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2010/07/24

【歌舞伎】『金閣寺』の謎を解明 2010年7月新橋演舞場・昼の部

 新橋演舞場の椅子は座りやすいですね〜。隈研吾さん、歌舞伎座の建て替えヨロシク!
 昼の部の最初は『名月八幡祭』。ぽん太は初めてみる演目です。いわゆる「芸者にだまされた田舎者が最後に芸者を斬り殺す」というお話です。池田大伍の作で大正7年(1918年)の初演とのこと。下敷きになっているのは、『八幡祭小望月賑』(はちまんまつりよみやのにぎわい)という河竹黙阿弥の作で万延元年(1860年)初演の狂言だそうです。田舎者が芸者を斬り殺す話しというと、ぽん太は三世河竹新七の『籠釣瓶花街酔醒』(かごつるべさとのえいざめ)(明治21年、1888年初演)を思い出しますが、平凡社の『歌舞伎事典』の『八幡祭小望月賑』の項目を見ると、『籠釣瓶』よりも『八幡祭』の方が格段と優れているそうで、機会があったら見てみたいです。
 『名月八幡祭』は、夏祭りの雰囲気や、いわゆる深川芸者の風俗が描かれているという点ではおもしろかったです。『籠釣瓶』では男のメンツをつぶされたのが原因で、妖刀籠釣瓶の力を借りて斬り殺すのに比べ、『名月八幡祭』はお金のいざこざが原因で、気がふれて殺人にいたるという点で、現代的といえば現代的ですが、話しがリアルすぎて楽しめない面もあります。
 福助の美代吉は、粋で気っ風がよくって深川芸者らしくてよかったですが、舌を出してみせるのは、歌舞伎のメイクだと下品に見えました。三津五郎の縮屋新助は、品がありすぎて、田舎者っぽい純朴さにちと欠けたようです。歌昇の船頭三次は、小悪党ぶりと粋さが心地よかったですが、もひとつ色気が欲しかったです。段四郎の魚惣ははまり役。
 池田大伍は、マノン・レスコーを意識しながら美代吉を書いたのだそうですが、マノン・レスコーは愛のために奔放な人生を送ったのに対し、美代吉は、根はいい娘かもしれないけれど見栄っ張りなところがあり、後先を考えずに目先のことに反応してしまう、ちょっと倫理観に欠ける女性で、だいぶ違うような気がします。もともとの池田大伍の脚本のせいなのか、今回の福助の演技のせいなのか、ぽん太にはわかりません。

 富十郎の『文屋』。いつもながら絶品なれど、昼食後で眠くなりました。
 最後は『金閣寺』。後半の「爪先鼠の段」に比べ、退屈なことで有名な前半の「碁立の段」。少しでも面白くするために、ぽん太は以前に台詞に囲碁用語がどのようにシャレとして使われているか、調べたことがあります(【歌舞伎】「金閣寺」(『祇園祭礼信仰記』)と囲碁)。その時よくわからなかった「どっちが先手か」という問題、見逃さないように注意いたしました。
 まず冒頭の大膳と鬼藤太の碁。鬼藤太が黒石で、大膳が白石でした。あれあれ、これでは大膳の「白の旗印の源氏の源義輝をやっつけたオレには、白石のお前はかなうまい」という意味の台詞と合わなくなってしまいますが、今回の舞台ではこの台詞は省略されていたので問題なし。
 さて、次に此下東吉と松永大膳の碁。東吉が黒石を持ち、置き石なしで、先手で打ってました。ということは、

大膳 イヤ、危ない事の、大膳が石が既の事。
東吉 アいやアいや、死ぬはこの白石。
大膳 どうやら遁れ鰈の魚。
東吉 白き方には目がなうて。
という下りは、大膳の白石が死にかけているところを、東吉が容赦なく攻め立てているということになります。
 しかし、東吉が先手だとすると、義太夫の「大膳は先手の石打つや」という台詞と矛盾します。う〜む、やはりわからん。前回の記事の「囲碁有段者」さんのコメントにあるように、東吉が黒石を置く置き碁で、白石の大膳が先手で打ったというのが正しいのでしょうか?まあ、そもそも芝居だから堅いことは言わなくていいのかも。
 それから、脚本を読んだだけではわからなかった次の台詞……
軍平 いかにもさよう、女房に翅鳥とはずんでござる大膳様。
大膳 オオサオオサ、晩には一目、劫おさえて。
 舞台で聞いたらよくわかりました。「女房に翅鳥と」というのは、「女房にしようと」あるいは「女房にしてやろうと」というニュアンスでした。「晩には一目、劫おさえて」というのは、女房にした雪姫を押さえ込んで……あとはわかりますネ。
 吉右衛門の此下東吉は、明るく痛快。対する團十郎の松永大膳は、迫力と滑稽さのバランスがよかったです。福助の雪姫は、何か変なことをしないかとビクビクしながら見てましたが、立派なお姫様でした。東蔵の慶寿院尼、芝翫の狩野之介直信は流石の芸の力。


新橋演舞場 七月大歌舞伎
平成22年7月
昼の部
一、名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)
            縮屋新助  三津五郎
           芸者美代吉  福 助
            船頭三次  歌 昇
         松本女房おつた  歌 江
            幇間寿鶴  寿 猿
          魚惣女房お竹  右之助
           藤岡慶十郎  歌 六
              魚惣  段四郎

二、六歌仙容彩
  文屋(ぶんや)
            文屋康秀  富十郎

三、祇園祭礼信仰記
  金閣寺(きんかくじ)
      此下東吉実は真柴久吉  吉右衛門
            松永大膳  團十郎
              雪姫  福 助
           松永鬼藤太  権十郎
            山下主水  桂 三
            内海三郎  吉之助
            戸田隼人  種太郎
            春川左近  由次郎
   十河軍平実は佐藤虎之助正清  歌 六
            慶寿院尼  東 蔵
          狩野之介直信  芝 翫

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コメント

caraさん、コメントありがとうございます。
ぽん太が第二部を見に行くのは8月下旬なので、今回はお会いするのは無理そうです。
福助の「娘道成寺」は、烏帽子を鐘の綱に引っ掛ける趣向でしたっけ。楽しみですね。
(コメント内の座席番号の記述は削除させていただきました。誰が見てるかわからないので……)

投稿: ぽん太 | 2010/08/13 09:30

私は15日第二部を観に行きます。福助の踊りが楽しみです
以前は玉三郎のファンでしたがこの5月に助六の時の揚巻の福助をみて福助のファンになりました
玉三郎の花魁は花魁なのに上品過ぎる
深窓の姫なら玉三郎がぴったりなのですが…

15日は一階八列目の席に座っています 男性の連れがいますが気軽に声をかけて下さって構いません
そして19日は亀治郎の会を観に行きます
休日を歌舞伎にあてているためなかなか体を休められませんがやはり良いものをみて感動することが精神の栄養になると自分に言い聞かせています


これからもblog楽しみにしています

投稿: cara | 2010/08/12 19:45

Caraさん、コメントありがとうございます。
せっかくコメントをいただきながら、長らく放置してすみませんm(_ _)m
8月の新橋、三部の『東海道四谷怪談』は既に観てきました。
一部の『義経千本桜』も楽しみです。ひょっとしたら気がつかずに隣りに座っているかもしれませんね。

投稿: ぽん太 | 2010/08/12 18:19

いつも楽しみにしています 来月は私も歌舞伎を見に行くのでもしかしたら演舞場でお会いできるかもしれません
これからも楽しみにしています

投稿: Cara | 2010/07/24 20:07

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