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2010/07/28

【歌舞伎】見応え十分、吉右衛門の『傾城反魂香』 2010年7月新橋演舞場・夜の部

 吉右衛門の『傾城反魂香』が、実に見応えがありました。又平とおとくのコンビは、えてしてひょうきんに演じられることが多いですが、吉右衛門の又平は、純朴さと人のよさは残しながらも、土佐の名字を得たいという決死の思いが伝わってきて、本格的で感動的なドラマに仕上がっておりました。
 吉右衛門の『反魂香』は2007年11月に歌舞伎座で見たことがありますが、前回もよかった気がします。では前回と今回を比べてどこがどう違うのか!……よく覚えてにゃい。歌舞伎初心者の悲しいところです。
 前回の吉右衛門の花道の出は覚悟を決めた厳しい表情に見え、今回は意志の力が薄らいで、やや茫然とした絶望感漂う表情に見えましたが、ぽん太の思い過ごしかも……。それから姫君救出に向かう修理之助を押しとどめようとする場面では、前回は「修理之助……さま」と一瞬間を開けることによって、弟弟子を様付けで呼ぶためらいを表現しておりました。プライドを捨ててなりふり構わず土佐の名字を得ようとすることによって、さらに自分を惨めな立場に追い込んでいくという、名演出でした。ところが今回はこの間はなし。ぽん太の狸脳では理由はわかりませんが、弟弟子とはいえ修理之助は武士階級、もともと又平が呼び捨にできる筋合いではないからかもしれません。
 芝雀のおとくも情愛深く、義太夫狂言らしい格調高い演技。北の方の吉之丞は、なんだか久しぶりですが、少し痩せたような。最小限の動作での芝居は、神業に近づきつつあるか?修理之助の種太郎、このメンバーのなかに入って、吉右衛門の演技を腹で受けるには、まだまだ人生経験が足りないかも。

 初めて観た『馬盗人』は、明るく楽しい民話風の舞踏。三津五郎の軽妙な踊りも見事ですが、何と言っても「馬」の大活躍が光ります。馬らしい仕草や、前足を上げてのいななきはもちろんのこと、人と一緒に舞いまで披露しますが、女役でのクネクネとした足さばきが妙に色っぽい。最後は花道で首を空に向かってピンと突き上げて見得を切り、飛六法で引っ込みます。大向こうのひとつでも欲しいところですが、馬の屋号って何?
 『暫』は團十郎の鎌倉権五郎が立派。


新橋演舞場・七月大歌舞伎
平成22年7月・夜の部

一、歌舞伎十八番の内
  暫(しばらく)
           鎌倉権五郎  團十郎
          鹿島入道震斎  三津五郎
            加茂次郎  友右衛門
            成田五郎  権十郎
             桂の前  門之助
           足柄左衛門  亀 寿
            加茂三郎  松 也
             小金丸  巳之助
            大江正広  新 悟
            埴生五郎  桂 三
            荏原八郎  由次郎
            東金太郎  市 蔵
            局常盤木  右之助
          家老宝木蔵人  家 橘
         那須九郎妹照葉  福 助
            清原武衡  段四郎

二、傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
  土佐将監閑居の場
            浮世又平  吉右衛門
           女房おとく  芝 雀
          土佐修理之助  種太郎
           将監北の方  吉之丞
          狩野雅楽之助  歌 昇
            土佐将監  歌 六

三、馬盗人(うまぬすびと)
          ならず者悪太  三津五郎
         ならず者すね三  巳之助
           百姓六兵衛  歌 昇

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