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2011/02/02

【歌舞伎】意外によかった幸四郎の「江戸宵闇妖鉤爪」 松竹座2011年1月

 大阪遠征して参りました。こんかいは夜の部のみ。
 最初の『八陣守護城』から「湖水御座船の場」は、加藤清正の毒殺という伝説から取った一幕。ぽん太は初めて観ました。
 秀吉の家臣であった加藤清正は、秀吉の死後は徳川家康に接近し、関ヶ原の合戦では家康の東軍に加わりました。徳川家康は征夷大将軍となって江戸幕府を開きましたが、秀吉の息子の秀頼は、いまだ一定の権力を持っていました。家康は秀頼を追い落とそうと機会をうかがい、最終的には大阪夏の陣(慶長20年(1615年))で殺害に成功するのですが、その前の慶長16年(1611年)、秀頼は上洛して京都の二条城で家康と会見しました。このとき加藤清正は、秀頼の上洛に付き添いましたが、帰国途中の船内で体調を崩し、熊本で死去しました。その死因が、二条城における家康方による毒殺であったという説があるのだそうです。
 もちろんこの狂言では、状況や名前が移し替えられており、主人公の佐藤正清は、北畠春雄の館を訪問した際に、北畠家の跡目争いに巻き込まれ、毒を盛られたという設定になっております。湖面に浮かんだ御座舟の上で、正清はゆうゆうとくつろいでおります。そこに北畠の使者が小舟で何度も様子をうかがいに来ます。最後に御座舟のセットが90度回転して正面を向くと、嫁の雛衣をいたわりつつ立っていた正清の体調に、異変が起り始めます。
 たったそれだけのストーリーで、ほとんど役者の芸の力で魅せる舞台ですが、我當演じる正清は、大きさと風格があり、雛衣をいたわる心情もにじみ出て、緊張感が持続してまったく飽きさせませんでした。我當さすがですね。秀太郎の雛衣も、我當のパワーをしっかりと受け止めておりました。進之介と薪車の若侍も小気味よかったです。
 続いて藤十郎の「吉田屋」。以前に一回観たことがありますが、今回は扇雀が夕霧。以前の記事で書きましたが、夕霧を抱えていた置屋である「扇屋」の娘が、初代中村鴈治郎の母親なんですってね。藤十郎の伊左衛門は、まるで大きな子供みたいなボンボン。扇雀の夕霧は情感はあるのですが、なんか哀れっぽくなってしまうのが気になります。後半は義太夫節と常磐津の掛け合いとなりますが、人間国宝一巴太夫の常磐津が、高い音でも柔らかく深みのある声で、夕霧の艶やかさを引き立てていました。
 最後の「江戸宵闇妖鉤爪」は、江戸川乱歩の「人間豹」を歌舞伎化したもの。幸四郎演出ということで、実はあんまり期待していなかったのですが、けっこう面白かったです。ストーリーの持ってき方もうまいし、場面ばめんの変化もあり、江戸川乱歩的なおどろおどろしさも、行き過ぎずにほどよく取り入れてました。七五調の台詞などは歌舞伎らしくよくできてるし、火薬や宙乗りなどのケレンもあってサービス満点でした。人間豹が、一般の人々の非人間性を告発するというテーマはベダではありますが、歌舞伎らしく結末をつけずに終わるので説教くさくなりませんでした。けっこう引き込まれて観てしまいましたし、感動もしました。菊五郎の復活狂言シリーズは、面白くて楽しいけど、テーマがなくて感動しないという面がありますが、幸四郎演出は悪くないですね。
 幸四郎の演技はいつもの感じですが、恩田乱学と神谷芳之助の二役の染五郎がなかなかよかったです。っていうか、普通の歌舞伎よりいいんじゃない?劇団☆新感線で鍛えた成果でしょうか。ただ、スタイルのいい二枚目の歌舞伎役者として仁左衛門を継ぐのは染五郎しかいない、というのがぽん太とにゃん子の願いなので、普通の歌舞伎にも精進して下さい。扇雀は野田歌舞伎のみならず、新作系には強い。吉弥がろくろ首とかの見せ物の場面で、とってもうれしそうに前の方の観客に向かって「いかがですか?いかがですか?」と言ってる表情は、明石家さんまみたいでした。真面目な人かと思ったら、吉弥も芸域広いですね。


壽初春大歌舞伎
大阪松竹座 平成23年1月・夜の部

一、八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)
  湖水御座船の場
                  佐藤正清  我 當
                  斑鳩平次  進之介
                  正木大介  薪 車
                  鞠川玄蕃  錦 吾
                    雛衣  秀太郎

二、玩辞楼十二曲の内 廓文章(くるわぶんしょう)
  吉田屋
                藤屋伊左衛門  藤十郎
                  扇屋夕霧  扇 雀
                 女房おきさ  吉 弥
               吉田屋喜左衛門  我 當

三、江戸川乱歩「人間豹」より
  江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)
  ─明智小五郎と人間豹─

  第一幕第一場 不忍池、弁天島の茶屋の前
     第二場 江戸橋広小路の支度小屋
     第三場 ウズメ舞の場
     第四場 隅田河畔の茶屋
     第五場 浅茅ヶ原
  第二幕第一場 団子坂、明智小五郎の家
     第二場 笠森稲荷
     第三場 団子坂近くの一本道
     第四場 洞穴、恩田の隠れ家
     第五場 浅草奥山の見世物小屋
     エピローグ 同 見世物小屋裏手

  市川染五郎大凧にて宙乗り相勤め申し候

                 明智小五郎  幸四郎
  商家の娘お甲/女役者お蘭/明智の女房お文  扇 雀
                 目明し恒吉  錦 吾
                 老婆百御前  吉 弥
            同心小林新八/娘お玉  高麗蔵
            恩田乱学/神谷芳之助  染五郎

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