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2010/10/16

【文楽】「仮名手本忠臣蔵」「釣女」平成22年10月地方公演

 文楽というのは、あまり見たことがなく(生まれてこのかた3回目くらい)、はっきり言ってよくわからないのですが、たまにはということで観て来ました。
 演目は「仮名手本忠臣蔵」のおかる勘平と「釣女」で、どちらも歌舞伎では頭に入っているので、理解しやすそうです。
 数年前に文楽を観たときは、前から3列目くらいのすごくいい席だったのですが、人形をじっと見ていて、なんだか文楽ってすごく地味だな〜と思っていて、ふと右を見ると、義太夫さんが汗をかきかき鼻水たらしそうになりながら熱く語っておりました。そうか、文楽ってこっちにも着目しないといけないのか、とようやくわかった次第。今回は席も後ろ目なので、人形と義太夫をバランス良く観る気構えです。
 最初は短い解説がつき、吉田幸助が「汗っかきなので暑いと汗びっしょりになって大変」みたいな話しをし、続いて「仮名手本忠臣蔵」。歌舞伎とどう違うんだろうという観点から見ました、というか、ぽん太にはそれ以外に観点がない。まず気がつくことは、花道がない(あたりまえか)。斧定九郎は、歌舞伎では干してある藁の陰から出てきて一撃で与一兵衛を殺しますが、文楽では「金を出せ」「これは娘を売った大事な金だから勘弁して」みたいなやりとりがあって、格闘シーンとなります。歌舞伎の斧定九郎の現在の演技は、明和3年(1766年)に初代中村仲蔵が初めて演じたものとされていますから、文楽の演出の方が原型なのでしょうか。また、おかるを迎えに一文字屋から来るのは、歌舞伎ではお才と源六の二人ですが、文楽では「一文字屋才兵衛」という男性一人です。その後の話しは歌舞伎と同様に進んで行きますが、勘平が自分の持っている財布と、お才が持って来た財布とを見比べるといった歌舞伎のしどころが文楽ではなく、その他も全体にテキパキと話しが進んで行く印象を受けます。勘平が腹を切るタイミングも、歌舞伎では申し開きを初めて少したち、「打ち留めたるは舅殿」というところでいきなり腹を刺しますが、文楽では申し開きの冒頭で腹を刺します。確かに歌舞伎の演出の方が劇的効果が強く、工夫されているようです。
 もひとつ興味深かったのはラストシーン。今回の文楽では、舅殺しの疑いが晴れた勘平は、仇討ちの連判状に血判を押すことを許されます。その後勘平の「魂魄この土に止まって、敵討ちの御供なさで措くべきか」という台詞があって、息絶えます。千崎弥五郎と原郷右衛門は、母親にお金の一部を与え、懇ろに弔うよう伝えます。
 歌舞伎の場合は順序がちょっと違っていて、勘平の「魂魄……」という台詞が先にあって、その後に連判状への血判となります。
 ぽん太の理解では、「魂魄……」という台詞は、成仏を拒否し、怨霊となってこの世に留まることを宣言する恐ろしい言葉です。それを聞いた不破数右衛門(歌舞伎では原郷右衛門でなく不破数右衛門です)は、「これはいかん、なんとかして成仏させてやらねば」とばかりに連判状に血判を押させます。こうして勘平は仇討ちに加わることが許され、極楽浄土への成仏を遂げるのだと考えておりました。こう理解すると、現世ではいろいろ失敗もし辛い目にあった勘平が、最後は救われるという話しになります。
 しかし文楽の順序でいうと、勘平は怨霊となることを誓ったまま死んでゆき、あとは母親がひたすら供養をするという、救いがなく、恐ろしい話しとなります。
 これも文楽が原型で、歌舞伎が手を加えたものなのでしょうか?そういえば歌舞伎でも、仁左衛門の不破数右衛門は「これはいかん……」といった部分をきっちり演じていますが、それを表現しない役者もいます。歌舞伎でも勘平が怨霊になるという解釈もるのでしょうか?だんだんわからなくなってきたぞ。初演当時の台本はどうだったのでしょう。文楽の方も、明治維新や軍国主義の影響などでオリジナルと変わっているかも。そのうちみちくさしてみたいと思います。

