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2010/07/01

【演劇】(ネタバレ注意!)あなたはもうエレベーターで4階に上がれない「ザ・キャラクター」野田地図(NODA・MAP)

★★★ネタバレがありますのでご注意ください★★★
 公式サイトはこちらです。
 篠山紀信撮影カラー写真入り、全96ページの豪華パンフレットを1,000円で売っていたので購入。始まる前に冒頭の野田秀樹の文章だけ読みました。『世界に通用しないモノを創る』というタイトルで、最近は世界に通じる文化を日本から発信しよう、などというが、日本で生きてきた日本人じゃないとわからない文化もある。今回の『ザ・キャラクター』は世界には簡単には通用しない!とのことでした。
 始まってみると書道教室が舞台で、漢字の部首を使ったオアソビ満載。「ザ・キャラクター」って「性格」じゃなくて「漢字」だったのね。ナルホドこれは日本語を知らない外人にはわからないな〜などと思っていたのですが、「日本人じゃないとわからない」というのは、そんな生易しいことではなく、なんとオウム真理教の地下鉄サリン事件が題材になってました。確かにこれは、事件をリアルタイムで体験して来た日本人にしかわかりません。
 書道教室が次第にカルト化していき、最後にはビニール袋に入れた毒薬を傘で突き刺して大量殺人を行うなど、ストーリーは事件をほぼ反映しております。ぽん太は強いショックを受けて、涙がこぼれ、身体はひきつり、ついに気分まで悪くなって来ました。これは果たして演劇の感動と言っていいのか?単に事件のインパクトが大きかっただけではないか?強烈な印象を与えた現実の事件をモチーフにして観客を感動させたとしても、それは演劇の力とはいえず、芸術作品としては劣っているのではないのか……ぽん太のタヌキ脳はすっかり混乱してしまいました。
 しかしそこでぽん太の頭に浮かんだのは、江戸時代の歌舞伎では、大事件が起きるとすぐさまそれを脚色して、舞台に上げていたという事実です。今で言うテレビのワイドショーみたいな役割を歌舞伎が担っていた、などとよく説明されており、そういう意味合いもあったかもしれませんが、同時代の事件を題材にした歌舞伎は、当時の観客に、今回のぽん太と同じような衝撃を与えたに違いないということに、思いいたりました。心中事件や、女郎滅多斬り事件など、現代のようにメディアが発達していなかったとはいえ、同時代の同じ空気を吸っていた観客には、今の我々には伺い知れない迫真性があったことでしょう。
 してみると、演劇が現実の事件の力を借りるということは、決して反則ではないが、ただその作品が未来に残りにくかったり、海外では理解されにくかったりする、ということになるのでしょうか。あるいはこの事件が未来の日本で、あるいは海外で、普遍性を持ちうるかどうかにかかっているのかもしれません。そう考えてみると、池田小の事件や、秋葉原の事件なども、もっと芸術作品にとりあげていいような気もしてきますが、無知なるぽん太がそういった作品を知らないだけかも。

 野田秀樹は、カルト書道教室の世界とギリシア神話の世界とを、言葉遊びを橋渡しにして自在に行き来する作劇術は、いつもながら見事。俳優としては今回は前に出過ぎず、持ち前の台詞回しでときおりワサビを利かせていました。宮沢りえちゃん、なんだか表情が変わってみたいで、最初わかりませんでした。風格さえ感じられ、演劇の正真正銘の女優だと認識しました。古田新太は心ない教祖を好演。吉本の藤井隆も悪くなかったが、持ち味のハイテンションをもっと見たかったです。ときおり舞台上で手持ち無沙汰そうに見えました。銀粉蝶が稽古中の事故で休演しており、オバちゃんは高橋恵子。登山してるとよく会う元気なおばさんみたいな感じでよかったです。橋爪功は物忘れの大家役を、ホントに台詞が抜けたんじゃないかと思うほどの名演。さすがの存在感で、舞台を引き締めていました。チョウソンハは天真爛漫なアポローン。これは野田への注文ですが、カルトにのめり込んで殺人まで犯したアポローンを「幼い」と切って捨てるのではなく、なぜ彼の純真な願いが歪められていったのかも描いて欲しかった。というのはカルトは、教祖の心理操作によって信者に強制されただけではなく、信者自らがそれを欲望していたものでもあるからです。


NODA・MAP 第15回公演
「ザ・キャラクター」
2010年6月30日 東京芸術劇場中ホール
作・演出:野田秀樹
美術:堀尾幸男
照明:小川幾雄
衣裳:ひびの こづえ

マドロミ:宮沢りえ
家元:古田新太
会計/ヘルメス:藤井隆
ダプネー:美波
アルゴス:池内博之
アポローン:チョウソンハ
新人:田中哲司
オバちゃん:高橋恵子
家元夫人/ヘーラー:野田秀樹
古神/クロノス:橋爪功

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