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2011/03/12

【歌舞伎】魁春の政岡の格調と様式美 新橋演舞場2011年3月昼の部

 昼の部です。公式サイトはこちら

 まずは『恩讐の彼方に』。有名な菊池寛の原作はとてもよくできた話しで、思い出しただけでも涙がでそうになるのですが、こんかい歌舞伎として見て、それ以上の感動はありませんでした。ちなみに原作は「青空文庫」で読むことができます(→こちら)。
 まず、さまざまな「悪」が描かれる歌舞伎を見慣れた目からは、前半で市九郎(松緑)が犯した悪は大したことないように思われてしまいます。そのため、改心した後の、20年以上も洞門を掘り続けるという強い意思とのバランスがとれません。「その程度の悪の罪滅ぼしだったら、何もそこまでしなくても」という気がします。旅人の夫婦を殺したあと、恐怖に襲われるところなどを演じて欲しかったです。お弓(菊之助)が、死体から髪飾りを剥ぐために花道を引っ込むときのニヤリと笑った表情は、鬼女のような不気味さでよかったですが、市九郎がそれに嫌気をさすあたりはあまり表現されておりませんでした。脚本のせいなのか、松緑の演技のせいなのか、ぽん太にはわかりません。
 また原作では、了海を敵と狙う市九郎は、一心不乱にノミを振るう了海を目の当たりにして憎しみを失います。しかし仇討ちを果たして家名を再興するという打算から、やはり了海を殺そうと考え、一刻でも早く敵を討つために穴堀を手伝います。しかしついに穴が貫通した瞬間、「打算から人を殺す」という考えが、偉業を成し遂げた感激の前に消え去るのです。こうした心理の変化が、うまく表現されてなかった気がするのですが、それは脚本の問題なのかもしれません。菊池寛自身が劇化したそうですが、小説はうまいけど、脚本は苦手なのかしら。あんまり読んだことがないので、ぽん太にはよくわかりません。
 上に書いたように、菊之助の毒婦ぶりがよかったです。松緑、染五郎の演技はともに歌舞伎らしさがなく、現代劇っぽかったです。

 次は魁春が政岡を初役で務める『伽羅先代萩』。これが非常に良かったです。学芸会のような『恩讐の彼方に』を見た後のせいか、格調の高さ、歌舞伎らしい様式的な動きの美しさに見とれました。栄御前が立ち去ってからのクドキの場面など、例えば菊之助の政岡が泣き叫ぶ姿は生身の人間を感じさせますが、魁春の場合はまるで文楽人形のように情を内に秘めていて、それがいっそう悲しさを強めます。「飯炊き」も久々に見れました。ぽん太も少し眠くなりましたが、3階席に陣取っていた歌舞伎教室(?)の女子高生たちは、9割かた寝てました。梅玉の八汐、憎々しげにならずに品がいいところが、今回の舞台には合っており、福助の癖のある台詞回しがちょっと浮いてる感じがしました。芝翫の栄御前が舞台をしめ、幸四郎の仁木弾正は怪しさがあってよかったです。

 菊五郎と吉右衛門の『御所五郎蔵』。明るく粋な台詞の応酬を楽しむ予定でしたが、日頃の疲れで爆睡。昼の部のプログラム、3本立ての演目のどれもが1時間30近く休憩なしだったのも、疲れた原因かも。プログラム構成を少し考えて下さると有り難いのですが。


新橋演舞場
三月大歌舞伎
平成23年3月

昼の部

一、恩讐の彼方に(おんしゅうのかなたに)
          中間市九郎後に僧了海    松 緑
               中川実之助    染五郎
                  お弓    菊之助
                馬士権作    亀三郎
                 若き夫    亀 寿
               浪々の武士    亀 鶴
              中川三郎兵衛    團 蔵
              石工頭岩五郎    歌 六

  六世中村歌右衛門十年祭追善狂言
二、伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)
    御 殿
    床 下
                乳人政岡    魁 春
                  八汐    梅 玉
                 沖の井    福 助
                 澄の江    松 江
                一子千松    玉太郎
              荒獅子男之助    歌 昇
                  松島    東 蔵
                仁木弾正    幸四郎
                 栄御前    芝 翫

三、曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
  御所五郎蔵
               御所五郎蔵    菊五郎
                傾城皐月    福 助
                傾城逢州    菊之助
                新貝荒蔵    亀三郎
                秩父重介    亀 寿
               二宮太郎次  尾上右 近
             番頭新造千代菊    歌 江
                梶原平蔵    権十郎
              甲屋女房お京    芝 雀
              星影土右衛門    吉右衛門

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