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2010/04/17

【バレエ】踊りはいいけど気分がどっぷり暗くなる「エスメラルダ」国立モスクワ音楽劇場バレエ

 国立モスクワ音楽劇場バレエの「エスメラルダ」を観てきました。なかなか全幕を観る機会がない珍しい演目だそうですが、バレエにしては珍しく、見終わって気分がどっぷり暗くなりました。
 このバレエ団を観るのはぽん太は初めてです。昨年「マラーホフの贈り物」で観たボリショイ・バレエ団のフィーリンが、2008年から芸術監督となったそうです。こちらが 国立モスクワ音楽劇場の公式サイト(英語版)。場所は こちら(googleマップ)で、クレムリンの北側に位置するようです。
 なんでも、スタニスラフスキー・システムに基づく舞台で有名だそうで、劇場名にも「スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ記念」と冠されています。タヌキのぽん太は、スタニスラフスキー・システムと聞いても、リアリズム演劇の方法論というぐらいしか知りません。あと、ダンチェンコって誰?
 ぐぐってみたところ、スタニスラフスキーは1863年モスクワ生まれ、1938年に死去。1898年にネミロヴィチ=ダンチェンコとともにモスクワ芸術座を創設したとのこと。ああ、ダンチェンコってこの人か……。モスクワ芸術座は、初演がさんざんな結果に終わったチェーホフの『かもめ』を再演して大成功に導き、また『三人姉妹』や『桜の園』を初演したのだそうな。ちなみにこちらが モスクワ芸術座の公式サイト(英語)です。
 スタニスラフスキーとモスクワ芸術座との関係はわかりましたが、国立モスクワ音楽劇場との関係はどうなっているのでしょう。上記の日本公演公式サイトによれば、1929年にボリジョイ劇場の名バレリーナ、ヴィクトリーナ・クリーゲル(ヴィクトリア?)によって創設されたモスクワ芸術バレエ団が、国立モスクワ音楽劇場の前身だそうです。クリーゲルの試みはネミロヴィチ=ダンチェンコやスタニスラフスキーを魅了したそうです。 Wikipedia(英語版)によれば、このバレエ団は1941年にスタニスラフスキーが率いていたオペラ劇団と合併して「スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ記念・モスクワ州立音楽劇場」となりました。戦時体制下で、いくつかあった劇団が合併してひとつになった、という事情のようです。ちなみにウラジーミル・ブルメイステル(1904-1970年)は、もともとモスクワ芸術バレエ団のダンサーでしたが、1938年に芸術監督としてデビューし、1941年から1970年まで国立モスクワ音楽劇場の主席芸術監督を務めたそうです。
 ということで素人のぽん太にも、国立モスクワ音楽劇場はスタニスラフスキーと関係があり、スタニスラフスキー・システムを取り入れたバレエを上演して来た、ということだけはわかりました。
 そういわれてみれば今回の「エスメラルダ」は、登場人物の心理的や、その表現が重視されていたように思います。冒頭のエスメラルのお母さんなどは、バレエというより演劇みたいで、ちょっと鼻につく感じさえしました。バレエなら、踊りで感情を表現して欲しいです。確かに登場人物たちの心理の流れを想定することによって、ドラマ性が強まることは事実でしょう。このドラマ性は、「ジゼル」などのロマンティック・バレエのメルヘンチックなドラマ性ではなく、近代的な心理劇が持つドラマ性です。日本でこうしたドラマ性を追求したのは新劇ですから、ぽん太には、なんだか逆に古くさく感じてしまいました。しかしエスメラルダ役のナターリヤ・レドフスカヤは、踊りとして完璧でありながら、同時にそれが自然に心理表現となっていて、とてもすばらしかったです。彼女の踊りが、このバレエ団が目指す理想を体現しているのかもしれません。
 で、脚本ですが、話しが暗すぎます。フロロは聖職者のくせにエスメラルダに愛欲をいだき、嫉妬してフェビュスを殺し、愛しているはずのエスメラルダを冷徹に見殺しにします。聖職者である自分がジプシーに愛欲を抱くことに悩む、などということはありません。そのフェビュスも婚約者(?)がいるくせに平気でエスメラルダと逢い引き。エスメラルダはエスメラルダで、カジモドの好意に気づかず、女ったらしのフェビュスに熱をあげます。ガジモドも、最後にフロロを殺すくらいだったら、証拠のナイフも持っているんだし、エスメラルだが処刑されそうになっているときになんとか言えよ!結局エスメラルダもフロロも死に、嫌なフェビュスはちゃっかり生き残り、カジモドの思いも届かないという結末。ちっとも救いがありません。いわゆる「悲劇」は、悲しい結末ながらも、それはそれで運命の過酷さを感じたり、登場人物に共感できたりするのですが、「エスメラルダ」の結末は「悲しい」のではなく、「いやな」感じを受けます。最後の観客の拍手も、アンコールが繰り返されて長くは続きましたが、どっぷりと暗く重い感じでした。
 また処刑される前に、エスメラルダと貧しい老女が実の母子であることが判明するのですが、それによって劇が新たな展開を見せるといったこともなく、母子とわかってそれで終わしまい。「だからどうしたの」と思いました。
 例えば醜いカジモドのエスメラルダへの愛をテーマにするのなら、夢のシーンでもいいですから、カジモドとエスメラルダのせつないパ・ド・ドゥでも入れて欲しかったです。

 踊りに関しては、上に書いたように、ナターリヤ・レドフスカヤのエスメラルダは見事でした。アップで見ると目がぎょろっとして口が大きくてちと怖いですが、踊りは可憐で軽やか、嬉しくて思わずくるくる回ったり、恋に落ちた少女そのものでした。またジプシーの踊りなどの群舞は、パワフルで迫力満点でした。道化はもうひとつ動きにキレが欲しかったです。
 今回の公演は専属のオケが同伴。演奏はお手のもので息があっていました。しかしプーニ作曲の音楽そのものは、まあまあ普通。舞台装置は豪華で美しかったです。
 席はなんと最前列。間近では見えるのですが、ダンサーの足先が見えないというオーチャード・ホールの構造は、有名ですネ。


スタニフラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ記念 
国立モスクワ音楽劇場バレエ
2010年4月14日 オーチャードホール

指揮:アントン・グリシャン
管弦楽:国立モスクワ音楽劇場管弦楽団

音楽:チェーザレ・プーニ/レイゴリト・グリエール/セルゲイ・ワシレンコ
台本:ワシリー・チホミーロフ/ウラジーミル・ブルメイステル
原作:ビクトル・ユゴー「ノートル・ダム・ド・パリ」
振付・演出:ウラジーミル・ブルメイステル(1950年)
美術:アレクサンダー・ルーシン
リバイバル演出:セルゲイ・フィーリン(2009年)

エスメラルダ:ナターリア・レドフスカヤ
フェビュス:セミョーン・チュージン
クロード・フロロ:ウラジミール・キリーロフ
カジモド:アントン・ドマショーフ
グドゥラ:インナ・ギンケーヴィチ
フルール・ド・リス:マリーヤ・セメニャチェンコ
ジプシー:イリーナ・ベラヴィナ
将校:セルゲイ・クジミン、ロマン・マレンコ
道化:デニス・アキンフェーエフ、デニス・ペルコフスキー、アレクセイ・ポポーフ
王:ドミトリー・ロマネンコ、セルゲイ・マヌイロフ、イリーヤ・ウルーソフ
シェンシェリ:アンナ・ヴォロンコーワ
ヴァリエーション:マリア・クラマレンコ、エリカ・ミキルチチェワ、アンナ・アルナウートワ

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