーソン」が指名される。座布団持ちが選ばれた女性の前に,その小座布団を敷いてひざまづく。次に彼女も同様の所作をして,最後に角杯から酒をいただく。二人がキスを交わし,一緒に踊りだすと,同じセレモニーがそこここの男女の間でくりかえされ,各々相手が決ったものから「座布団持ち」たちの踊る後にどんどん続いてゆき,最終的には集まった者全員が踊りの輪と化すのである。
 その後ラストにいたるまで、よけいな「新演出」がないためにかえってストーリー展開が明確になって、津波のような劇的盛り上がりを生み出しました。会場全体が大興奮で、先程述べたようにカーテンコールが果てしなく続きました。
 ロミオのウヴァーロフも、新国立でザハロワと踊っているのを見た感じでは端正な貴公子という印象でしたが、今回は情熱的で思い入れたっぷりの濃い〜演技。彼の新たな一面を見たような気がしました。「ジゼル」ではニーナとの身長差がありすぎる気がしましたが、「ロミオとジュリエット」では、高々としたリフトがとてもダイナミックでした。岩田守弘がマキューシオで、安定感のあるテクニックのみならず、剣で刺されて死んでいく名演技も披露。日本人の活躍を見るのはうれしいものです。「ジゼル」の時も気になったのですが、もうひとり日本人風の顔のダンサーが、すばらしいジャンプや回転を見せてくれました。キャスト表を見るとヤサウイ・メルガリーエフという名前で、日本人ではないようです。公式サイトのブログによると、カザフスタン人とのこと。案の定「日本人ですか」という問い合わせが多かったそうです。
 演奏は東京ニューシティー管弦楽団。先日パリ・オペラ座バレエで聞いたばかり。ご苦労さまです。しかも立て続けにプロコフィエフ。「シンデレラ」よりも重々しく不協和音が目立つ「ロミオとジュリエット」ですが、厚みのある音と繊細な音色で、感動を盛り上げてくれました。
 カーテンコールにはニーナのちっちゃな娘さんが花束を持って登場。ニーナは最後のカーテンコールでは、グルジアの国旗を持って登場しました。祖国のバレエ界のために身を捧げようという彼女の思いが伝わって来ました。そういえば先日こんなニュースが……「「露軍侵攻」と偽ニュース、グルジア市民パニック」。ロシアと、かつてロシアの一部だったグルジアのあいだで、軍事紛争が続いていることはよく知られています。ニーナはグルジア人、ウヴァーロフはロシア人。で、「ロミオとジュリエット」……。これは考え過ぎのようですが、ラブロフスキー版は、原作どおり最後にモンタギュー家とキャピュレット家の和解を持ってくることによって、二人の悲恋よりも、人間同士の対立から生じる不幸に焦点を当てているように感じられ、身につまされました。
 パリから帰国したばかりの鈴木晶先生を久々におみかけしました。鈴木晶先生のブログはこちら
 今回の舞台を見て、アナニアシヴィリ&グルジア国立バレエの良さがやっとわかりました。もう一度改めて「ジゼル」を見直したらどういう風に感じるだろう、などと思いましたが、もし機会があれば……。


アナニアシヴィリ&グルジア国立バレエ
≪ロミオとジュリエット≫ 全 3 幕
2010年3月14日(日)  ゆうぽうと

音楽 : セルゲイ・プロコフィエフ
台本 : レオニード・ラヴロフスキー,セルゲイ・プロコフィエフ,セルゲイ・ラドロフ
振付 : レオニード・ラヴロフスキー
振付改訂 : ミハイル・ラヴロフスキー
振付改訂補佐 : ドミートリー・コルネーエフ,イリーナ・イワノワ,アレクセイ・ファジェーチェフ
装置 : ダヴィッド・モナヴァルディサシヴィリ
衣裳 : ヴャチェスラフ・オークネフ
衣裳デザイン補佐 : ナティヤ・シルビラーゼ
照明 : ジョン・B・リード
照明デザイン補佐 : アミラン・アナネッリ
舞台監督 : ニアラ・ゴジアシヴィリ
指揮 : ダヴィド・ムケリア
管弦楽 : 東京ニューシティ管弦楽団

<出 演>
ジュリエット : ニーナ・アナニアシヴィリ
ロミオ : アンドレイ・ウヴァーロフ
ティボルト(キャピュレット卿夫人の甥) : イラクリ・バフタ-ゼ
マキューシオ(ロミオの友人) : 岩田守弘
ヴェローナの太守 : パータ・チヒクヴィシヴィリ
キャピュレット卿(ジュリエットの父) : ユーリー・ソローキン
キャピュレット卿夫人 : ニーノ・オチアウーリ
ジュリエットの乳母 : タチヤーナ・バフターゼ
パリス(ジュリエットの婚約者) : ワシル・アフメテリ
パリスの小姓 : テオーナ・ベドシヴィリ
ローレンス神父 : パータ・チヒクヴィシヴィリ
ジュリエットの友人 : ラリ・カンデラキ
吟遊詩人 : ヤサウイ・メルガリーエフ
道化:ヤサウイ・メルガリーエフ
モンタギュー卿(ロミオの父) : マヌシャール・シハルリーゼ
ベンヴォーリオ(ロミオの友人) : ゲオルギー・ムシヴェニエラーゼ
居酒屋の主人 : ベサリオン・シャチリシヴィリ

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