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2010/11/23

【オペラの原作を読む(1)】ムソルグスキー「ボリス・ゴドゥノフ」←プーシキン『ボリス・ゴドゥノフ』

 先日キエフ・オペラで観たムソルグスキーの「ボリス・ゴドゥノフ」がいまいちよく理解できなかったので、原作を読んでみました。プーシキン『ボリス・ゴドゥノフ』(佐々木彰訳、岩波書店、1957年、岩波文庫)です。
 あらすじに関してはめんどくさいので省略。自分でググるか、本を買って読んでくだされ。
 オペラでは悪い奴なのか、意外といい人なのかよくわからなかったボリス・ゴドゥノフですが、原作でも権力を得るためには手段を選ばない悪人であると同時に、自分の罪におびえる弱い人間であり、また子を思う父親でもあるという風に描かれていました。
 全体としてムソルグスキーは、プーシキンのテキストをよく踏襲しているように思いますが、いくつかの違いがあります。まず、原作ではボリス・ゴドゥノフは発狂しません。総主教が語るドゥミトリーの墓の奇跡の話しを聞いて、顔色が真っ青になって大粒の汗を流すけれども、錯乱することはありません。そして少し後で、玉座に座っている時に、突然口や耳から血を流して卒倒します。
 もうひとつ、偽ドゥミトリーは1万5千にも満たない軍勢で、5万のロシア軍に戦いをいどみ、あえなく破れます。ここにも偽ドゥミトリーの野心的な性格が現れているように思えます。しかし上で書いたようにボリス・ゴドゥノフが急死することによって、偽ドゥミトリーに皇帝の椅子がころがりこんできます。 
 最後にラストシーンですが、ボリスの妻や息子フョードルたちが監禁されているボリス邸に、貴族たちが慌ただしく入っていきます。しばし乱闘のような物音が続いた後、扉を開けて出てきた貴族は民衆に向かって、「ボリスの妻や子供は毒をあおいで死んだ。さあ、皇帝ドゥミトリー万歳と叫ぶんだ」と言います。しかし人々は恐怖のあまり声を発することができません。オペラは「ボリス・ゴドゥノフの最後」みたいな感じですが、原作では「ボリスと偽ドゥミトリーの抗争」対「民衆」みたいな感じでした。

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