 歌舞伎の「釣女」は踊りの演目で、まさか文楽人形は踊りは踊らないだろうと思っていたら、上手に踊っていたのでびっくりしました。重い忠臣蔵の後で、とても楽しい出し物でした。


人形浄瑠璃「文楽」地方公演
~わかりやすい解説付き~昼夜二回公演
2010年10月3日(日) 昼の部
府中の森芸術劇場ふるさとホール       
 
解説
 吉田幸助

仮名手本忠臣蔵        
 二つ玉の段、身売りの段、早野勘平腹切の段

      二つ玉の段
       <義大夫>竹本津國大夫
       <三味線>鶴澤清丈`
       <胡弓>鶴澤清公
      身売りの段
       <義大夫>竹本千歳大夫
       <三味線>鶴澤清志郎
      早勘平腹切の段
       <義大夫>豊竹呂勢大夫
       <三味線>鶴澤清治
      [人形役割]
       <百姓与市兵衛>桐竹亀次
       <斧定九郎>吉田勘緑
       <早野勘平>吉田玉女
       <女房おかる>吉田蓑二郎
       <与市兵衛女房>桐竹勘壽
       <一文字屋才兵衛>吉田玉佳
       <めっぽう弥八>吉田一輔
       <種ヶ島の六>吉田蓑紫郎
       <狸の角兵衛>桐竹紋吉
       <原郷右衛門>吉田玉輝
       <千崎弥五郎>吉田幸助
       <駕籠屋>大ぜい

釣女
       <義大夫(太郎冠者)>豊竹英大夫
       <義大夫(大名)>豊竹芳穂大夫
       <義大夫(美女)>豊竹靖大夫
       <義太夫(醜女)>竹本三輪大夫
       <三味線>鶴澤清二郎
       <三味線>鶴澤清馗
       <三味線>鶴澤清丈`
      [人形役割]
       <太郎冠者>豊松清十郎
       <大名>吉田幸助
       <美女>吉田一輔
       <醜女>桐竹勘十郎

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コメント

Lさん、コメントありがとうございます。happy01
文楽にお詳しいようですね。ぽん太ももう少し文楽を観たいと思いつつ、時間がなかったり、切符が取れなかったりで、さぼっています。
ご指摘の件、ぽん太もあとで調べてみて、その結果を「【歌舞伎・文楽】「仮名手本忠臣蔵」六段目の勘平は成仏したのか?」http://ponta.moe-nifty.com/blog/2010/10/post-85af.html という記事にまとめてみました。Lさんのおっしゃる通り、勘平の魂は成仏せずにこの世に留まり、仇討ちに参加するというのが本来の筋のようですね。ぜひ、最後がお焼香で終わるというかたちでの上演をやって欲しいです。松竹では無理かもしれないから、国立劇場でお願いします。m(_ _)m

投稿: ぽん太 | 2012/10/27 13:53

2年も昔のエントリに、突然のコメントで驚かれたらごめんなさい。私は反対に文楽ばかり見ていて歌舞伎をあまり知らないので、才兵衛がお才に変っているのが面白く、調べていたらたどり着きました。

でも、コメントしようと思ったのは勘平の話です。人形浄瑠璃初演作品だけあって、文楽の方が原作そのままの部分が(比較的)多いのは確かです。勘平が怨霊になると宣言するのも原作そのままなのですが、連判に加えてもらうだけでは飽き足りないのだろうと思います。

「疑いは晴れたし、仲間と認めてもらったから、それでいいだろう」ではないんです。心も晴れて安心した彼の気持ちは、もう、そんなところにはありません。「せっかく仲間に入れてもらえたのだから、次は、敵討ちにも参加し、活躍したい」のです。せっかくここまで漕ぎつけたのに、うっかり成仏しちゃったら、連れてって貰えないじゃないか!

その心を汲んだから母は同僚に財布を預けるし、二人は財布を預かって持っていく。そして、大詰の焼香でも、財布に焼香をさせるのですね。通しで、大詰に焼香が出るとわかりやすいですけど、ここだけみたり、引揚げで終わられたりするとわかりづらいですね。

投稿: L | 2012/10/26 21:33

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