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2010/05/20

【歌舞伎】「助六」と「熊谷陣屋」で若さが明暗 2010年5月新橋演舞場夜の部

 5月の新橋演舞場花形歌舞伎は、「寺子屋」「熊谷陣屋」「助六」と、4月の歌舞伎座さよなら公演に掛けられた演目を若手が務めます。ベテランの世代から次の世代へという意味合いかと思いますが、夜の部の「熊谷陣屋」と「助六」は、明暗が分かれました。歌舞伎公式ウェブサイトの公演案内はこちらです。
 すばらしかったのは「助六」。主人公の助六は、女にはもてるし喧嘩にもめっぽう強い男伊達。4月の團十郎の円熟した芸もよかったですが、ここは海老蔵の若さと美形がプラスに作用してました。海老蔵の花道の出端は、ぽん太は男ながら惚れぼれいたしました。この狂言は、馬鹿っぽい若者たちが、吉原で女遊びをしたり喧嘩を売ったりとヤンチャしてるという話しですから、若い役者たちで違和感がありません。
 福助の揚巻も、貫禄といい、悪態をつくときの切符といい、華やかさといい、先月の玉三郎よりも良かった気がしました。揚巻は、玉三郎だと品が良すぎるし、線も細すぎます。秀太郎の満江がさすがの風格で舞台を引き締め、笠を取った瞬間、舞台がぱっと明るくなりました。染五郎の新兵衛もなよなよぶりがおかしく、七之助の白玉は綺麗。松緑と亀寿は台詞のリズムがよく、古風な面白さが感じられました。
 今回は「水入り」付き。初めて観ましたが、様式的な前半とうってかわって、大水のケレンを交えた立ち回りで、迫力がありました。また意休の正体がようやくわかりました。

 「助六」では大奮闘の若手陣でしたが、さすがに「熊谷陣屋」のような本格的義太夫狂言では、力不足が目立ちました。歌舞伎初心者のぽん太には、具体的にどこが悪いのか指摘するのは難しいのですが、できる範囲でいくつか挙げてみたいと思います。まず、台詞や表情・仕草が現代劇調でリアルすぎて、様式的な表現になっていないため、逆に深い情動が浮かび上がってきません。芝居の見せ所と見せ所の間のつなぎの動作が、気持ちが行き届かずに雑になっているところも気になりました。それからこの狂言は、武家の倫理に則った公式的な発言と、子を持つ親としての本音との、二重構造が眼目です。公式的な台詞を言いながら、それとは異なるハラを伝える必要がありますが、それが十分にできてなかった気がします。例えば前半で相模が藤の方に、立派に討ち死にした敦盛、喜びこそすれ哀しむべきではないと諭す場面。相模の七之助はマジな表情で意見しておりましたが、我が子小次郎の身を案じて国元から陣中にまでやってきた相模、藤の方の心情は痛いほどわかっているはず。わかっていながらも、そのことは口に出すことはできず、公式的な発言でなぐさめる場面だと思いますが、そうは見えませんでした。染五郎の幕外も、若々しくストレートに哀しみを表現しておりましたが、吉右衛門の複雑で重層的な感情表現するには及びませんでした。
 「うかれ坊主」。松緑の踊りは愛嬌があってうまい。二つの大きな狂言を、楽しくつないでくれました。


新橋演舞場
五月花形歌舞伎
平成22年5月・夜の部

一、一谷嫩軍記
  熊谷陣屋(くまがいじんや)
            熊谷直実  染五郎
             源義経  海老蔵
              相模  七之助
             藤の方  松 也
          梶原平次景高  錦 吾
             堤軍次  亀三郎
           白毫弥陀六  歌 六

二、うかれ坊主(うかれぼうず)
            願人坊主  松 緑

三、歌舞伎十八番の内
  助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)

  三浦屋格子先より
  水入りまで
           花川戸助六  海老蔵
           三浦屋揚巻  福 助
          白酒売新兵衛  染五郎
        くわんぺら門兵衛  松 緑
           三浦屋白玉  七之助
           福山かつぎ  亀三郎
            朝顔仙平  亀 寿
          番頭新造白菊  歌 江
            通人里暁  猿 弥
           国侍利金太  市 蔵
            遣手お辰  右之助
           三浦屋女房  友右衛門
            髭の意休  歌 六
            曽我満江  秀太郎
              口上  左團次

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