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2011/01/19

【バレエの原作を読む(8) 】ベジャール『3人のソナタ』←サルトル『出口なし』

 昨年モーリス・ベジャール・バレエ団で「3人のソナタ」を観たぽん太は、てっきり不倫相手と奥さんが鉢合わせした話しだと理解して、「なんかナマナマし〜な〜」と思って観てたのですが、帰って調べてみたら何とサルトルの『出口なし』という戯曲が原作とのこと。しかも「地獄とは他人だ」という有名な言葉の出典なんだそうです。へ〜え、ということで、読んでみました。テキストは『サルトル全集〈第8巻〉恭々しき娼婦 』(伊吹武彦他訳、人文書院、1957年)に収録されているもので、『出口なし』の訳は伊吹武彦さんです。
 原題はHuis Clos。直訳すると「閉ざされた扉」ですが、フランス語の熟語としては「傍聴禁止」という意味だそうです。英訳の題名がNo Exitだったことから、日本語訳では『出口なし』とされたそうです。初演は1994年5月、フランスはパリのヴュー・コロンビエ座。おりしも第二次世界大戦中で、パリはドイツ軍の支配化におかれていたそうです。
 ストーリーらしいストーリーがないので、あらすじは書きにくいのですが、ぽん太が力技でまとめてみます。

 第二帝政式のサロン(第二帝政式ってなに?参考動画はこちら)に、ボーイに連れらた一人の男性(ガルサン)が入ってきます。ガルサンは室内を見回し、「どこにあるんだ、焼き串や焼き網に革のジョウゴは?」とボーイに尋ねます。「ご冗談でしょう」とボーイ。しばらくして、今度は一人の女性(イネス)がボーイに案内されて部屋に入ってきます。イネスはガルサンを見ておびえます。ガルサンが「あなたは僕を誰だとおもっているのですか」と聞くと、「あんたは地獄の鬼よ」とイネス。そう、この部屋は「地獄」で、二人は地獄に送られた死者だったのです。さらにもう一人イネスという女性が加わって、「地獄」での三人の人間模様が繰り広げられます。
 扉には錠がかけられており、部屋から出ることはできません。鏡がないので彼らは自分の姿を見ることはできませんが、電灯が消せないため、互いの視線を避けるすべはありません。彼らは、三人が一緒にされたのが偶然なのか、それとも何か意図があるのかと悩みます。いさかいになりそうになって、会話を止めようと申し合わせますが、沈黙を守ることはできません。鏡がないことに苦しむエステルに対して、イネスは自分が鏡になることを申し出ますが、頬のところに赤い痣があると言ってエステルを脅かしたりします。次に三人は、おのおのがなぜ地獄に堕ちたかを打ち明けて理解し合おうとしますが、それも何の解決にもなりません。イネスはエステルを籠絡しようとしますが、ガルサンの邪魔によってうまくいきません。今度はエステルがガルサンを誘惑し始めますが、理屈っぽいガルサンは、自分が卑怯者でないということをエステルに承認してもらおうとします。三人の緊張が極限まで高まった瞬間、これまで固く閉ざされていたドアが突然開きます。けれど三人は、誰ひとり部屋から出ようとしません。ガルサンは今度はイネスを説得しようとしますが、それもうまくいきません。ガルサンはイネスへの面当てにエステルを抱こうとしますが、イネスが見つめている前では不可能です。「地獄とは他人のことだ」とうめくガルサン。疲れきっておのおの椅子に腰掛ける三人。しばしの沈黙の後、ガルサンが立ち上がって、こう言います。「よし、続けるんだ」。
 にゃ〜。なんかほとんどあらすじになっておりませんが。ごめんなさい。
 要するに、人間の存在というものが、限りなく他人(現代思想の用語では「他者」でしょうか)に依拠しており、われわれは好むと好まざると、他人の眼差しから逃れられないことが描かれております。「他者」という概念は、ラカンの精神分析理論において極めて重要な概念であり、また「眼差し」も、ラカンが乳房、糞便、声とともに、「対象a」のひとつとして挙げているものです。サルトルの「他者」や「眼差し」が、ラカンのそれらとどういう関係にあるのかは、とっても大切な問題ですが、ぽん太には論ずる能力がないのが残念です。また、狭い部屋で一緒にいなくてはならない我慢ならない他人とは、ナチスドイツでもあるでしょう。

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