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2010/09/24

【歌舞伎】仁左衛門の佐吉、歌六の雲助平作 2010年9月新橋演舞場昼の部

 「沼津」が1時間50分。30分の休憩をはさんで「荒川の佐吉」が2時間5分。どちらも見応えはありましたが、途中休憩なしの長い演目が二つ続いて、どっと疲れてしまいました。もう少し演目の並べ方に工夫はできないものでしょうか。
 「沼津」は初めて観ました。「実は親子」「実は兄妹」「腹を切ってからが長い」「敵同士とそれぞれゆかり」など、まさに歌舞伎といった演目でした。吉右衛門の、朗らかで優しく人のよさそうな十兵衛もよかったですが、なんといっても歌六の雲助平作が光りました。実直で誠実な老人の、娘への思い、息子への思いが、心を打ちました。芝雀のお米は可愛かったですが、もすこし元遊女らしい格とつやっぽさがあるとよかったです。歌昇の安兵衛も軽妙な脇役。染五郎は登場するだけで舞台がぱっと明るくなって、だいぶ華が出て来ました。
 仁左衛門の「荒川の佐吉」は2回目。前回観たのはいつだったか、だいぶ前でよく覚えていません。脚本の真山青果は、ぽん太は『元禄忠臣蔵』がなんか理屈っぽくて嫌いなので、今回もどうかな……と思ってました。「カニが自分の甲羅に似せて巣穴を掘る」とか「前に行くつもりで横に這う」とか「強い者が勝つのではなく、勝つ者が強いのだ」とか、ちょっと理屈っぽい台詞もありましたが、人情味もあり、また権力の座に留まろうとせず、すべてを捨てて旅に出ようとする結末もさわやかで、悪くなかったです。でもやっぱりこの芝居は、仁左衛門が演じるからこそいいのであって、他の役者はちょっと想像できません。仁左衛門の佐吉は、三下の頃の威勢の良さとかわいらしさ、子煩悩さ、一本気なところ、成川に斬り掛かる時の迫力、大成してからの風格と大きさ、ラストのいさぎよさ、どれもこれもすばらしかったです。
 今回観ていて、佐吉が成川に斬り掛かる時の「一心具足千人力、吞龍さまのお符が初めておれに読めるようになったのだ」という台詞が、ぽん太の耳に飛び込んできました。もちろん完全に聞き取れたわけではないので、家に帰ってから本で調べました(『真山青果全集〈第5巻〉』講談社。1976年)。
 「呑龍さま」というのは、呑龍上人のことだと思うのですが、群馬県太田市に大光院というお寺があり、このお寺の初代住職が呑龍上人です。ぽん太がこのお寺を訪れた時のことは、以前の記事に書きました。興味深いのは、呑龍上人は、貧しい子供を引き取っては弟子として育てていたため、「子育て呑龍」と呼ばれていたことです。盲目の子供を引き取って育てていた佐吉と重なるところは、真山青果の工夫でしょうか。
 「一心具足千人力」という言葉は、仁左衛門自身がどこかのインタビューで、大好きな台詞だと言っていた記憶があります。「一心」=一つのことに集中した心、「具足」=完全に備わっていること、ですから、「必死にやり遂げようとすれば、できないことはない」といった意味かと思います。
 「一心具足千人力」という呑龍さまのお札は本当にあったのでしょうか。この芝居の初演は昭和7年(1932年)で、また時代設定は「天保の末年頃」とされています。ちなみに天保時代は1830年から1843年ですね。果たして天保年間に本当に「一心具足千人力」という呑龍さまのお札があったのか、それとも真山青果が脚本を書いた昭和初期にあったものなのか、それとも真山の創作なのか、少しググってみたけどわかりませんでした。
 さて、今月の歌舞伎に戻り、冒頭『月宴紅葉繍』は梅玉と魁春による舞いで優雅に幕開き。最後の『寿梅鉢萬歳』は藤十郎が萬歳を娘姿で踊って、華やかに締めくくりました。

新橋演舞場
秀山祭九月大歌舞伎
平成22年9月・昼の部

一、月宴紅葉繍(つきのうたげもみじのいろどり)
            在原業平  梅 玉
            小野小町  魁 春

二、伊賀越道中双六
  沼津(ぬまづ)
          呉服屋十兵衛  吉右衛門
              お米  芝 雀
            池添孫八  染五郎
           荷持安兵衛  歌 昇
            雲助平作  歌 六

三、江戸絵両国八景
  荒川の佐吉(あらかわのさきち)
           荒川の佐吉  仁左衛門
          丸総女房お新  福 助
         仁兵衛娘お八重  孝太郎
           大工辰五郎  染五郎
             卯之吉  千之助
           白熊の忠助  錦 吾
           あごの権六  由次郎
           極楽徳兵衛  高麗蔵
          隅田の清五郎  錦之助
          成川郷右衛門  歌 六
          鍾馗の仁兵衛  段四郎
          相模屋政五郎  吉右衛門

四、寿梅鉢萬歳(ことぶきうめばちまんざい)
              萬歳  藤十郎

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