« 【歌舞伎】陰と陽の幸四郎・菊五郎 2010年11月新橋演舞場昼の部 | トップページ | 【オペラの原作を読む(1)】ムソルグスキー「ボリス・ゴドゥノフ」←プーシキン『ボリス・ゴドゥノフ』 »

2010/11/21

【オペラ】まるで極上のスイーツや! 「アンドレア・シェニエ」新国立劇場

 ぽん太は「アンドレア・シェニエ」が初めてどころか、ウンベルト・ジョルダーノという名前すら初耳。Wikipediaを見てみると、1867年に生まれて1948年に死去したイタリアの作曲家とのこと。プッチーニ(1858 - 1924年)よりちょっと若いと思えばいいのかしら。作品としては「アンドレア・シェニエ」(1896年)と「フェードラ」(1898年)意外はあまり有名でないみたいですね。「アンドレア・シェニエ」のあらすじなどはWikipediaをどうぞ。革命前後のフランスを舞台に、実在の詩人アンドレ・シェニエを描いた作品で、ヴェリズモ・オペラの傑作だそうです。なんだ〜?「ヴェリズモ・オペラ」って。なんだか知らないことばっかりだな〜。こちらも困った時のWikipediaを見てみると、ふむふむ、なるほど。「ヴェリズモ・オペラ(verismo opera)は、1890年代から20世紀初頭にかけてのイタリア・オペラの新傾向である。同時代のヴェリズモ文学に影響を受け、内容的には市井の人々の日常生活、残酷な暴力などの描写を多用すること、音楽的には声楽技巧を廃した直接的な感情表現に重きを置き、重厚なオーケストレーションを駆使することをその特徴とする」とのこと。代表作は「カヴァレリア・ルスティカーナ」(初演1890年)で、「アンドレア・シェニエ」(同1896年)や「トスカ」(同1900年)も含めて考えていいそうです。
 新国立劇場での上演は、2005年に続いて2度目。国内では4度目の上演になるそうです。新国立劇場の特設サイトはこちら(たぶんそのうちリンク切れ)、通常のサイトはこちらです。
 さて、今回の公演、第一に挙げるべきはフィリップ・アルローの演出でしょう。フィリップ・アルローといえば、先の「アラベッラ」も彼の演出で、それはそれで悪くはありませんでしたが、今回の方が彼の力量がより発揮されているように思えます。斜めに傾いたコワニー伯爵邸の舞踏会場は貴族階級の不安定な位置を象徴し、ぐるぐるぐるぐる回る回り舞台(まわりすぎだろっ!)は時代の混乱と激動を暗示します。ギロチンのように突然上から降りて来る幕。左右から閉まる斜めに切れた戸。それらはプロジェクターの幕としても役立ち、さまざまな光景が映し出されます。なかでも幕間に、ぐるぐる回りながら次第に増殖して行くギロチンが映し出されたのには驚きました。こんなのアリ?近い将来、レーザー光線やCGを多用した演出も出て来るかもしれません。
 上にリンクした特別サイトに合唱指揮の三澤洋史の『見果てぬ夢』というエッセーがありますが、それによれば、アルローはフランス革命について次のように述べたそうです。「僕たち(フランス人)は、フランス革命がうまくいったから、ラ・マルセイエーズを国歌に定めているわけじゃないんだ。むしろ全てが悪くなり、長い間大混乱に陥ったけれど、そのリスクを背負いながらもどこの国よりも早くチェンジに踏み切った、その勇気を誇りに思っているんだ」。フランス革命がきれいごとではすまなかったことは、このオペラでも示されておりますが、マルローはさらに、第1幕最後ののガボットのシーンで労働者たちが貴族に襲いかかることや、最後にシェニエとマッダレーナがギロチンにかけられたとき、舞台上の群衆がみな倒れることで強調しています。
 なんだかマルローの演出は、前回の「アラベッラ」より格段によい気がしますが、やはり事業仕分けで予算が削られたのでしょうか(「アンドレア・シェニエ」は2005年のプロダクション)。削るなら現場の制作費ではなく、天下りの重役を削減して下さい。
 歌手たちもすばらしかったです。アンドレア・シェニエのミハイル・アガフォノフは、豊かで力強いテノールで、誠実に生きるあまり断頭台の露と消える詩人を見事に表現しておりました。マッダレーナのノルマ・ファンティーニも、透明な声でありながら非常に声量があり、また演技もすばらしかったです。ジェラールのアルベルト・ガザーレも、革命の変質を憂え、愛欲に囚われた自らを呪いながら、最後にはシェニエとマッダレーナを救おうとする心の動きを歌い上げました。竹本節子のマデロンも、胸にジワっときました。
 ジョルダーノの音楽はストレートでわかりやすく、悪くなかったです。ただ、「最後はみんないい人」という結末とともに、ちょっと「毒」がないのかな。
 極上のスイーツをいただいたような印象のオペラでした。おいしゅうございました。


「アンドレア・シェニエ」
ウンベルト・ジョルダーノ
Umberto Giordano:Andrea Chénier
2010年11月18日 新国立劇場オペラ劇場

【指 揮】フレデリック・シャスラン
【演出・美術・照明】フィリップ・アルロー
【衣 裳】アンドレア・ウーマン

【アンドレア・シェニエ】ミハイル・アガフォノフ
【マッダレーナ】ノルマ・ファンティーニ
【ジェラール】アルベルト・ガザーレ
【ルーシェ】成田博之
【密偵】高橋 淳
【コワニー伯爵夫人】森山京子
【ベルシ】山下牧子
【マデロン】竹本節子
【マテュー】大久保 眞
【フレヴィル】萩原 潤
【修道院長】加茂下 稔
【フーキエ・タンヴィル】小林由樹
【家令/シュミット】大澤 建

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

|

« 【歌舞伎】陰と陽の幸四郎・菊五郎 2010年11月新橋演舞場昼の部 | トップページ | 【オペラの原作を読む(1)】ムソルグスキー「ボリス・ゴドゥノフ」←プーシキン『ボリス・ゴドゥノフ』 »

芸能・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74997/50075196

この記事へのトラックバック一覧です: 【オペラ】まるで極上のスイーツや! 「アンドレア・シェニエ」新国立劇場:

« 【歌舞伎】陰と陽の幸四郎・菊五郎 2010年11月新橋演舞場昼の部 | トップページ | 【オペラの原作を読む(1)】ムソルグスキー「ボリス・ゴドゥノフ」←プーシキン『ボリス・ゴドゥノフ』 »