« 【拾い読み】共感覚に基づく驚異的な記憶力 ルリヤ『偉大な記憶力の物語』 | トップページ | 【大阪の歌舞伎ゆかりの地を訪ねて】合邦辻閻魔堂、四天王寺、野崎観音など »

2011/01/27

【拾い読み】欲しがりません、いつまでも 松田久一『「嫌消費」世代の研究』

 ちまたの噂で近頃は、車も欲しくなければ海外旅行にも行きたくないという、物欲のない若者が増えてきたと聞いて、気になって読んでみました。いわゆるマーケティング系の本でした。
 ぽん太の浅はかな知恵では、収入が低いからお金を使わないのかな〜などと思っていたのですが、著者によれば、彼らは収入が増えたとしても消費を増やさないんだそうで、まさに「嫌消費」なんだとか。
 いわゆる嫌消費は、1979年から1983年の間に生まれた「バブル後世代」の特徴だとのこと。現在は25〜29歳。小学校時代はバブルの最盛期で、ベルリンの壁崩壊や昭和天皇崩御を体験。中学校でバブルが崩壊し、阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件、いじめによる自殺などが話題に。高校では橋本内閣の金融ビッグバンを目撃し、終身雇用・年功序列制から実力主義賃金体系への移行が行われました。そして就職では「氷河期」にあたるそうです。
 統計的に彼らの価値意識の特徴を探ってみると、「ワンランク上の生活がしたい」という「上昇志向」、「人間関係を広げたい」「他人のために役立ちたい」という「他者志向」、「競争より強調が大切」と思う率が少ないという「競争志向」、「劣等感が強いほうだ」「妥協することが多い」という「劣等感」の4つが挙げられるといいます。
 著者はこれら4つの要因は、つまるところ「劣等感」に集約されると言います。さらにE. H. エリクソンの発達段階理論を利用して、学童期におけるバブル崩壊とゆとり教育による勤勉性の獲得の失敗が、劣等感の原因であると主張しますが、このあたりはぽん太からみても、ちょっと説得力に欠けるところ。
 消費をしたがらない要因としては、将来の収入の見通しがたたないことや、不安感などが大きいそうです。
 ここで著者は突然「世代論」の概説を行うのですが、ディルタイ、マンハイム、オルテガなどが世代理論の代表であることを、ぽん太は初めて知りました。
 マーケティングの本なので、最後は彼らにどうやって消費をさせるかという戦略が呈示されて終わります。

 嫌消費世代の概略はわかったのですが、その原因・実像・意義といったものの分析はいまいちでした。論の建て方として、都合のいい理論をひとつだけ引っ張ってきて著者の主張を説明してみせるというもので、ぽん太には説得力不足に感じられましたが、いわゆる企業で行われているプレゼンテーションは、こんなもんなんでしょうか。
 しかし、経済学に不案内なぽん太にとって理解しがたいのは、消費とは、結局は使えるものを捨てて買い替えるという「無駄遣い」のことだと思うのですが、無駄遣いをしていかないと成り立たない資本主義経済というのは、なんか根本的に間違っているのではないでしょうか。嫌消費世代はむしろ新しく、正しい価値観である可能性もあります。消費しないバブル後世代の若者たちは、どのような生き方を求め、何を喜びとしているのか、そのあたりをぽん太はもう少し知りたい気がしました。
(松田久一『「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち』東洋経済新報社、2009年)

|

« 【拾い読み】共感覚に基づく驚異的な記憶力 ルリヤ『偉大な記憶力の物語』 | トップページ | 【大阪の歌舞伎ゆかりの地を訪ねて】合邦辻閻魔堂、四天王寺、野崎観音など »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74997/50683666

この記事へのトラックバック一覧です: 【拾い読み】欲しがりません、いつまでも 松田久一『「嫌消費」世代の研究』:

« 【拾い読み】共感覚に基づく驚異的な記憶力 ルリヤ『偉大な記憶力の物語』 | トップページ | 【大阪の歌舞伎ゆかりの地を訪ねて】合邦辻閻魔堂、四天王寺、野崎観音など »