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2011/02/13

【バレエ】気迫のこもったマラーホフの踊り 「チャイコフスキー」ベルリン国立バレエ団

 にゃ〜、ブログを書く暇がなくて、観てからだいぶ時間がたったので、すっかり忘れてもうた。
 ベルリン国立バレエ団、先に観た「シンデレラ」はちょっと地味な印象でしたが、「チャイコフスキー」はドラマチックで迫力があって、とてもよかったです。ちょっと暗くて重い作品でしたが、観客の反応もよくて、拍手喝采でした。こちらが公式サイトです。
 ストーリーは、死の床でもだえ苦しむチャイコフスキーに、人生のさまざまな場面が蘇ってくるというもの。パトロンとして彼を支えたフォン・メック夫人や、短期間の不幸な結婚に終わった妻アントニーナ・イヴァーノヴァといった実在の人物だけでなく、『白鳥の湖』などの彼が創造した作品や、その登場人物が入り混じります。
 すばらしい芸術作品を残したチャイコフスキーだが、彼自身は様々な問題や悩みを抱え、自己の分裂に苦しんでいた、というのはけっこうベタな話しではありますが、それなりに面白かったです。
 ちなみにチャイコフスキーは、てんかん持ちだったとか、同性愛だったとか、死因は実は自殺だったとか、いろいろな話しがあります。アントニーナ・イヴァーノヴァとの電撃的結婚と離婚、チャイコフスキーのモスクワ川入水、イヴァーノヴァが後に精神病院に入れられたことなどは、以前の記事で書いたことがあります。とはいえ、ぽん太はチャイコフスキーがどんな人で、どんな生涯を送ったのか、あまりよく知りません。手近にある伝記をぱらぱらめくってみたら、1981年から1982年頃、チャイコフスキーはスピノザに傾倒し、『エチカ』や『往復書簡集』を熟読していたらしい。今回の公演に使われた曲の中にも、『聖ヨハネ・クリュソストムの典礼』という宗教曲がありますが、チャイコフスキーと宗教の関係はどうなのか。
 チャイコフスキーを踊ったマラーホフは、いつもながらの造形的な身体美はもとより、演劇的な表現力がすばらしく、迫真の演技というか、鬼気迫る感じさえ漂う魂のこもった踊りを見せてくれました。バレエというと普通は楽しくて可愛らしいものですが、今回の舞台は、重厚で思索的、崇高で哲学的でした。これがマラーホフの特徴なのか、ドイツ人の観客の好みなのか、ぽん太にはわかりません。
 エイフマンの振付けは、以前に「マラーホフの贈り物」で「ハムレット」を観たことがあるようですが、例によってよく覚えておりません。今回のは、適度に斬新で、アクロバティックな動きもあり、悪くなかったです。ぽん太は、交響曲第5番の第3楽章の中間部に振り付けた、女性たちの踊りが気に入りました。音楽について言えば、バレエの「白鳥の湖」とか「眠れる森の美女」とかを引用しながら、それらの曲を一切使わないのもいさぎよいです。
 それにしても、今回使われていたチャイコフスキーの交響曲などが、バレエ音楽として全く違和感がないのには驚きました。しかし、家に帰ってからCDを聞き直してみると、どうみてもこれに合わせて踊れそうには聞こえないので、指揮のヴェロ・ペーンがバレエ音楽っぽく演奏していたのかもしれません。東京シティフィルの演奏もよかったです。
 舞台美術も豪華で美しかったです。ユーゲント・シュティールだかベルリン分離派だかわかりませんが、19世紀末風な流麗さとエロティシズムがありました。また、光と影の配置や、射影幾何学的に歪んだ形態は、「カリガリ博士」などのドイツ表現主義映画が思い浮かびました。


ベルリン国立バレエ団
「チャイコフスキー」~生と死のミステリー
2011年1月23日 東京文化会館

台本・振付・演出: ボリス・エイフマン
音楽: ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
装置・衣裳: ヴァチェスラフ・オクネフ

チャイコフスキー:ウラジーミル・マラーホフ
分身/ドロッセルマイヤー:ヴィスラウ・デュデク
フォン・メック夫人:ベアトリス・クノップ
チャイコフスキーの妻:ナディア・サイダコワ
王子(若者/ジョーカー):ディヌ・タマズラカル
少女:ヤーナ・サレンコ

ヤーナ・バローヴァ、アニッサ・ブリュレ、エロディー・エステーヴ、ヴェロニカ・フロディマ、マリア・ジャンボナ、ステファニー・グリーンワルド、針山愛美、ヨアンナ・ヤブロンスカ、エリナー・ヤゴドニク、菅野茉里奈、アナスタシア・クルコワ、ワレリア・マナコワ、ニコレッタ・マンニ、サラ・メストロヴィック、ナターリア・ミュノス、クラジィーナ・パヴロワ、クリスティアーネ・ペガド、巣山 葵、寺井七海、ヴェレーナ・サーム

マルチン・アロヨス、ゲヴォルク・アソヤン、ミハエル・ファトゥラ、アルシャク・ガルミヤン、ドミニク・ホダル、アレクサンドル・コルン、クリスティアン・クレール、マリアン・ラザール、アルトゥール・リル、ウラジスラフ・マリノフ、エイメリック・モッセルマンズ、アレクセイ・オルレンコ、ハビエ・ペーニャ・バスケス、ケヴィン・プゾー、スフェン・ザイデルマン、アレクサンドル・シュパク、デイヴィッド・シミック、フェデリコ・スパリッタ、マルチン・シィマンスキー、ウリアン・タポル、メフメト・ユマク

指揮: ヴェロ・ペーン
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

使用楽曲(すべてチャイコフスキー作曲)
第1幕:
 交響曲第5番 ホ短調 op.64 第1楽章、第2楽章、第3楽章
 聖ヨハネ・クリュソストムの典礼 op.41 第6楽章
 交響曲第5番 ホ短調 op.64 第4楽章
第2幕:
 弦楽セレナード ハ op.48 第2楽章、第3楽章
 イタリア奇想曲 イ長調 op.45
 交響曲第6番「悲愴」 ロ短調 op.74 第4楽章

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