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2010/03/17

【バレエ】一言でいえば「最高!」 パリ・オペラ座バレエ団「シンデレラ」

 見て来ました見て来ました、とにかくすばらしかったです。NBSの公式サイトはこちらです。パリ・オペラ座バレエ団、前回の「ル・パルク」は、フランスのエスプリにちょっとついていけなかったのですが、今回の「シンデレラ」は心底感動しました。
 「シンデレラ」は、以前に新国立のアシュトン版を観たことがありますが、ヌレエフ版は初めて。クラシックのテクニックを基本にしてモダンな動きもあり、ヌレエフ一流の超絶技巧のパ・ド・ドゥや、複雑な群舞など、とても感動しました。一方でユーモアや洒落っ気もたっぷりで、ショーを観るかのようなハイセンスな舞台でした。ぽん太はなんかノイマイヤーの「人魚姫」をちと思い浮かべました。……。
 ダンサーたちもすばらしかったです。シンデレラを踊ったムッサンは、ぽん太は初めて観たのですが、最初は痩せててちょっと華がないな〜などと思って見てたのですが、変身後は30年代風のヘアスタイルや衣装が似合ってとても美しく、オーラにあふれてました。踊りもやらかかくしなやかで、繊細な動きに表現力がありました。タップダンスも披露して、お見事お見事。ガニオは言うまでもありませんが、ユーモラスな演技もいいですね。エイマンのダンス教師は、ジャンプや安定感など、テクニックがすばらしい。コゼットとジルベールの義姉も、とても芸達者でした。継母のファヴォランは、男性の女役はよく見かけますが、トゥ・シューズまで履いているのは初めて見た気がします。群舞にスーパーレッスンで人気を呼んだアクセル君を発見。とにかく全員の踊りがすべて上手で生き生きとしていて、お家芸というんでしょうか、自家薬籠中のものというんでしょうか、全員が踊り込んでいる感じでした。
 セットもアール・デコ調で美しく、豪華でしっかりと作り込んであります。巨大なキングコングも出現。お金がかかってます。
 「ル・パルク」でも振ったケッセル指揮の東京ニューシティー管弦楽団の演奏も、プロコフィエフらしい重厚さを聞かせつつ、スピード感やきらびやかさもあって、なかなかよかったです。
 実はぽん太は、ヌレエフ版の全幕物を観るのは初めてでした。シンデレラをハリウッドの世界に重ね合わせるのは、目新しいアイディアとは思われませんが、それが陳腐ではなく感じられるのは、ヌレエフの力でしょうか。舞台設定は1930年代のアメリカだそうですが、古き良き時代へのノスタルジックな雰囲気に満ちています。ヌレエフ版「シンデレラ」の初演は1986年とのことですから、初演の時点で、半世紀前をなつかしむものだったわけですね。ちなみに映画「キンゴ・コング」は1933年です。また、第一幕の最後の、巨大な歯車のセットから思い浮かべるチャップリンの「モダン・タイムス」は1936年ですね。
 今回の舞台は、「機械と人間が幸せな関係を結んでいた時代」が描かれています。スタジオのセットで夢のような世界を生み出す映画がそもそもそういうものですし、キング・コングや巨大な歯車など、機械仕掛けのものがいろいろと出て来ます。それに呼応して振付けでも、シンデレラがコート掛けとダンスをしたり、シンデレラと映画スターのパ・ド・ドゥでは回転椅子が効果的に使われたりします。そしてラストは、送風機がショールをなびかせます。
 日本は21世紀になって、未来はますます悪くなって行くだろうという絶望感が蔓延しており、「シンデレラ・ストーリー」など絵空事としか思えません。「シンデレラ」を見るにつけ、現在の日本の悲惨な社会状況が思い浮かんで、涙に耐えません。
 プロコフィエフが「シンデレラ」を作曲したのが1944年。プロコフィエフは1918年、27歳のときに「日本経由で」アメリカに亡命。以後、アメリカやフランスを拠点として活動いたしました。そんな彼がソ連に帰国を決意したのが1936年。公式サイトの解説によれば、ヌレエフは「1930年代というのは、プロコフィエフの人生においては、彼がソ連に帰国し、西洋へのノスタルジーに身を焦がしていた時代である。プロコフィエフの「シンデレラ」は、あまりロシア的ではない。彼の作った中で最も西洋的な作品でさえある」と語ったということです。ヌレエフ自身も1961年にソ連から亡命したことは周知の事実。ヌレエフがプロコフィエフに何を見たのかは、タヌキのぽん太の伺い知るところではありませんが、ヌレエフ版「シンデレラ」の華やかな舞台の裏側に、なにやら深い思いが隠されていることは確かでしょう。


パリ・オペラ座バレエ団 日本公演
「シンデレラ」(全3幕)
2010年3月13日ソワレ 東京文化会館

音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
振付:ルドルフ・ヌレエフ
装置:ペトリカ・イオネスコ
衣裳:森英恵
照明:グイード・レヴィ
1986年 パリ・オペラ座初演

◆主な配役◆
シンデレラ:デルフィーヌ・ムッサン
映画スター:マチュー・ガニオ

二人の義姉:エミリー・コゼット、ドロテ・ジルベール
継母:ステファン・ファヴォラン
ダンス教師:マチアス・エイマン
プロデューサー:アレッシオ・カルボネ
父:ジャン=クリストフ・ゲリ

春:リュドミラ・パリエロ
夏:エヴ・グリンツテイン
秋:メラニー・ユレル
冬:ステファニー・ロンベール

演奏:東京ニューシティ管弦楽団
指揮:コーエン・ケッセル

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