« 【ドイツ旅行(8)】ベルリン、ぽん太の詩 | トップページ | 【ドイツ旅行(9)】ベルリンで観て来たよ「Symphony of Sorrowful Songs」ベルリン国立バレエ団 »

2010/08/04

【バレエ】熊川哲也も芸域が広いね〜 Kバレエカンパニー「New Pieces」

 日本人の振付けの新作ということで、あまり期待しないで観に行ったのですが、なかなかどうして良かったです。
 最初の「戦慄」の振付けは、服部有吉。ハンブルク・バレエで東洋人初のソリストになった経歴があり、振付家としても活躍しているとのこと。へ〜、こんな人がいたんだ。
 ただ、舞台はあんまりおもしろく感じられませんでした。でも「なぜおもしろくないか」がわからないところが、バレエ初心者のぽん太の悲しいところ。
 思ったところをいくつかあげれば、まず、暗い舞台で黒い背景で黒い衣裳で、老眼のぽん太にはそもそもよく見えません。なんか一生懸命踊っているみたいですが、ちっとも栄えません。舞台美術の人が悪いのか?またコール・ド・バレエの全身を黒で覆った衣裳も、日本人が着るとなんか背が低くもっさりと見えてしまいます。振付けの意図もあまりよくわかりませんでした。シューベルトの音楽にちなんで、黒装束のひとたちが死の象徴で「死と乙女」なんでしょうか?だとしたら振付家は、死と乙女をどのように伝えたいのか……う、う、う、わからん。懐中電灯を使ったライティングは少し面白かったですが、暗闇の中で踊るショウコを黒装束の数人の男たちが懐中電灯で照らしているのをみてたら、なんか犯罪っぽい気がしてきて落ち着かなくなりました。全体にドラマチックな演出ではあるのですが、意図がストレートに伝わってこず、なんだか思わせぶりに感じられてしまいました。
 気分が少しもり下がったところで、休憩をはさんで「Evolve」。振付けの長島裕輔はKバレエカンパニーのダンサーとのことですが、なかなかよくって一気に目が覚めました。ダンサーの動きも、踊り込んだ演目であるかのように生き生きしてました。ライヒの音楽にのせて踊られる踊りは、動きも現代的できびきびしています。同じ音型を延々と繰り返しながら徐々に変容していくミニマルミージックの特徴を生かした振付けで、同じ動きをダンサーたちががタイミングをずらして踊ることで面白い効果を生み出したりもしてました。同じ音型が繰り返されているようで、あらたな旋律が加わって曲調が変わるところで、変化に振付けがしっかり反応しているのが心地よかったです。踊り終わった男性三人がそのまま舞台から掃けないで、一瞬三人でポーズをとったところに次の女性ダンサーが登場し、男性三人が掃けていくといった、細かいところの工夫もよかったです。ただ冒頭の無音での女性ソロは、続く本編との連関や対比があまり感じられませんでした。最後に曲が突然終わったところでダンサーが倒れ込むのも陳腐。ライティングですが、この作品ならば、もっと瞬時の鮮やかな照明の変化を入れてもよかったのでは?長島裕輔は、調べてみるとダンサーとしては既に何度も観ていたようですが、こんなすばらしいコレオグラファーだったとは知りませんでした。
 最後は「Les Fleurs Noirs」。ダンサーで振付けの中村恩恵は、先日『時の庭』を観たときあまり感心しなかったのですが、今回はすばらしかったです。冒頭、スポットライトに照らされた中村の動きは、バレエというより「舞踏」を思わせます。それでいて熊川と踊ってもまったくひけをとらないクラシックのテクニックも持っています。詩の朗読が流れたり、踊っているダンサーの後ろをもう一人のダンサーがゆっくりと移動したりとか、『時の庭』にもあった要素で、そのときは特におもしろく思われなかったのですが、「Les Fleurs Noirs」では非常に印象的でした。熊川哲也も、舞踏的な中村の世界にすっかり融け込んでおり、さらに抜群の技術の裏付けがあるので、目を見張るようなパフォーマンスでした。熊哲って、顔が表情豊かなタイプではないですが、踊りそのものが表情豊かなのがすごいですね。ケージのどこかカリブ的なプリペアド・ピアノの音、ノスタルジックで宗教的なパーセルやバッハ(このオルゲル・ビュッヒラインの一曲はタルコフスキーの『惑星ソラリス』で使われていたのを思い出します)の音楽もよかったです。衣裳も古武道風でもあり、またギリシア・アジア風にも見えて美しかったです。
 やっぱり「新作」バレエはこうじゃないとね〜。ぽん太は牧阿佐美の「椿姫」では満足できないです。
 休憩時間に首藤康之発見。この日は自らの『空白に落ちた男』の公演があったはずですが、14時の回を終えてからかけつけたのでしょうか。まわりの人たちは知らんぷり。Kバレエファンは、首藤を知らないのかも。


Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY 2010 Summer
『New Pieces』
赤坂ACTシアター
2010年8月1日16:00

「戦慄」
【振付】服部有吉
【音楽】フランツ・シューベルト「弦楽四重奏第14番『死と乙女』ニ短調」
ショウコ
遅沢佑介、宮尾俊太郎
中島郁美、井上とも美、海部萌子、星野姫、金雪華、松岡恵美、中谷友香、並河会里
西野隼人、ニコライ・ヴィユジャーニン、内村和真、合屋辰美、浜崎恵二朗、森田維央、酒匂麗

「Evolve」
【振付】長島裕輔 【音楽】スティーブ・ライヒ「6台のピアノ」
松岡梨絵、東野泰子、神戸里奈、副智美、日向智子、中村春奈、湊まり恵

「Les Fleurs Noirs」
【振付】中村恩恵
【音楽】ジョン・ケージ「プリペアド・ピアノ」より「瞑想への前奏曲」「…思い出せない記憶」
ヘンリー・パーセル「恋人たちよ、寄り添って」
J.S.バッハ「主イエス・キリストよ、われ汝を呼ぶ」
中村恩恵、熊川哲也

|

« 【ドイツ旅行(8)】ベルリン、ぽん太の詩 | トップページ | 【ドイツ旅行(9)】ベルリンで観て来たよ「Symphony of Sorrowful Songs」ベルリン国立バレエ団 »

芸能・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74997/49055346

この記事へのトラックバック一覧です: 【バレエ】熊川哲也も芸域が広いね〜 Kバレエカンパニー「New Pieces」:

« 【ドイツ旅行(8)】ベルリン、ぽん太の詩 | トップページ | 【ドイツ旅行(9)】ベルリンで観て来たよ「Symphony of Sorrowful Songs」ベルリン国立バレエ団 »