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2011/02/27

【オペラ】大迫力!マリインスキー・オペラ「トゥーランドット」(付:心理療法家としてのカラフ)

 NHKホールの3階後方のE席で観てきました。遠いですね〜。以前に邦楽を聴きに行ったとき、鼓を打つのが見えてから音が聞こえるまでタイムラグがあるのにびっくりしたことがあります。また老眼のぽん太は、字幕を読むのに双眼鏡が必要です。舞台奥のバルコニー上に登場した皇帝アルトゥムは足しか見えませんでした。ほかの人のブログを読むと、舞台奥でいろいろと演出があったようですが、全くわかりませんでした。ああそれなのに、それなのに、3階前方のD席は、日曜日だというのにガラガラ。空いてるんなら前に移動させてくれい。E、Fは完売しながらS〜D席は最後まで売れ残っていたようですが、ジャパン・アーツさん、次から値段設定を見直すか、もっと小さいホールにするか、ここはひとつよろしくお願いします。本公演の公式サイトはこちら
 ところがこんな遠い席でありながら、歌声やオーケストラの演奏がすごい迫力で聞こえたのにはびっくり。合唱団もパワーがあって、広いホール全体がハウリングのように鳴り響きました。いや〜マリインスキーは、前回の『イーゴリ公』もそうでしたが、やっぱり凄いですね〜。
 特筆すべきはカラフのウラディーミル・ガルージン。声量がありますね。2年前にボリショイ・オペラで観た『スペードの女王』のゲルマンの鬼気迫る演技もすばらしかったですが、今回はカラフの自信に満ちた朗々とした歌声に聞き惚れました。氷のように冷酷なトゥーランドットが恋に落ちるのも無理ありませんね。
 ツンデレ姫トゥーランドットのマリア・グレギーナも、声量が豊かでした。体調が悪くて2日前の公演では声が出てなかったそうですが、本日は第3幕でちょっと咳き込むみたいになって声が出にくくなったりしましたが、全体としてはすばらしかったと思います。
 リューのヒブラ・ゲルズマーワも、鈴の音のように清楚で透明な声が、役柄にあってました。
 ゲルギエフの指揮するオケも、パンチが効いていて大迫力でした。舞台美術も、1幕から3幕まで同じセットでしたが、照明などをうまく使って変化をつけていました。演出も気をてらったところがなく、それでいて凡庸にならず、なかなかよかったです。

 このオペラに関して、カラフは謎解き以外になにもせず、しかも自分で出した謎の答を教えてしまうたわけ者である、という見方があるようですが、精神科のぽん太から見るとそんなことはありません。カラフは優秀な精神療法家であり、トゥーランドットの恋愛恐怖症を見事に治療したのです。
 カラフはトゥーランドットに謎を出しましたが、「謎解き」という彼女が慣れ親しみ、固執していた枠組みを用いた点が見事です。そして、カラフが謎を出し、トゥーランドットが謎を解く立場になることで、二人の位置は入れ替わり、カラフが主導権を取ることができます。ただし、「死すべき者」はカラフであり続けることによって、この逆転が目立ちにくくなっており、トゥーランドットは主導権はあいかわらず自分にあると錯覚します。
 同時にトゥーランドットは、「謎を出す者に対して求婚する者」の位置を占めることになります。彼女はこの時点ですでに、カラフを愛する者の立場にあるのです。初めの謎の答えは出題者の名前「トゥーランドット」であり、それに答えられなかった求婚者たちは、自分たちの欲望の対象を知らなかったことを見せつけられます。二番目の問いの答えも出題者の名前「カラフ」ですが、トゥーランドットは答えを見つけるために、カラフのことを一晩中考えなければなりません。しかも、カラフとの結婚を拒否しようと思えば思うほど、カラフのことを深く考えなければならないわけで、ここにはミルトン・エリクソンのいう「治療的ダブルバインド」が設定されております。
 ところがカラフは謎の答を教えてしまいます。これは「不意打ち」であり、トゥーランドットを混乱させ、心的防衛機能を低下させ、心理的な変化を起こしやすくします。そして、出題者が答えを口にするという「やってはいけないこと」をし、自らの死を受け入れたことによって、トゥーランドットもまた、これまでの自分の死を受け入れ、「やってはいけないこと」つまり男に復讐するという誓いを破り、男性を愛することが可能となるのです。
 時間の設定も見事であり、トゥーランドットは月の出とともに求婚者の首を切りました。しかしカラフは、謎の期限を夜明けとしました。このためトゥーランドットは一晩中カラフのことを考え続けたのですが、それが恋人のみにふさわしい行為であることは明らかです。そして夜が終わり朝を迎えた瞬間に、トゥーランドットは氷のような冷酷さをすてて愛に身を委ねることになります。


マリインスキー・オペラ
「トゥーランドット」
2011年2月20日 NHKホール

作曲:ジャコモ・プッチーニ
台本:ジュゼッペ・アダーミ、レナート・シモーニ

指揮:ワレリー・ゲルギエフ
演出:シャルル・ルボー

【トゥーランドット】マリア・グレギーナ
【カラフ】ウラディーミル・ガルージン
【リュー】ヒブラ・ゲルズマーワ
【ティムール】ユーリー・ヴォロビエフ
【皇帝アルトゥム】ヴィクトル・ヴィフロフ
【ピン】アンドレイ・スペホフ
【ポン】オレグ・バラショフ
【パン】アレクサンダー・ティムチェンコ
【役人】エデム・ウメーロフ
【ペルシャの王子】アントン・ロシツキー
マリインスキー歌劇場合唱団
杉並児童合唱団
マリインスキー歌劇場管弦楽団

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