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2011/06/11

【歌舞伎】『籠釣瓶花街酔醒』の通し。次郎左衛門の病気って何?2011年5月新橋演舞場夜の部

 遅まきながら5月の新橋演舞場の感想です。まずは夜の部から。こちらが公式サイトです。
 メインは『籠釣瓶花街酔醒』の通し。「見染」から「殺し」までは、吉右衛門も含めて何回か観たことがありますが、通しは初めて。歌舞伎でよくあるいくつかの名場面を集めたプログラムは、バレエでいえばガラ公演。「通し」はバレエなら「全幕物」になるでしょうか。ガラでテクニックを楽しむのもいいけど、やっぱり全幕物の感動にはかないません。歌舞伎もなるべく「通し」でやって欲しいというのがぽん太の希望です。ただ通しにすると、どうしても面白みにかける場面が出て来てしまうのですが、今回の『籠釣瓶』の通しでも、そういうところがありました。現代の観客が楽しめる「通し」になるように、脚本や演出をさらに工夫していく必要があるのかもしれません。

 今回の上演は、発端の「お清殺し」から大詰の「大屋根捕物」まで。「お清殺し」は、佐野次郎左衛門の父親の佐野次郎兵衛が、妻のお清(おせい)を斬殺する場面。女郎だったお清は次郎兵衛の女房となりましたが、瘡病を患ったために次郎兵衛に捨てられて、乞食に身を落としております。偶然通りかかった次郎兵衛は、新しい妻とのあいだに子まで儲けております。洗いざらい過去をぶちまけてやるというお清を、次郎兵衛は斬り殺します。
 この父親の因果によって佐野次郎左衛門は醜いあばた顔となり、遊郭で恥をかかされ、女郎を斬り殺すにいたるわけですね。
 ところで、医者のはしくれのぽん太としては、お清と次郎左衛門の病気がなんだったのかが気になります。あばた顔というと天然痘(疱瘡(ほうそう)、痘瘡(とうそう))が思い浮かびますが、次郎左衛門は天然痘にかかってあばた顔になったのでしょうか。でも以前の筋書きには、次郎左衛門のあばた顔が「生まれつき」だったと書いてあった気がしました。天然痘は生まれつきではありません。父親の因果でによって「生まれつきのあばた顔」になったという話しでしょうか?
 今回の筋書きによれば、お清はもともと女郎でしたが佐野次郎兵衛の女房となり、その後に瘡病となたために次郎兵衛に捨てられたと書いてあります。天然痘は強い感染力を持っているので、かかるなら子供の頃にかかっていそうなもの。
 ちなみに、『籠釣瓶』の初演(明治21年、1888年)の直前の1885年から1887年にかけて天然痘の大流行があり、約3万2千人が亡くなったと、こちらのサイトに書かれています。天然痘の皮疹の写真は、例えばこちらのサイト(誰でも出来る天然痘の診断)にありますが、かなり衝撃的な写真なのでご注意を。治癒後に残った痘痕(あばた)の写真はここには出ておりませんが、こちらのブログ(ヒポクラテスの木)には、幕末の幕府の通訳だった塩田三郎の痘痕顔の写真が出ております(こちらはまあ、普通に見れます)。
 しかし、天然痘にこだわってはいけないのかもしれません。女郎がのちにかかる瘡病といえば、梅毒も考えられます(Wikipedia)。梅毒では第2期に、バラ疹や丘疹性梅毒疹と呼ばれる特徴的な皮疹が現れます。ううう、写真がみつからん。今では抗生物質による治療で治る病気ですから。こちらの中国(?)のサイトに丘疹性梅毒疹の写真がありました(下の方の足のやつ)。なんか『籠釣瓶』の次郎左衛門のあばたのメイキャップは、こっちの方が似ている気がします。ということは次郎左衛門は先天梅毒(メルクマニュアル)か?現代では先天梅毒が治療されずに放置されることはありませんから、先天梅毒がどんな瘢痕を残すのか、あるいは未治療だとどういう経過をたどるのか、ぽん太にはよくわかりません。10年程度で第4期に移行して神経症状が出現し、亡くなってしまうような気がしますが。それで錯乱して百人斬りをしたのかしら?
 なんだか辻褄があいません。いくつかの病気が混ざっている気もします。まあ歌舞伎ですから、医学的に正しい必要性はありませんが。河竹新七の原作は、正確にはどういう表現(言葉)を用いていたのでしょうか。今度調べてみます。

 すっかり話しがそれてしまいましたが、序幕と2幕目で、なぜ次郎左衛門が妖刀籠釣瓶を手に入れたかが明らかになります。また、僧空月が次郎左衛門の相を観て「いったんこうと思い込むと突き進む性格なので、よくよく我慢しなさい」と言います。この言葉が、次郎左衛門の執念深い殺しの場面の、フラグになっているんですね。都築武助が死の床についているのは「病気つながり」か。
 「見染」から「殺し」は何回か観てますが、やはり通しだと、一つひとつが全体のストーリーのなかに収まって、面白さひとしおです。
 「九重部屋」はあまり上演されない珍しい場面だそうですが、縁切りでともすれば悪役っぽく見えてしまう八ッ橋も、実は意外といい娘なんだな〜と思われて、最後に殺される場面での哀れさが増しました。
 最後の「大屋根捕物」は、意外と盛り上がりませんでした。なんせ、ふわりとなでただけで相手がまっぷたつになるという妖刀なので、タテに力が入りません。

 吉右衛門の次郎左衛門、よかったです。執念深さを包み隠して善良そうに魅せておいて最後に……というあたりも見事でした。愛想づかしでお膳を持つ手が震えて食器ががたがたと音を立てるのも、観ていてぐっとつばを飲み込みました。福助も、花魁らしい華やかさと風格がありました。一時の大げさな表情や台詞まわしがなくなって、ホントにすばらしくなってきました。「見染」で花道で微笑む表情が、座席の関係で見れなかったのが残念でしたが、どうだったんでしょう?この芝居一番の悪者というか大バカ者の栄之丞を、梅玉がきざったらしく演じきりました。段四郎の佐野次郎兵衛はお手の物といった感じ。歌江がお清をしっかりと演じてました。二枚目の錦之助は今回はむさ苦しい盗賊役。こういうのもうまい。芝翫が立花屋のお駒で顔を見せました。彌十郎の釣鐘権八もこういうゴロツキは手慣れてます。

 凄惨な話しを観た後、芝雀、錦之助、歌昇の、アヤメを背景にした爽やかな踊りで口直し。


新橋演舞場
五月大歌舞伎
平成23年5月・夜の部

一、籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)

  発端 戸田川原お清殺しの場より
  大詰 立花屋大屋根捕物の場まで

             佐野次郎左衛門  吉右衛門
                 八ツ橋  福 助
              立花屋おきつ  魁 春
                  九重  芝 雀
                下男治六  歌 昇
                盲の文次  錦之助
                  七越  高麗蔵
                腹太弥七  松 江
               禿山の松蔵  種太郎
             初菊/娘お千代  壱太郎
              赤目の卯左吉  種之助
               土竜の石松  米 吉
                  お清  歌 江
               絹商人丈助  桂 三
              絹商人丹兵衛  由次郎
                釣鐘権八  彌十郎
                都築武助  歌 六
              佐野次郎兵衛  段四郎
              立花屋長兵衛  東 蔵
           高松安之進妻おとし  秀太郎
               繁山栄之丞  梅 玉
               立花屋お駒  芝 翫

二、あやめ浴衣(あやめゆかた)
                 若い女  芝 雀
                 若い男  錦之助
                 若い男  歌 昇

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